『元テレビ局員がやさしく解説 SNS炎上防止大全 広報・SNS運用者が知っておくべき対策と対応』第1章・無料全文公開
12月26日発売の書籍『元テレビ局員がやさしく解説 SNS炎上防止大全 広報・SNS運用者が知っておくべき対策と対応』から、第1章「現代は炎上だらけの時代」を全文公開!
公式アカウントで炎上
誰しも炎上はしたくないもの。公式アカウントであれば、なおさらです。なぜなら企業や組織の代表として世の中の人たちに伝えているわけですから。しかしながら、公式アカウントで炎上する企業が続出しているのです。
有名エンターテインメント会社が炎上
公式アカウントが炎上した事例で衝撃的なものとして思い出されるのは、2015年8月9日に投稿された、世界的に有名な総合エンターテインメント会社D社の公式アカウントでした。
〝なんでもない日おめでとう。〟
映画の劇中歌にちなんだメッセージで、担当者はおそらく何の考えもなく、8月9日という長崎に原爆が投下された日に投稿してしまったのです。当然、「原爆の日なのになんでもない日だと?」「日本の公式アカウントでつぶやくのは配慮に欠ける」など、日本国民の感情を逆なでるとして、大変多くの批判が相次ぎました。その日は投下からちょうど70年という節目の日でもあります。公式アカウントは投稿を即日削除し、謝罪しました。
炎上にとくに気をつけないといけない「注意日」というものがあります。大きな災害や事故などが起きた日、1年間でその日には本当に注意して投稿しなければいけません。D社の担当者は映画のPRも含めて投稿したのでしょうが、少しの配慮があれば炎上しなかったと思われます。
玩具メーカーが炎上
玩具メーカーT社の公式アカウントが2020年に炎上しました。
当時トレンドであった「#個人情報を勝手に暴露します」というハッシュタグを使い、自社キャラクターRちゃんの誕生日・身長・体重・電話番号などのプロフィールを投稿したのです。公式アカウントは〝とある筋から、Rっていう小学生の女の子の家の電話番号、入手したのでみなさんにも紹介しておきますね〟とキャラクターのプロフィール情報を投稿。さらに、〝久しぶりに電話したら、昨日の夜はクリームシチュー食べたって教えてくれました。こんなおじさんにも優しくしてくれるRちゃん・・・〟とも投稿したのです。
子どもの個人情報を暴露する、という表現に対し、「女児への性犯罪を連想させる」「気持ち悪い」などと批判が相次ぎました。同社は3日後に「表現について至らぬ点がございましたことを心より深くお詫び申し上げます。大変申し訳ございませんでした」と謝罪し、問題の投稿を削除しました。
投稿した担当者は、炎上する以前の投稿についても批判されていたようです。玩具メーカーの公式アカウントでキャラクターをPRする、という業務だったとはいえ、担当者と世間の常識のズレが炎上を生んだといえます。公式としての責任感や配慮が足りなかったことは否めないでしょう。
学校教材販売会社が炎上
学校教材や防犯ブザーを扱うA社が多くの批判を受けた事例があります。
2023年9月、A社の公式アカウントは小児性愛を題材にしたようなミュージックビデオ(MV)に自社製品を想起させる絵が登場した旨を投稿し、多くの批判の声が寄せられました。具体的には、公式X(旧Twitter)のアカウントやYouTubeチャンネルで、楽曲に登場する防犯ブザーが自社製品であることを示唆する投稿を行い、スタッフが楽曲のダンスに挑戦する動画を公開。これに対して「小児性犯罪を軽視している」との批判が殺到し、企業倫理の欠如が問題視されました。
A社はこれらの投稿を削除し、公式サイトで謝罪声明を発表。声明では、「著しく配慮と自覚を欠く極めて不適切な行為であり、子どもと教育に関わる企業としてあってはならない内容であった」と認め、再発防止策を講じることを約束しました。
子どもを守るものを扱う企業が小児犯罪を連想させるものにつながる投稿をしてしまった事例ですが、企業倫理を根本的に揺るがす投稿になる、という想像力が欠けていたのかもしれません。
