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「ロダン早乙女の事件簿 SECOND・CONTACT」怨嗟の鎖 6

第2章 第3話 考察

 あまりにも遅いので伊藤さんが迎えに来た。

 どうかなさったのですかと聞かれたので、鍵を閉めて食堂への行きがてらに先ほどの巡査の件を話す。

「出世欲全開の人ですね」

「そのとおり。佐々木刑事とは全く違う人だ。私はあまり好きじゃないタイプかな。それに、信用していいものかどうか分からないし、自分で本部にアピールしてほしいと思った」

「警察組織をあまり知らない私でも、地理に詳しい程度で捜査に加えていただくのは無理があると思います。何か深い関わりがあれば別でが」

「確かに地理に詳しいだけでは」

 二人は、研究棟を出て、中央棟の食堂に着いた。まだ、お昼の十二時前の為、食堂は空いている。

 食堂に入ると、伊藤さんがあの場所が好きなのでと、テラスが見える大きなガラス張りの窓際のテーブルに案内され、手荷物を置いて二人は食券を買いに行った。

「あそこが伊藤さんの指定席?」と、トレーを持って並びながら、話し掛ける。

「はい、そうです。空いていれば、いつもあの席です」

「夏場も?」

「はい。夏場はすごく暑いのですが、エアコンは効いています。それに夏っ
ていう季節が感じられますし、真夏の日差しが大好きなので」

「女性は真夏の日光は嫌いなのかと思っていたけれど?」

「私は、昔からアウトドア派で、高校生まで陸上をやっていました。顔は、
一年中真っ黒でした。今でも、毎朝のジョギングは欠かしませんし、日に当たっていると、無我夢中で走っていた高校時代を思い出します」

「そういえば、結衣さんの奈良の山では息切れ一つしていなかったね」

「はい。体力だけは自信がありますので」

 私は暖かいお蕎麦、彼女はお弁当なのでカフェオレだけを注文して、そのままトレーを持って席に戻ってきた。

「教授、ロダンになった件ですが、疑問が追加されたようですが。戻り次第ボードに記載しましょうか」

「そうですね。それと別件でお願いがあります」

 何でしょうかと聞かれたので、ホワイトボードは、毎回、奥の倉庫に鍵付きでしまってほしいと話した。

「この事件では、佐々木刑事が突然来られますし、教授の思惑と違う考えを持たれても困りますものね」と呟いていた。

「そうなんだ」と返したが、実際は先ほどの侵入者が気になったからである。それを言うと気にするだろうと思ったので話さなかったのだ。

「結衣さんの事件以来ですね。今回は初めから殺人事件なので緊張いたします」と、武者震いしていた。

「同感だよ。犯罪者を捕まえる手助けはしたけれど、犯罪者から挑戦される側は初めてだから」

 食事を終えた二人は教授室に戻る。

 伊藤さんは中央棟の五階倉庫へ行ってホワイトボードを持ってきて、早速記載してくれた。さすが、伊藤さんだ。6番目までスラスラと書いてくれた。

 ①何故、直ぐに見つかるような場所に遺体を置いたのか。そして、早すぎる検視官。
 ②早乙女教授との関係性は。
 ③名刺の指紋が早乙女教授のみであったのは何故か。
 ④何故、ダムの防犯カメラのループ時間を12時間もの長い時間にしたのか。
 ⑤何故、スタンガンのあとに注射針を刺し、血液を注入していたのか。
 ⑥何故、早乙女教授を早く捜査に参加させたかったのか。

「ありがとう。それじゃ追加で、7番目に、殺害方法には意味があるのか
と書いてください」

「そうなんですか」とびっくりしている。

「まだ疑問の中の疑問だけれど。歩いている人や、立っている人だと、道端で誘拐することになる。そんなとっさの時に、心臓目掛けて上手くスタンガンを当てられるとは思えない」

「おっしゃる通りです」

「それに、睡眠導入剤が検出されていると記載されていたから、寝ている間にピンポイントでスタンガンを当てられたのではないかと思うんだ」

「そうすると、誘拐もしやすくなりますね」

「今日の会議で報告があると思うけれど、被害者は一人で住んでいたのかも早く知りたい」

「どうしてですか」

「もしかすると、足跡を残すことを何とも思っていない犯人だから、何かミスをしているかもしれないからだよ」

午後4時

 佐々木刑事と加藤刑事がドアをノックする。

「お迎えにあがりました、支度は宜しいでしょうか」と言われたので、いつでも大丈夫ですと答えて4人で部屋を出た。

 佐々木刑事が、車に行くまでに、進展はあったかと尋ねてきたので、進展はないが早く聞きたいことがあると返す。

 その後、四人が車に乗り込み出発する。

「先程、お聞きになりたいとお話しされていた件はどのようなことでしょうか」

「今日は被害者の自宅捜査の件です。報告前に先にお聞きしても宜しいでしょうか」

 分かりましたと言い、佐々木刑事がメモを取り出し話し始める。
「被害者の奥さんは8年前に他界され、現在は一人暮らしです。火木土とヘルパーさんが介護に来ておりました。まだ、日常生活は自分でできたようです。家族は子供が4人おり、男3人と末が娘です。みなさん東京都と神奈川県在住なので、日曜日は交代で訪問していたようです。犯行当日は留守で鍵も掛かっていました。まだ、寝ているのかと思い、ヘルパーさんが携帯に掛けたそうですが、出られなかったので、一番上の息子さんに連絡を入れたそうです。その後、息子さんから何度も携帯に掛けていますが掛かりませんでした。その時は、ヘルパーさんの訪問日を間違えて外出してしまったと思いキャンセルしたそうです」

「連絡がつかないにも関わらず、見に行かなかったのですか」と尋ねた。

「一応、気になったようで、11時頃に行ってみると、寝室の布団がめくれたままだったそうです」

「それが、おかしかったんですか」

「几帳面な性格で、普段布団をはだけっぱなしにすることはないとのことでした。そこで兄弟で相談し、警察に連絡したそうです、その後、奥青梅ダムで発見された人と似ていたので、安置所のある監察医務院に来ていただき、確認していただいたところ、父親であると判明しました」

「教授、これで何か進展しますか」

「お願いしていたことは、どうでしたか」

「教授の言う通り、布団に少し失禁されていました」

「やはり、寝ている間にスタンガンを当てられて誘拐されたのでしょう。殺害場所はダムまで連れて行く車の中だと思います」

「それは、報告しても宜しいでしょうか」

「当然、報告して下さい。そして、問題は何時ごろに誘拐されたかです」

「と言いますと」

 ロダンになる。

 佐々木刑事は、理解したのか何も言わずに黙って待っていた。

 あとで伊藤さんに聞いたが、車中の緊張感は半端じゃなかったようだ。多分、私の頼んだことが当たっていたとみんなが思ったからだ。

 ロダンが溶けると、被害者の失禁の件を報告したあとに、私を指名してほしいとお願いした。

「上席に了解を貰います」

 しばらくすると警視庁の駐車場の入り口に着く。

 前回と同じように10階の捜査本部まで来る。そして、入口の戒名が目に入り(さあ行くぞ)と心の中で呟いた。


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