【長編小説】獣戦記(アポカリプス)第十七話 三人の獣
3人が戦闘態勢を取り、いつ戦いが再開してもおかしくない緊張感に包まれる中、地中をうごめく“その影”が飛龍の背後に迫る。
「飛龍、息を合わせて。行くわよ!」
「あぁ!」
飛龍が静かに頷いた、その瞬間だった。
「……ッ!」
地面が爆ぜ、黒い影が飛び出す。現れたのは、巨大な大ムカデの首を持つ男だ。数千はある足が首から生え、不気味に動いている。
「クックックッ……油断したなぁ~!戦士を名乗るなら、隙を見せるなよぉ。これが戦場の掟だぜぇ~。俺は蜈蚣族の戦士、タオゼント・フース!ここでお前ら全員、ぶっ殺させてもらおうかぁ~。」
「飛龍!!」
ミラ飛龍に目を向けると、タオゼント・フースの横で、倒込んでいる。
「どうしたの、飛龍!?……返事をして!」
ミラの叫びが響くも、飛龍は答えない。顔が青ざめ、息が荒くなっている。
「クックッ……こいつはもう立てねぇよ~。俺が嚙みついたからなぁ~。俺の顎には神経に作用する毒があるだぜぇ~。傷口から毒が回りゃぁ、3日は動けねぇ。麻痺してるところを首を掻っ切りゃぁ勝負ありだなぁ~」
タオゼント・フースの話を聞いて青ざめるミラ。しかし、その奥で烈火のごとく憤怒にかられる戦士が1人……
「何が戦士だ……お前みたいな卑怯者は、戦士なんかじゃねぇ!ただの卑劣な虫ケラだッ!!」
「ほう……酉族のクソ餓鬼が、よく吠えるなぁ~」
「吠えるだけじゃねぇよ。おいらの咆哮、聞かせてやるぜ!」
テトラが翼を震わせ、空気を震動させる。だが、タオゼント・フースは素早く地中へと潜り、姿を消した。
(地面に潜った……今なら、飛龍を)
ミラが飛龍の元へ駆け寄り、脚に残った毒の顎の跡を確認する。すでに紫色に変色し、彼の呼吸は浅くなっていた。
「飛龍、しっかりして!」
「……心配、無用だ……少し、休めば……」
「無理しないで!」
ミラは震える手で薬草を取り出し、傷口に押し当てる。だが、時間がかかる。
(やばい……今は、戦いの最中、このままじゃ……)
「おい、狼女!下だッ!!」
テトラの叫びと同時に、地面からタオゼント・フースが再び現れる。だが、今度はミラも準備していた。飛龍を抱えて、素早く横に跳び、双剣でタオゼント・フースの首の一部を切り裂く。
「ギィィィィ!!」
「酉、今よ!」
「おいらの名前は、テトラだ!でも、ナイスな攻撃だったぜぇ、嬢ちゃん!後は、任せとけぇぇぇッ!!」
2人は自然と息を合わせる。テトラが空へ跳び上がり、太陽のように光輝きながら両腕を広げる。その姿は、まるで天から舞い降りた戦神のようだった。
「おいらの咆哮、受けてみろ!スゥ……『陽輪爆咆ッ!!』」
強烈な音波が空気を震わせ、タオゼント・フースの甲殻を貫いた。だが、彼はしぶとく、まだ動きを止めない。
「ククク……効かねぇなぁ~……!」
「じゃあ、これでどう!?」
ミラが地を蹴り、タオゼント・フースの背に飛び乗る。双剣を逆手に持ち、甲殻の隙間を狙って突き立てた。
「これで終わりよッ!!」
刃が深く突き刺さり、タオゼント・フースが断末魔の叫びを上げる。
「グギャァァァァァァァァァァァ!!」
巨体がのたうち、やがて動かなくなり、グリムの声が天から降り注ぐ。
「蜈蚣族のタオゼント・フース死亡。残り……残り46人!」
砂煙が晴れ、静寂が戻る。ミラは地面に降り立ち、肩で息をついた。テトラも翼をたたみ、飛龍の元へ駆け寄る。
「おい、お前……大丈夫か!?」
「……ああ。少し、毒が回っただけだ。だが、命に別状はない。」
「そうか!よかった……」
テトラが安堵の息をつく。そして、2人に向かって言葉をかける。
「……なあ。」
「ん?」
「おいら、さっきまでお前らに喧嘩売ってたけどさ……今の戦い、見てて思ったんだ。」
「何を?」
「お前ら、いい奴らだな。戦い方も、信念も、嫌いじゃねぇ」
ミラが目を丸くする。
「え、なに、急に?」
「だからさ……おいらも一緒に行っていいか?」
「……は?」
「仲間にしてくれって言ってんだよ!」
「おいらが居たほうが明るく楽しくなるぜ。こんな死闘をしてる中でも明るさは大事だろ?それに戦闘力もある方だ。咆哮で敵を吹き飛ばすこともできる!さっき、そこのお嬢ちゃんと戦いの呼吸もばっちりだったしな。」
飛龍はしばらく黙っていたが、やがて小さく頷いた。
「……好きにしろ。ただし、足は引っ張るな。」
「へっ、言ってくれるじゃねぇか。すぐにおいらの実力に惚れ直すぜ!」
ミラは苦笑しながら、飛龍の肩を支えた。
「じゃあ、まずは飛龍の毒をどうにかしないとね。テトラ、薬草探すの手伝って。」
「任せとけ!おいら、薬草の匂いにはちょびっとだけ自信あるんだ!」
「ちょびっとだけ……」
「なんだよ、その反応は!」
3人の笑い声が、再び荒野に響いた。その声は、この先どんな恐怖や不安があっても、彼らの歩む先に光があることを暗示しているように思えるほど軽やかだった。
太陽の咆哮、雷の鼓動、そして影を切り裂く刃。3つの力が交わる時、運命の歯車が再び動き出す。
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