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「ロダン早乙女の事件簿 FIRST・CONTACT」 13

第4章 第2話 本当の狙い? PARTⅡ

 呆れた顔をした伊藤さんが、諭すように話す。
「佐々木さん。仮にも刑事さんですから軽はずみな言葉はお慎み下さいませ」

「これは失敬しました。つい本音が出てしまいました。いやこれも失言ですね」と頭をかきながら続ける。

「ところでこれから明子さんに名子のことを聞きに行くのですか」

「いいえ、不確かなことが多いので、明子さんにはまだお聞きしません。あっ、お名前で呼んでしまったのですが、橘さん。失礼とは存じますが苗字が同じ方が多いので、これからは皆さんを下の名前でお呼びすることをお許し下さい」

「はい。まったく気にしておりません」

「ところで、明子さんには今はまだ名子さんと良好な関係でいてほしいので、明子さんのことはもう少し後にしようと思います。先に二朗さんの事でお聞きしたいのですが、まず社長に就任された際にどのような行動をされましたか」

「最初に、明子さんを除いて取締役を一新しました」

「どのように」

「お爺様は会長だけではなく取締役も辞任し、その他の役員の方も辞任したあと私を取締役兼副社長にしました。そして、専務には二十年以上勤めておられる上林部長を抜擢したほか、十五年以上勤めている課長クラスの方三人を取締役に就任していただきました。そして、明子さんは不倫の被害者であり、息子の明雄君を育てるためにも取締役として就任してもらいました。これはお爺様のたっての願いでもあったので」

「対外的な配慮だと思いますね。ところで、お爺様はいいとして、他の取締役の方は辞任することに素直に応じられたのですか」

「お爺様以外はみんな怒っていました。とばっちりですからね。でも・・・」

「でも?」

「お爺様が『二朗に任せた以上、我々は何でも従う。琢磨の不正に関与していなくとも見過ごしてしまったことは私たちの重大な過失だ。責任を取ることで過失を責めないと二朗から約束してもらっている』と言って、全員辞任しました」

「対外的に仕方がないとはいえ、かなりの英断だな。軋轢はあっただろうに信念のある方だ」と、佐々木刑事が語りかけた。

「その後は、二朗叔父さんが先頭切って営業をしていました」

「リストラはされなかったのですか」

「リストラはしませんでした。減収分は役員報酬を全額カットし、役員も仕事の給与だけでした」

「社員は守ったということですね」

「その後立ち直った今も給与だけです」

 何故なんだという顔つきで佐々木刑事が聞く。
「それでは、立ち直ったのに新しい役員の方から不満は出ないのか」

「現在の給与は、全体で25%アップしておりますので、不満は出ていないわ」

「リストラをしなかったのであれば、財産の処分はなかったのですか」

「先生から調べるように言われた奈良の土地や別荘は処分しませんでした。なぜかは分かりません」

「何故でしょうか。やはり鉱石が出ると分かっていたのでしょうか」

「先生、私の知る限りでは奈良の山で開発事業を行ったことはございません。ただ、結構な頻度で関西には出張しておりました」

「そうですか」

「現地調査が必要ですね」と、笑顔で話す伊藤さんがいた。

「そうだね。結衣さん、急で申し訳ないのですが、明日と明後日の土日で案内をお願いできないでしょうか」

「分かりました。ただ、今の季節は雪深い山道になります。それに、かなり手前で車を降りて歩かないといけませんので大変ですけれど、よろしいのでしょうか」

「そこに行かないと始まらないと思います。ところで、雪深いということは登山用の服を持っていかないといけないですね」

「登山用の服はこちらで用意致します。先生の服のサイズはL寸で、靴は27センチで宜しいでしょうか」

「はい。その通りです。ありがとうございます」

「いいえ。こちらこそ、何か大事になってきて、申し訳ございません」

「講義は終わりましたし、生徒のレポート提出までかなり日数がありますから、それに鉄は熱いうちに打てと言いますので」

「明日は、10時にご自宅へお迎えにあがるので宜しいでしょうか」

「東京駅の待ち合わせでいいですよ」

「いいえ、お荷物もありますでしょうし、車でお迎えにあがります」

「ありがとうございます」と言って、住所のメモを渡した。

「ところで、佐々木さんがおられるので一つお願いがあります」

「なんでしょう」

「18年前にあった、結衣さんの会社の贈収賄事件に関する詳細を調べていただけませんでしょうか」

「賄賂関係は2課ですが、同期が本庁で班長をしておりますので、何とか頼めると思います」

「佐々木さんより出世されておられるのですね」と、伊藤さんが話す。

「私は出世より現場第一でやっています。階級は一緒で警部補ですから、そいつは、たまたま本庁に行っただけですよ」

 私は、出世より現場第一と聞いたことで「ご謙遜を」と言ってしまった。すると、伊藤さんが、ツッコミを入れる。
「先生、意味が少し違います。傷口に塩を塗るようなことはお控え下さい」

「いやあ、伊藤さんの方が傷つくわ」と、しょげていた。
 
 この会話は私には複雑だと思った。

 結衣さんは明日の手配がありますと言いながら、二人一緒にソフアから立ち上がり部屋を出て行った。

 伊藤さんには事務局に休みの手続きをお願いして早退することにした。

 明日の調査が待ち遠しく感じていた。

#創作大賞2024 #ミステリー小説部門


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