「ロダン早乙女の事件簿 FIRST・CONTACT」 17
第5章 第1話 検証 早乙女准教授室
私は、研究室のドアを開けるといつも通り挨拶を交わしたが、二人とも、どことなくぎこちなかった。すると、伊藤さんから話し掛けてきた。
「先生、奈良で何かを感じることはございましたか」
「じっくり考えたけれど、なにもありません」
「確かにあの原石に関わるようなことは、ありませんでした」
「ただ、あの山には、何かがあるような気はするけれど。それに・・・」
「それに、どうしたのですか」
「いや、単に気のせいだからいいよ」
「先生がそうおっしゃるのなら」と言いながら、奈良への調査における疑問を書き入れるために、マーカーを持ちホワイトボードの前に立っていた。
①遺言者(二朗さん)と受遺者(琢磨さん)は仲が悪い
②受遺者と一切関わりがない公正証書遺言
③受遺者の関係者とも関わりのない公正証書遺言
④自筆証書遺言の存在
⑤自筆証書遺言と公正証書遺言との相違
⑥完璧な公正証書遺言
⑦公正証書は一人で作ったのか
⑧不動産への投資にしては、中途半端な金額
⑨その程度の投資しかしない物件にこれほど怪しげな行動をとるのか
⑩牧野弁護士はZODIAC SIGN(ゾディアック サイン)建設の顧
問ではないであろう
⑪原石は存在するのか
⑫原石があったとしても、奈良の山では原石を見つけるのは難しいし、相
当な費用が必要になる
⑬そもそも。サファイアが出るのであれば、地図ぐらいはあるはず
そして、私は、その疑問を投げる。
「14番目に入れて欲しい事柄があります」
「何でしょうか」
「原石が、二朗さんの名前入りの段ボールに入っていたことだよ」
「何が疑問なのですか」
「本当に、あの山のどこかにサファイアが出るというのであれば、お爺さんが地図を隠していたはず」
「それは、二朗さんに引き継がれたけれど、結衣さんたちに話す前に亡くなられたのではないですか」
「もしも、あるのであれば会社が倒産寸前だった時に採掘すれば、あっという間に立ち直るはず。すぐは無理でも先が見えて安心できると思う」
「お兄さんに対する意地とか」
「意地か」
「しかし、お会いしたことはないし、もうお会いすることはできないけれど、結衣さんから窺い知れる二朗さんからは、原石のことは頭にないような気がするんだ」
「それでは、先生の疑問をボードに書き入れます」
⑭原石が、二朗さんの名前入りの段ボールに入っていた
と、ボードに書いてくれた。
「ありがとう」
「ところで、今日はASAKURA(あさくら)建設へ行って明子さんと面談します」
「それでは、アポを取っておきます」
「いや、大丈夫。平日はおられるということだから」
「でも、お出かけになっていたらどうなさいますか」
「その時はその時」
「明子さんを不審に思われておられるのですか」
「いや、ただ、相手に準備の時間を与えたくないだけだよ」
「準備・ですか?」
伊藤さんは少し不思議そうであったが、出かける用意をしていた。
二人は、外出届を事務局に出した後、大学を出発した。
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