自治体が炎上
自治体の公式アカウントも炎上しています。
SNS発信が起点となった炎上としては、2023年のU市のPR動画が挙げられます。市長が若い女性とホテルに入っていく、あたかも不倫をしているようなイメージの53秒のPR動画で、TikTokで発信されました。ホテルの女性従業員に「君も一緒にプールに入らない?」と誘う場面もあり、セクハラや女性蔑視にあたると指摘が相次ぎ、市長が「不快に感じた視聴者や市民に深くおお詫び申し上げる。ジェンダーや性の考え方について一生懸命に取り組んできたつもりだったが、痛恨の極み」と陳謝しました。
市は「観光誘致や市のPRのため」だとして、25本の動画を投稿。外部のクリエイターが書いた台本に市長や職員が意見を出して制作したもの、ということです。U市は性の多様性に関する条例を施行したことでも知られていたこともあり、驚きとともに、動画に批判が集まりました。
同じく2023年、公立C美術館の公式アカウントが特別展の作品を解説とともに紹介しましたが、炎上してしまいました。紹介した作品は、人間の煩悩や欲望を露わにした現代人を描いたもので、欲を描かれているモデルはすべて女性でした。作品及び解説文について、ネット上では、「人間の欲を描く作品で、なんで女性だけなの? 違和感しかない」「どう見ても性的な作品」「解説が気持ち悪い」などと女性蔑視であるとの指摘が大変多く、批判が集まりました。これに対し、美術館側は何の説明もなく投稿から解説文を削除。これにより、大きな炎上に変わっていきました。
2024年には、K市の関連団体が炎上しました。K市関連団体の公式アカウントが、政治に関する不適切な投稿をしたとして謝罪。公式アカウントの担当者は、都知事選の選挙運動期間前の評論家がコメントしたポストを引用したものを投稿。約1時間後にK市職員が気づき削除されました。K市によると、投稿した担当者は60代の職員で、自分のアカウントと間違って投稿したとのことでした。自治体関連の公式アカウントが政治的な引用ポストを行ったことで注目を浴びてしまいました。
「誤爆」といわれる、公式と個人のアカウント間違いを防ぐためには、担当者の意識に頼るしかないのが現状だと思います。もちろん、管理ツールを使う手はありますが、コストがかかるため予算化が難しいかもしれません。公式アカウントを運用する以上、担当者への教育訓練が必須だと思います。
採用担当者が炎上
採用担当者のアカウントでの炎上も多くなっています。
2022年、名刺管理サービスなどを手掛けるS社の人事担当者は、投稿は個人の意見としていたものの、自身のX(旧Twitter)アカウントで会社名を明らかにしたうえで〝採用は「採ってはいけない人」を見極める仕事だ。〟と投稿しました。X(旧Twitter)上では「面接で落とされた就活生が見ているかもしれないという想像力が欠如しているから、こういう発言が生まれる」「就活生のいいところを引き出す面接をするべき」「こういう人を人事担当者にする会社が悪い」といった批判が続出しました。
炎上した担当者は投稿を削除しましたが、謝罪は一切ありませんでした。
この投稿が炎上すると、S社の株価が急落する影響も出ました。
同年、ベンチャーコンサル企業N社の採用担当者が、「給与や待遇にこだわりのある人とは働きたくないのです」と投稿。「労働者が会社の待遇や給与で選ぶのは当然の権利」「やりがいの搾取なのではないか」などと非常に多くの批判が殺到しました。このアカウントは個人のものでしたが、企業名と実名が記載されていました。
炎上翌日には「たくさんの意見ありがとうございます」「価値観はそれぞれ違いますので、私が正解ではないですし、それぞれの価値観で正解だと思います」と投稿し、これが再炎上。「燃料再投下」といわれる事象でした。
