見出し画像

「ロダン早乙女の事件簿 SECOND・CONTACT」怨嗟の鎖    第十三話

第六章 霧の中
令和4年4月16日(土曜日)午前8時半
早乙女教授室
 
 私は、教授室に入るなり私の机の後ろにあるホワイトボードを見た。

 さすが、伊藤さん。いつもながら感心させられる。私が持った疑問が書き足されてあった。

「伊藤さんおはよう。」

 ボードには、
 ①何故、直ぐに見つかるような場所に遺体を置いたのか。そして、早すぎる検視官。
 ②早乙女教授との関係性は。
 ③名刺の指紋が早乙女教授のみであったのは何故か。
 ④何故、ループ時間を十二時間もの長い時間にしたのか。
 ⑤スタンガンのあとに注射針を刺し、空気を注入していたのはなぜか。
 ⑥早乙女教授を早く捜査に参加させたかったのか。
 ⑦殺害方法には意味があるのか。
 ⑧第二?の事件の発生。(殺害日が不明)
 ⑨なぜ凍死による殺害方法をとったのか。
 ⑩二枚目の名刺
 ⑪今回も見つけやすいような場所に遺棄。
 ⑫テーザーガンの使用?

「あと一つ、書き足して欲しいことがあります。」

 はいと言って、ホワイトボードの前に行きマーカーを持ちながらこちらを向いた。

「⑬第一の被害者と第二の被害者の関連性は。と書いて下さい。」

 伊藤さんは、言われた通り⑬番目を書いてもらった。

 私は、長い間ホワイトボードを見ながらロダンになっていた。

 ロダンから戻ったが、攻め方が分からないもどかしさで、苛立つ自分がそこにいた。伊藤さんは、いつもと違う私が分かるのか、いつのまにか、何も言わず自分の机に戻っていた。

 しばらくして、そろそろ質問の生徒が参りますと言われたが、未だぼうっとしている私を見かねて、私の正面に立ち、両手で私の両手を掴んで言った。

「教授、一人で抱えないで下さい。今回は、今までと違って挑戦されているということから、たぶん自分の責任と思って負担に感じておられるのでしょう。でも今度は私にも支えさせて下さい。そのための助手ではないですか。」

 ありがとうと言ったが、伊藤さんの言葉が突き刺さった。というよりも、完全に見透かされていたような感じだった。
 人生で初めてと思われるほど動揺していたのだろう。この事件は自分が原因で起こっていると、いつのまにか考えていたのかも知れなかった。

「伊藤さんのいう通りだ。臨床心理学を学ぶ者でありながら、完全に浮き足だっていました。」

「教授が言われる通り、まだ情報が足りないと思います。それが集まれば天才早乙女教授ならこんな挑戦もろともしませんから。」

 いつのまにか、助手ではなく、なくてはならないバディのような存在になっていた。

 生徒がノックし部屋に入って来た。

 相談が終わると伊藤さんから、そろそろ佐々木刑事が来られるはずですと言われた。

 その後、後ろ向きにしていたホワイトボードを倉庫に入れますと言ったので、大丈夫此処に置いたままにしていいですと言った。

 たぶん、その都度その都度、倉庫にしまって下さいと言ったせいだと思ったので、二人に関しては構わないと話した。
 
午後10時30分過ぎ
 
 佐々木刑事と加藤刑事がノックをしたあと入って来た。佐々木刑事はホワイトボードを見て、そろそろ城攻めですかと言った。
 しかし、今はまだ霧に隠れてしまっていて、どこに外堀があるのかが分からず探っているところです。だから、もっと情報が必要ですと話した。

 佐々木刑事に、お願いした全域の聞き込みはできましたかと尋ねた。

 今回も留守宅があり5軒ほどがまだですが、電話をもらえるように名刺を置いてきていますので、二、三日で完了すると思いますと言った。また前回聞き込みが出来なかった残りは、全部完了しておりますと言い、カバンから地図を出した。

 私は、机に広げられた地図をじっくり見た。そこで顔を上げ佐々木刑事に話した。

「もしよろしければ、午後に聞き込みをしたいのですがどうでしょうか。」

 すると加藤刑事が、
「私たちの聞き込みに不備があったのでしょうか。」と少し苛立ち気味に言ってきた。

 佐々木刑事が、やめろと言ったが、さらに続けた。
「今日も朝早くから始め、これだけを実質一日半で回るのは大変な作業です。何か不備と言われるのであれば言って頂けませんか。」

 あまりよくない方向であったので、私の真意を伝えた。

「不備とか見逃しがあったとかではありません。家から連れ出されたのは間違いがありません。しかし、正面の家の防犯カメラがアナログ式であることから、ハッキングしにくい状態でいかにして連れ出したのか。

 この謎が解けなければ、これからの捜査が一歩も進まないことになります。必ず何らかのトリックが存在するはずです。

 だから、それを解き明かすために重要地点をピンポイントで聞き込みしながら、その奥に潜む真意を確かめたいのです。」

「分かったか加藤。教授が俺たちの粗探しをするような人じゃないってことを。」

「浅はかでした。教授、申し訳ありませんでした。」

「いいえ。私こそ、申し訳ありません。相手の心理を読むのが仕事なため、自分の真意は外に出さないようにしているので。」

 伊藤さんが、
「では、わだかまりがなくなったところで、先に進みましょうか。」と、また彼女の笑顔に救われた。

 一旦別れ、私は百合のために実家へ行くことにした。

 伊藤さんは午後から夕方にかけて用事があるということで、聞き込みは私と佐々木・加藤両刑事の三人になり、伊藤さんは早々に帰宅した。

 お二人は一旦本部に帰った後、現地に2時の約束をして帰って行った。私はタクシーを呼び最後に出ることにした。


いいなと思ったら応援しよう!