「ロダン早乙女の事件簿 FIRST・CONTACT」 15
第4章 第4話 調査 PARTⅠ
その後、4人は大阪メトロで梅田駅に着いた。そして、結衣さんに予約してもらっていたホテルへ直行する。部屋に入るとツイン同士の部屋であった。
ふと思ったのだが、何故、女性陣もツインなのかと。
4人はそれぞれの部屋に入ったが、入るなり佐々木刑事に、女性陣のツインのことを尋ねてみた。すると、結衣に昨日同行を頼んだ時、伊藤さんが来ることは分かっていたようでしたよと言われた。ということは、朝の段階ではビックリしていなかったということだ。私たちのことをどのように思っているのかと思った。
まあいいかと思い、取り敢えずシャワーを浴びて着替えた後、二人で椅子にくつろいでいた。
缶ジュースを開けようとしているとドアがノックされ、結衣さんが夕食は20階のレストランアースヘブンで7時と告げ、明日の登山用の服と靴を置いて行った。聞くと昨日のうちにホテルに送っていたようだ。
7時少し前になった。二人はドアを開けて廊下に出ると伊藤さん達も出てきた。
髪の毛を下した伊藤さんを初めて見た。
この旅は新しい伊藤さんの発見の場だなと思ったが、いやいや確か十二歳も違う彼女に対してなんてことをと思い直し、セクハラと言われかねないので邪念を振り払うように大きな声で話し掛けた。
「お腹がすきましたね。フランス料理ですか」と結衣さんに尋ねると、相槌を返してきたので、楽しみと答えた。
少しぎこちなかったかもしれない。
4人がレストランに入ると、窓際中央の四人席に案内された。結衣さんは初めに、明日はいい調査ができますようにとシャンパンを頼んだ。
私達は、シャンパングラスに注がれる音を静かに聞いていた。
注ぎ終わると伊藤さんが呟く。
「シャンパンが注がれる音をこんなにゆっくりと聞いたことがありません。何か特別な夜を感じます」
すると結衣さんが興味津々な様子で聞いてきた。
「先生と伊藤さんはお付き合いされてどれぐらいになるのですか。それにお二人でホテルでのお食事はされたことがないのですか」
伊藤さんと私が声を揃えて発する。
「「お付き合いされておられません」」
佐々木刑事が呆れた口調で話す。
「何ですかその他人行儀な言い方は」
取り敢えず違いますのでと繰り返して、話を打ち止めにしてもらった。
その後、グリーンアスパラ、ヤングコーン、オクラに囲まれたサーモンの横にゼリー和えのオードブルが運ばれてきた。その一つ一つに出汁のゼリーが味を引き立たせており、新鮮な野菜の歯ごたえの後に、カツオと昆布の海の香りが口の中を覆った。
次のポワソンは、焼いたスズキに野菜が添えられたものである。その白身魚の淡白さを補うために少し濃い目のウニのソースが回りを囲むように掛けられていた。
スズキを切り取りそのソースに浸すと甘みと酸味が交互に口の中に漂った。甘味はウニで分かるのだがその後の酸味に興味を持ったので、スタッフに尋ねてみた。すると、隠し味に黒酢がソースに練り込むように入っているとの事。
練り込むとはと再度尋ねると、かき混ぜるのではなく、ウニの中に包み込むようにゆっくり溶かしているとの事だ。だから、ウニを頂いた後にやって来たんだと思った。
その後、柑橘系のグラニテの頂いた後、メインのヴィアンドが運ばれてきた。
スタッフが神戸牛にフォアグラ重ねと説明する。ソースは和風ということで意外な組み合わせであった。フォアグラはいうまでもなくお肉もナイフを入れると滑らかに切ることができた。そのままフォークで頂くと、口の中でお肉とフォアグラが調和の旋律を奏でていた。4人は急に無口になり、後から注がれたワインと共にその味を堪能していた。