2024年、採用支援企業T社の採用担当者がX(旧Twitter)で炎上しました。懇願により再選考を受けた学生に対し、「本当によくがんばった。勇気をたくさん振り絞った。あきらめないでいてくれありがとう」という投稿をし、「自己陶酔」「特権階級になったつもりか」「リベンジ入社が社内に知れ渡ったら可哀想」などと批判が殺到。採用担当者はアカウントを削除しています。
これらの事例に見られるのは採用担当者の「上から目線」です。2011年にT鉛筆の採用担当者が炎上する有名な事例がありましたが、その担当者のメッセージも配慮がない、「上から目線」のものでした。結局いまでも同じような目線の採用担当者がいる、ということです。自社のこともよくわかっており、学生にもいちばん近いといえる採用担当者には昔もいまも、学生に寄り添い、配慮がある投稿や行動が必要である、ということでしょう。
広告で炎上
企業広告の炎上もずっと続いています。CM・サイネージ・販促物などあらゆる広告分野で炎上が発生しています。古くは2012年の調味料メーカーA社の企業CM「日本のお母さん」が知られていますが、炎上CMとしていまでも思い出されるのは、2017年のビールメーカーS社のウェブ動画です。
ビール会社がPR動画で炎上
2017年にS社製ビールの「絶頂うまい出張」と題するPR動画が特設サイト、YouTube、X(旧Twitter)上で公開され、その内容が「不快」「卑猥」といった批判を受けて炎上しました。動画では男性がさまざまな出張先で女性と食事をする内容で、とくに女性が放つ「コックゥ〜ん!」というセリフが問題視されました。視聴者から強い反発を招いたためCMは公開中止となり、S社は公式サイトで謝罪文を掲載しました。
動画は男性からの視点でつくられており、各都市で出会った女性と食事をする内容でした。画面は女性のワンショットでつくられていて、女性と一緒に食事をしているように感じる動画になっていました。セリフが不適切、不倫を想起させる、女性蔑視、などの批判が続き、翌日に公開中止となったのです。
ただ、この炎上は、広告代理店の戦略やウェブ広告の特性が影響しているともいわれていました。
X(旧Twitter)広告企画で炎上
2018年には飲料メーカーK社のX(旧Twitter)企画が炎上しました。
K社が飲料「午後の紅茶」の販売促進のため、X(旧Twitter)で「#午後ティー女子」として、午後の紅茶を飲んでいそうな4人「モデル気取り自尊心高め女子」「ロリもどき自己愛沼女子」「仕切りたがり空回り女子」「ともだち依存系女子」のイラストを投稿。イラストを見てもらい、「まわりにいると思ったらRT、私だと思ったらFav」などと読み手の反応を求めました。これに対し、「午後の紅茶が好きな女性をバカにしている」「イラストを見て不快になり正直買いたくなくなりました」などと戸惑いや怒りの声が多く集まります。一部では擁護するコメントもあったものの、K社は5日後に投稿を削除。「お客さまにご不快な思いをおかけして大変申し訳ございませんでした。今回いただいたご意見を真摯に受け止め、今後の行動に生かして参ります」と謝罪しました。
炎上した広告ですが、ジェンダーの視点から批判殺到したものが大変多くなっています。たとえば、男女の役割、家族の有り様、などの決めつけが炎上につながっているのです。
ワンオペ育児?で炎上
2017年、ジェンダー問題で動画が炎上した有名なものがあります。
Y社の紙おむつのPR動画は、初めての育児を応援するため奮闘するママさんを描いたものでした。出産直後、赤ちゃんの誕生に喜んだものの、赤ちゃんはなかなか眠らない、夜泣きをして新米ママさんは眠れない、ずっと抱っこしているため自分の食事もシャワーを浴びる時間もない。散らかった部屋のなかで泣き声を聞きながら呆然と座り込む様子もあり、そんなママさんは「ほかのママが立派に見える」と心のなかでつぶやき、最後に「その時間が、いつか宝物になる」というエンドコピーで動画はおわります。
PR動画に父親の影は薄く、SNSでは「ワンオペ育児推奨だ」「育児を思い出して吐きそうになった」「育児自体は宝物ではなく、生傷だ」などと炎上し、「新米ママは大変だから応援していこう」などという意見も見られ、賛否両論があり注目されました。
