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【長編小説】獣戦記(アポカリプス)第五十五話 青い光

——ゴワァァァァァァァァ!!!

氷の獣、その咆哮が洞穴の天井を震わせ、細かな氷片がぱらぱらと降り注いだ。

「こいつの動き、生き物っぽくないか?」

「えぇ、身体は、雪と氷で作られている?感じなのに……」

「輪郭は狼族フェンリルに近いが、身体の鱗、長い爪、様々な生物の特徴が合わさっている……」

——バァン!

氷の獣が、ミラへ長い爪を振り下ろす。

(速い……でも!)

「はぁぁぁぁ!」

——ガギィィン!

「思ったより速いけど、シャバル程じゃないわね。落ち着いていれば、軽く受け流せる」

「パワーはどうだ、ミラ?」

「正面から打ち合うのは、危険かもね……身体が氷と雪だから、腕や首を落としても動き続けるだろうし……」

「へっ!あんな奴、おいらが一瞬で溶かしてやるぜぇ!日輪爆サン・バー……」

——キィィィィィ……シュワァ……

氷の獣の身体が、雪煙のように揺らめく。

「待て、テトラ!そいつの様子がおかしい!一旦、離れろ!」

——シュパァッン!

「……ッ!?ぐわぁぁぁ!」

「テトラ!」

(形が変わった!さっきとは、まるで違う……あれは、槍だ!)

「くそっ……けほっ……形が変わりやがった……」

「テトラ、大丈夫?怪我は?」

「ちょっと腕をかすっただけだ。大丈夫……それより、あいつ」

「あぁ、形を変えられると厄介だ。攻撃の軌道が読めん」

——キィィィィィ……ヒュュュ……

「お、おい……槍がこっち向きだしたぞ……」

「しかも、今度は数十本……受けきれない!」

「2人とも俺の後ろへ!」

——シュパァッン!パパパァン!

—————ドォォォォォン!!

「第二鼓———『地拳ちけん』!」

飛龍フェイロンが地面を隆起させ、防御壁を創る。

——ズドッズドッズドッ!

「よし……テトラ!今度こそ、あいつを溶かせ!」

「おうよ、任せろ!はぁぁぁぁ!」

——ヒュン……ヒュン……ヒュン……

(この音、何?)

——ヒュンヒュンヒュンヒュン!

「……ッ!?飛龍フェイロン、後ろ!」

「何っ!?」

氷の獣が再び形を変える。今度は巨大な鎌のような形。それが回転して、飛龍フェイロンの背後に迫っていた。

「はぁぁぁぁ!」

——パリンッパリンッパリンッパリンッ!

(くっ……すべては、防げん!ならば!)

飛龍フェイロンは咄嗟に腕を身体の前に出し、頭と腹を防御する。

——ザシュッ!

氷の刃が飛龍フェイロンの腕に食い込み、氷片が飛び散る。

「ぐっ……!」

飛龍フェイロンッ!!」

「あいつ、こっちの動きに合わせて形を変えてやがる!しかも……」

「あぁ……硬さも変わってる。今の鎌は、氷よりも硬い……まるで、鋼だ……」

テトラが両腕を広げ翼を震わせる。

「ちょっと、待ってろ!さっさと、溶かしてやらぁ!行くぜぇ!日輪脚咆サン・ストライド・ロアッ!」

——シュゥゥゥ……

「やった!溶けてる!」

「へっ!どんなもんよ。これで、終わっ……!?」

「あれは……溶けているわけではない!また形を変えるぞ!」

「氷なのに、溶けねぇとか、何なんだよ!」

(今度は、何?何になるの?)

雪が湾曲を描き、氷がやじりを形成する

「弓矢だ!2人とも、動け!的を絞らせるな!」

——ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!

矢は高速で飛び、洞穴の壁に突き刺さるたびに氷柱が生まれる。

(近、遠問わずの攻撃範囲……溶かすことは出来ても、また別の形を再構築する。これは、まずい……しかし……)

「テトラ!今は、お前の熱だけが頼りだ!先程よりも近くで、技を当てろ!俺とミラで、援護する!いけるか、ミラ!」

「もちろん!頼んだわよ、テトラ!」

「任せろ!」

ミラは頷き、氷獣の周囲を走りながら近づく。

「こっちよ!はぁぁぁぁ!」

氷は元の獣型に変形し、ミラへと襲い掛かる。

——ドォン!バァン!

「俺もいるぞ!こっちへ来い!」

ミラと飛龍フェイロンは氷の獣の攻撃をギリギリで避け、テトラの方へ誘導する。

テトラは全身を赤く輝かせ、熱を最大まで高めていた。

(2人とも……頼む。もう少し、もう少し近づけてくれ……)

テトラの正面、数メートルの距離。氷の獣の視界から、2人が一気に離れる。

「ナイスタイミングだ、2人とも!うぉぉぉぉぉッ!日輪煌天衝サン・ブライト・ロアッ!!」

——ボワァン!シュゥゥゥ……ジュワァァァァァッ……

熱風が洞穴を満たし、氷獣の身体が一気に溶け始める。

——ゴワァァァァァァァァ!

(溶けてはいる……でも、まだ倒しきれてない!)

——キランッ……

(あれは……もしかして!)

「くそっ!この距離でも、溶けねぇのかよ!」

「テトラ!そのまま!」

「ミラ、何をする気だ!」

瞬時に双剣を構え、跳び上がり、重ね合わせ振り下ろす。

「はぁぁぁぁ!銀狼・爆閃撃ぎんろうばくせんげき!」

——ザシュッ!バキンッ!

青色に光るモノが、ミラの剣に切り裂かれる。

——ゴワァァァァァァァァ!ボワァン……ドサドサッ……

氷獣は断末魔の咆哮を上げ、雪となって崩れ落ちた。

「はぁ……はぁ……やった……のか?」

「あぁ……完全に消えた」

「……危なかったわね」

「ミラ、何をしたんだ?」

ミラは、目を細める。

「テトラの攻撃で雪が溶けた時、中に青色の光が見えたの……それを斬ったら体が崩れて再生しなくなった……」

テトラが目を丸くする。

「光って、何だ?」

「分からない……」

洞穴の中で不穏な空気が3人を包む。

ここから氷原の戦いは、さらに深い闇へと進んでいく……


👈第五十四話 氷の獣

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目次・あらすじ

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