風の日には飛ぼうとしてみる
前回のあらすじ;
レノンが俺にもっと輝けと囁いている。
現在地;アルゼンチン

トレリューの街には4泊。
この宿もオーナーさん宅の一室を間借りするタイプの宿で、なんとも可愛らしい猫が2匹。
トレリューでは1日の大半をこの子らと戯れてました。たぶん8時間以上。実質フルタイム労働そして残業ありです。
ドアtoネコが5秒以内、キャットタワー完備、各種愛情表現あり、餌やり可(社内規定に準ずる)。アットホームな職場です!

ドアtoネコが0秒になる

はい、町を出ればすぐに荒野。
風が強いわ寒いわで、パタゴニア地方はあんまりモチベーションが上がってきません。
でも、" 行け 佐々木 "と名乗ってしまっている以上、前に進む以外の選択肢は無いのです。
こんなことなら「もうやめようぜ 佐々木」とか「ちょっと頑張りすぎじゃないか 佐々木」とかにしとけばよかったなって少し後悔しています。
そもそもまず" 行け 佐々木 "というネーミングもなんじゃそりゃという感じですが。

たまに見かける風力発電にもムカついてきます。
人が死にそうになりながらチャリ漕いでる時に楽しそうにクルクルしてんじゃねえぞって。
追い風の時はツールドフランスくらいスピードが出るので最高にテンションが上がるんですが、そんな日は1週間のうちに1日あるかないかで、なぜかほぼ毎日向かい風か横風です。

南緯45°に差し掛かったあたりから、道端に転がる動物の骨の数が異常に増えてきました。
大地に潤いはゼロで、すっかり砂漠の様相。

コモドーロ・リバダビアという街。
サラッと書いてるのでピンとこないかもしれませんが、トレリューの街からは400kmくらいの道のりを5日かけて進んできました。その間にあった補給地点はガソリンスタンドが一軒だけ。
少し間違えたら普通に餓死や凍死ができちゃう環境でした。シビれます。
寒くて手袋を外すのも面倒だし、そもそも撮るものが辺り一面の荒野しかないのでパタゴニア地方で撮った写真は必然的に少なめです。

ワールドカップの日本対ブラジルを観るために宿を取りました。良い感じのホステルが見つかって良かった。
経営してるご家族と他の宿泊者のみんなで観戦しましたが、皆さんの応援むなしく惜しくも敗戦。
だいぶ落ち込みました。
でもみんな慰めてくれて嬉しかったです。

はじめましての動物標識が出現しました。
脚がとてもスラっとしていて菜々緒みたいです。
対して一方の佐々木、過去に立川駅周辺をブラブラ歩いている時にガールズバーのキャッチのお姉さんに「脚ほそっ!」と言われたことがあります。
賛辞なのか誹謗なのかイマイチわからないその言葉を無理やりポジティブに解釈して今日まで過ごしてきました。
パタゴニアの地を分かつ美脚決戦、どちらに軍配が上がることになるのでしょうか。

その野生動物はグアナコといいます。
それはもうそこらじゅうにウジャウジャいて道路にもしょっちゅう出てきてるんですが、警戒心がとても強くて、100mも近づくとすぐに颯爽と彼方へ逃げてしまいます。自慢の美脚で地面を踏み締めて。
iPhoneのカメラでは捉えきれないので、離れたところからゆっくり近づいてミラーレスの望遠レンズでなんとかファインダーに収めました。

見た目はとても可愛いんです。
が、遠くから煽り散らすようにキョッキョッキョッと甲高い鳴き声を浴びせてくるのがなかなか腹立ちます。
ムカついて何度か石をぶん投げたりしましたが、その石は虚空を素通りするだけでまったく当たる気配はありませんでした。
貴様らがいくら鳴いたところで立川のガールズバーのお姉さんたちに声をかけられることはないんだぜ。畜生風情が、身の程をわきまえろよ。

アルゼンチンではこのYPFという大手ガソリンスタンドによくお世話になりました。
基本的にどこもトイレ、売店、休憩スペースが完備されていて、パタゴニアの僻地にあるYPFにはホテルが併設されていることも多いのでロードトリッパーやバイカー、そして自転車旅人のオアシスとなっています。

トレス・セロスという場所にあるYPF。
町とかいう大層な場所じゃなくて、荒野の中にポツンと佇んでいるガソリンスタンドです。
この日はワールドカップのアルゼンチンVSカーボベルデの試合日だったので、キックオフの時間まで暇を潰しているとスティーフェンという青年バイカーに日本語で話しかけられました。

自転車のサイドバッグに付いている日の丸を見て話しかけてくれたようです。
アニメが好きで日本語を独学で勉強しているようです。
紙とペンを持ってきてくれて、お互いに日本語とスペイン語を教え合いながら異文化交流を図ります。

試合に関しては展開がアツすぎてもう喉がガラガラでした。
あんなに熱狂に包まれたガソリンスタンドは世界で唯一ここだけだったと思います。

ハーフタイムにはスティーフェンが自分の着ていたアルゼンチンのユニフォームをくれました。
日本代表のユニフォームはあいにく持ち合わせがなかったので、その時着ていたモンベルのTシャツと交換することに。
ごめんねスティーフェン、でもモンベルは日本が誇る立派なアウトドア企業です。俺も大切にするから、お前も大切にしてくれよな。本当にありがとう。

延長戦までもつれ込んだ試合展開でなんとかアルゼンチンが勝利を収めて、そのままガソリンスタンドの裏で2人でテントを並べて夜を明かしました。
朝はお互いもそもそと装備を片付けて、マテ茶をしばいた後にお互いの旅の健闘を祈り合ってお別れ。
その後もスティーフェンはメンヘラの彼氏くらいの頻度でWhatsAppで連絡を寄越してきますが、なんにせよめちゃくちゃ良い奴です。
一生忘れない素敵な時間を過ごすことができました。


その後も向かい風に曝されながらなんとか死ぬ思いでプエルト・サンフリアンの町に到着。
大西洋沿いのこじんまりとした港町です。
大航海時代の1520年、マゼランが率いる遠征隊がこの港に寄港したということで、マゼラン艦隊の船を模したモニュメントが港に浮かんでいます。
マゼラン艦隊はこのパタゴニア地方でなんかいろいろトラブったり仲間割れで殺し合いをしまくったりしながらもなんとかその後世界一周を成し遂げたらしいです。嘘だろ?
「もうやめようぜ マゼラン」って名前でnoteに旅の記録を残してほしかったな。全部の記事にスキを押してたと思う、きっと。

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