想像してごらん! 天国なんて無いんだって!
前回のあらすじ;
親以上の温もりに圧倒される日々。
現在地;アルゼンチン

バイアブランカという大西洋沿いの街の宿。
アーティストをされているオーナーのパウラさんがご自身のアトリエ兼ご自宅の一室を旅人向けに間貸ししてくれています。
アルゼンチン、特にこれからのパタゴニア地方の街ではこういったタイプの宿が比較的安かったのでよくお世話になっていました。
寝る部屋以外の設備はオーナーさんと共用で、地元の人の暮らしに入り込めるような感覚がとても心地良いです。

私事ではあるんですがものすごく髪が伸びてきました。結構しんどいです。前髪は顎をゆうに越えて、肩甲骨まで伸びた後ろ髪を普段は後ろで結っています。まだ微かに残っているツイストパーマと日頃のダメージによって毛先が死にまくってうにゅうにゅしまくり。
「ジョンレノンみたいね」
髪を下ろした状態で眼鏡をかけているとたまにそう言われます。
アルゼンチンだけでも5回くらい言われました。
「そしたらあなたはオノヨーコだね!」とか、少しアンニュイな表情でそれっぽく「イマジン…」って言ってみるとちょっとだけウケます。ジョンが望んだ平和な世界がここにはあります。世界に笑顔を増やす草の根活動です。ラブアンドピース。

6月の中旬、アルゼンチンの中部は冬の始まりを感じさせる空気です。

そして世界を揺るがすワールドカップの始まりでもあります。
どこもかしこもアルゼンチンの国旗まみれ、前回王者の誇りを賭けて国全体で応援している熱気がビッシビシに感じられました。
本当に良いタイミングでアルゼンチンに入れたと思います。試合観戦の様子はまた後でもちょろっと書いていこうと思います。サッカー観戦を通じて素敵な出会いもありました。


まずはガソリンスタンド併設のカフェで日本代表の試合観戦。
オランダ戦めちゃくちゃシビれましたね。ゴールシーンは思わず声が出ちゃう派なんですが、店員さんも周りの人もニコニコ温かく見守ってくれて、なんなら声を掛けてくれて一緒に日本代表を応援してくれた人までいました。
ここからは日本代表とアルゼンチン代表の試合日程をベースに走行スケジュールを立てる日々の始まりです。

時を同じくしてパタゴニア地方に突入しました。
このモニュメントが100km〜200km置きくらいで道路沿いに配置されています。

パタゴニア地方は南米大陸の南緯40°以南の地域を指す総称で、低気温と強風による「風の大地」として知られています。この時はまだそうでもなかったんですが、後々この風でたくさん地獄を見ることになります。
地図を見るとまぁとんでもないところに来てしまったなとしみじみ思います。

基本的には真っ平の荒野です。
道路沿いに広がっていた湿地帯もいつの間にか無くなってただただ乾燥して生気のない大地が広がっています。
町と町の間隔も余裕で100kmを越えるようになりました。
いや、マジでとんでもないところに来てしまったなと思います。

道端で野宿し放題です。何もないので。

乾燥、寒さ、平地、暗闇。
すなわち星空観察にはもってこいのコンディションなんですよね。
天球を真っ二つに切り裂く天の川の下で寒さに身を震わせながらタバコの煙を吐き出して、行く先を照らすみなみじゅうじ座を睨みつけて己を奮い立たせる佐々木。
何かしらの主人公になれる気がしました。


夜が明けると装備一式に霜が降り、油断して対策を怠るとペットボトルの水が凍ります。
テントがカッチカチに凍るの、身内の不幸の次くらいに嫌です。霜を溶かして乾かすのがアホほどめんどくさいんです。

本当に何も無いので基本的にひたすらずっと自転車を漕ぎながら己と対話するしかありません。
でももう己と対話しすぎてだんだん話すことも無くなってくるんですよね。
心の中で続く沈黙。
自分で自分に気まずくなったの生まれて初めてです。




そんな時でもたくさんの人が声を掛けてくれたりお菓子をくれたり、時にはチップとして10000ペソをいただいたりもしました。
この人たちがいなかったらたぶんそのうち狂っていたと思います。いや本当に。

トレリューという街に向かう日、いよいよパタゴニアがその本領を発揮してきました。
道路沿いにあったトラックの計量所のそばでテントを張らせてもらったんですが、未明ごろからテントが風で暴れ始め、朝起きてトイレを済ませて戻ってくる頃には全てが吹き飛ばされかけてました。あぶねえ!
この日は向かい風が本当に強くて、どれだけ頑張って漕いでも自転車が進むのはやす子の匍匐前進くらいのスピード。
やす子には本当に申し訳ないんですが、この時はもうやす子が憎くて憎くてたまらなかったです。はい〜。

そんな時に路肩でもがいている僕を見兼ねてか、大きめのバンからおじいさんが声を掛けてくれて自転車もろとも乗せてくれることになりました。

トレリューにお住まいのゲメスさん。
本当にありがたくて涙が出そうでした。
やす子のことも反動で大好きになりました。
車窓から流れていくパタゴニアの景色が爽快でたまりませんでした。

というわけで30kmほど車に乗せてもらいトレリューの街に到着です。
風によるスピード低下を考慮しておらず、持ち運んでいた食糧も尽きかけていたタイミングだったので本当に助かりました。命の恩人です。

アルゼンチン代表の試合日だったためか、道端で国旗を振り回して市民を鼓舞するおじいさんもいました。
チェ・ゲバラの生まれ変わりかと思いました。
タイトル:『Imagine』byジョンレノン
(メロコアバージョン)
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