食事を終えた私たちは部屋で二次会を始めた。佐々木刑事が昼に買っていた豚まんを出してくる。レンジがないことを話すと、ここの豚まんは冷めても大丈夫だと言われ、そのまま食べた。
自慢するだけのことはあり、本当に美味しく頂いた。
その後、佐々木刑事の大阪自慢で盛り上がっていく。
午後十10時になり、結衣さんが、明日の用意があると言い、お開きになった。そして、結衣さんと伊藤さんは自分の部屋に戻って行く。
私達二人はというと、少し飲み足りなさを感じ、ルームサービスでワインを頼み、一緒に飲みながら結衣さんと知り合ったサークルの話に花が咲いた。
次の日は六時前に起きて、みんなでホテルの朝食の会場に向かった。
一旦席に着くと、結衣さんが私と伊藤さんの恋愛事情を尋ねてくる。
「お二人はいつもどのような食事をされておられるのですか、ご一緒に作られるのですか」
やはり完全に一緒に暮らしていると思っている。昨日と同じように否定したが、佐々木刑事が、とんでもない言葉を投げてきた。
「あまり突っ込んだら先生に悪い」と、話を終わらせてしまった。
もう、どのように言い訳してもダメであった。心の中で、伊藤さん、此処はいつものような言葉を発してよと叫んでいた。
食事後、昨日頂いた登山用の服に着替えてロビーに降りてきた。清算をした4人は、大阪メトロに乗って難波駅へ。そして、近鉄電車に乗り換える前に着替えをロッカーに預け、近鉄奈良駅へと向かった。
佐々木刑事が電車の中で結衣さんに問いかける。
「昨日、先生と目的地の場所の地図を見ていたら、かなり奥地だから他に道が無いかと考えて、北側の道を行くのはどうなんだ」
「会社の者が、そこからでは土地が一望できないと言ってたわ」
「それは誰?」
「専務です。あっ、今は前専務ですけど、私も行ったことがないのでハッキリとは分からないけれど、北側を行くと遭難する可能性があるから、行かない方がいいと話していました」
「そうか、それじゃ仕方がない」
話が終わり、いつの間にか、みんな眠ってしまった。
しばらくすると、近鉄奈良駅というアナウンスが流れ、4人は慌てて降りた。
慌ててリュックを担ぎ立ち上がった佐々木刑事が、笑いながら話す。
「みなさん。近鉄奈良は終点でした。慌てさせてすみません」
「「そうですね終点でしたね」」と、みんなが顔を見合わせて笑っていた。
「ところで佐々木刑事のリュックは本格的なリュックですね。何が入っているんですか」と尋ねた。
「登山には付き物です。まあ、転ばぬ先の杖です」
この転ばぬ先の杖が私の窮地を救ってくれるとは、この時は考えもつかなかった。
駅を出ると、結衣さんが用意してくれたいたレンタカーのミニバンが待っていた。
佐々木刑事は、配送してきた人からキーを受け取り、スライドドアを開けてくれた。
「私が運転しますので、先生達は後部座席へ結衣は助手席で」
「「ありがとうございます」」と、私と伊藤さんが同時にお礼を言って乗り込んだ。
結衣さんが振り向いて私達に話し掛ける。
「かなり険しい登山になりますので、途中、飲み物とサンドイッチを買いましょう」
コンビニに入った後、ここでも誰かに見られているような気がした。見渡したがやはり知り合いはいなかった。気のせいなのかもしれない。そもそも、跡をつけられるほどの調査でもないとも思った。
その後、一時間ぐらい走り、ほぼ三重県の近くまでやって来た。高速を降りてしばらく行くと、舗装されていない道路に出た。そのがたがた道を進むとやっと止まることに。
道が細くなってきたところで結衣さんが佐々木刑事に話し掛ける。
「佐々木君、ここで止まって。さあ、みなさん着きました。ここからは、車で行けませんので頑張って歩きましょう」
(ええっ!)という心の叫びが聞こえた。
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