「ロダン早乙女の事件簿 SECOND・CONTACT」怨嗟の鎖 第十八話
第九章 城攻め開始
令和4年4月17日(日曜日)午後1時30分
雑誌考都のビルから東京タワー近辺へ
私達は地下鉄を乗り継ぎ築地駅で降りた。
スマホの案内で行くことにしたが、毎回この案内に不慣れだ。たまにグルグル回りで東西南北のどちらを歩いているのかさっぱり分からなくなる。伊藤さんにそのことをいうとコツがありますと言って、スマホを受け取り誘導してくれた。
しばらく歩くと目当てのビルの前に着いた。方法を聞いたがあまり理解できていなかった。
ビルはかなり年代ものだが、かなり敷地の広いビルであった。玄関ホールのプレート版を見ると、所有者は親会社の考都出版でその一室を使っているようだ。
受付で雑誌考都さんと打ち合わせのために来た早乙女と伊藤と名乗った。
受付の方が電話を掛けて確認後にIDを渡された。二階のフロアーが雑誌考都で、部屋の入口はエレベーターを降りて左に曲がっていただき、正面のドアでございます、そのドアに雑誌考都とプレートがございますので、開けていただければ入口で係のものがお待ちしておりますとのことだった。
私達は言われた通り雑誌考都のドアの前に着いた。ドアを開けて入口で待っていただいていた方に、早乙女と名乗ると簡単な机と椅子のある衝立(ついたて)に囲まれた場所に案内された。
しばらくすると男性が現れ、
「私、編集長をしております佐伯祐一と申します。」と目の前に名刺を差し出した。
「私、帝央大学で教鞭をとっております早乙女と申します。彼女は私の助手で伊藤と申します。」と言い名刺交換した。そして、つまらない物ですがと、手土産を渡した。
「これはどうも、お気を使わせてしまいました。ところで教授とは初めましてですが、特集記事の際には大変お世話になりました。こちらがお礼のご挨拶に伺わなければならないところ大変申し訳ございません。
ところであの特集は好評で、視聴者から続編の要望が沢山来ております。お世辞っぽく聞こえるかもしれませんが、教授のインタビューが一番の反響でした。今日お会いしたのも何かのご縁です。次回作のご検討をお願い致します。」
「こちらこそ、そのように言っていただくと安堵致します。」
「ところで今日は、以前の取材の件で担当者とお話ししたいことがあるとか。」
「はい。たいしたことではないのですがご担当の方と少しお話をさせていただきたく訪問いたしました。」
分かりましたと言い、目線をキョロキョロさせていた。多分担当者を探しているようだった。
見つけると、
「三浦、お前が特集した次世代の若きリーダー達の取材でお世話になった、早乙女教授が聞きたいことがあるということで、ここに来られている。こっちに来てくれ。」
頭ボサボサで無精髭を蓄えた男性がこちらを振り向き、分かりましたと言っているように左手を挙げた。歩いてくる姿は面倒臭いという感じに見えた。
机の前に来たので二人とも立ち上がり、その節はというと、どうもとだけ言った。
編集長は躾(しつけ)ができていなくてすみませんと言い、取材のお礼を言わんかと怒鳴られてから、小さな声でありがとうございましたと言った。
その後編集長は自分の席に戻った。
「こちらこそ有意義な時間を過ごさせていただきました。ところで、今日お伺いしましたのは、取材に来られた方の件で。」
「彼がどうかしましたか。」
私と伊藤さんは顔を見合わせた。そう、三浦さんは彼と言った。
「すみません。今、彼と言われましたよね。」
「はい。秋山というフリーライターです。」
「取材に来られたのは、津野神さんという女性だったのですが。」
「そんなはずはありません。秋山さんから取材の原稿を受け取りましたから。」
記者の勘なのか、今までボソボソという気のない会話だったが、私の言葉で興味が湧いたのか身体にアドレナリンが注入されたようだった。
「すみません。その秋山さんの連絡先を教えて頂けませんか。」
三浦さんは自分の席に戻り、机の中から名刺を取って戻ってきた。
これが秋山さんの名刺ですと言い、コピーをとって来ましょうかと言いながらメモの用意をしていた。これは何か感ずいたかも。
「いいえコピーよりも写真を撮らせていただいてもよろしいでしょうか。」
承諾をいただき名刺を写した。
彼はおもむろに、
「教授、何かの事件ですか。原稿を初めて見た時から名探偵と思っていました。だから、今回も何かの事件がらみで秋山さんのことを聞きに来たのではないですか。」
やはり完全に見抜かれていた。記者の恐るべき洞察力だ。しかし、ここで殺人事件のことを話すわけにはいかないので、取材に来られた津野神さんという方にお礼方々訪問に来たと伝えた。
その後、秋山さんの情報だけが知りたくて聞いてみた。
「秋山さんはフリーライターとのことですが、御社とはお付き合いが長いのですか。」
「いえ、今回が初めてです。正直に言いますと、ある居酒屋で同僚と取材に関する話をしている時に、偶然隣りに秋山さんが居合わせまして。記者の方ですかと話しかけられ、今回の特集を組みませんかと打診されました。
最初は、胡散臭い人かと思ったのですが、聞くとしっかりとしたコンセプトが出来上がっていましたので、後日会社に呼んで契約しました。」
そうですかと言い、これ以上この方から情報を得ることはないと思ったのと、逆取材されそうな雰囲気だった。だから、ここは回避しないといけないと思い、本日お時間を頂きありがとうございましたとお礼をし、奥のデスクの編集長にお辞儀をして部屋を後にしようとした。
すると、三浦さんが編集長の所に行き何やら話をしていたが、私たちは何も言わず1階の受付まで行きIDを返してビルを出た。
出るとすぐに伊藤さんが、
「危なかったですね。逆取材されそうでした。」
「伊藤さんも感じていたんだ。本当に危なかった。」
「ところで、びっくりです。あの人が偽物だなんて。」
「ただ、津野神さんはもしかするとアルバイトという線もあるかも。しかし、三浦さんが話していたが、自分から売り込んでいた。そしてたくさんのインタビューではなかったからアルバイトを雇ってまでする仕事とは思えない。」
「そうですね。教授、取り敢えずその秋山さんに会いに行きましょう。」
「分かった。一応先に電話するよ。」
スマホで撮った名刺を開き、書かれてある事務所に電話をした。ほんの少し間があり呼び出していたので携帯へ転送しているようだった。そして相手が出た。
(もしもし、秋山ですがどちら様でしょうか。)
「突然申し訳ありません。私、帝央大学の早乙女と申します。」
(早乙女さんって、あの早乙女教授ですか。)
「はいそうです。」
(その節は大変お世話になりました。ところで今日はなんのご用件でしょう。)
「取材の件なのですがお話はお会いしてからということで、もしよろしければ本日お時間をいただきたいのですがいかがでしょうか。」
(結構ですよ。教授は今どちらにおられるのですか。)
「いま、築地におります。」
(そうですか。これから東京タワーの近所で取材がありますから、そのあとであれば大丈夫です。)
「分かりました。何時に何処に致しましょうか。」
(四時に東京タワーのすぐ近くのカフェマドレーヌでどうでしょうか。)
「分かりました。そちらでお願いします。」
(それじゃ、住所と地図をショートメールで送っておきます。宜しくお願いします。)
ピンとメール音がして住所と地図が送られて来た。伊藤さんに、秋山さんとの待ち合わせの場所を話し築地駅へ向かった。築地駅から日比谷線で神谷町駅まで行き、あとは地図通りに行くとカフェマドレーヌに着いた。少し早いが先に入って待つことにした。