サイネージ広告で炎上
ジェンダー問題ではなく、人の気持ちを逆なでするサイネージ広告にも多くの批判がありました。
2021年、朝の品川駅自由通路に設けられたすべての77インチのデジタルサイネージ画面にA社とN社のコラボ企業広告が載り、写真付きの社長投稿を見た人たちから炎上投稿が続きました。すべての画面に載ったのは「今日の仕事は、楽しみですか。」というコピー。仕事にモチベーションが上がらない、余計なお世話だ、というネガティブな意見でSNSは埋まっていきました。
ただ、批判したのは品川駅にいた通勤客ではなく、PRとして投稿された社長の投稿写真に反応した人たちと見られています。サイネージへの掲出時間が短いため、サイネージ動画広告が炎上したのではなく、社長投稿が炎上したといえるかもしれません。A社とN社は広告をわずか1日で中止し、謝罪に追い込まれました。
グッズで炎上
グッズなどの販売促進物でも炎上しています。
2022年、歌手Sさんのリミックスアルバムに付属するグッズが「ヘルプマーク」に酷似していると指摘され、炎上しました。関東地方のコンビニでヘルプマークをつけていた女性が「そのグッズ、どこで手に入れたのですか?」と声をかけられたのがきっかけです。その女性が問題提起としてX(旧Twitter)に投稿し、炎上しました。とくに問題となったのは、赤地に白い十字架とハートに近い形をしたリンゴのマークが描かれた「諸々券ケース」で、ヘルプマークと類似しているとの指摘があり、Sさんとアルバム販売会社に批判が集まったのです。
ヘルプマークは視覚的に認識されにくい内部障がいなどをもつ人のために、東京都が2012年から配布しているアイテムで、ネットからは「命や健康に関わるものを模倣するのは、あまりにも危険」との声が続出していました。
この件を受け、東京都は販売元のレコード会社に早急の対応を要請。問題を受け、販売元のY社は公式に謝罪し、デザインの変更も発表しました。ほかのグッズのデザインも見直され、発売が延期されることとなりました。
販促掲示物が炎上
2024年、出版大手K社が発売している月刊漫画誌Cが書店に設置した販促掲示物が炎上しました。掲示物は掲載漫画にちなんだもので、上部を引っ張ると漫画の女性キャラクターが失禁する姿になるつくりになっていました。
これを関係者がPRのために投稿。編集部や書店に対して「子どもが見るところに置いてあるのは不適切だ」「病気で失禁する人もいるのに嫌な気分」「漫画の表示物で吐き気がしたのは初めて」「完全にアウト」「社内教育はどうなっているのか」などの意見・抗議が集まりました。C編集部は公式X(旧Twitter)で〝プロモーションとして制作したもので、書店での掲示は適さない内容であるとのご指摘を鑑み、現在店頭より撤去していただくよう手配しております。〟と謝罪。
このように、広告のみならずグッズや販売促進物に関しても炎上が続いており、一般消費者に直接目に触れるものにはとくに配慮が必要になってきています。
記者会見で炎上
昨今では記者会見の炎上が続いています。
記者会見は組織の説明責任を果たす場として認識されていますが、ネット炎上がない時代にも多くの失敗記者会見がありました。いまでも思い出されるのは、証券会社社長の「社員は悪くありません」会見、食品会社社長の「私は寝ていないんだ」会見、県会議員の号泣会見、有名料亭のささやき女将会見、などどれもがとんでもない記者会見でした。
ただ、当時はインターネットが発達していなかったため、主にマスコミによって情報が流され、全国に知られたものでした。しかし、SNSが発達したいまの世の中では、失敗した記者会見は必ずといっていいほどネット炎上を引き起こし、デジタルタトゥー化しています。
とくに2023年は炎上した記者会見が続いた年でした。中古車販売B社による保険金不正請求の記者会見、N大によるアメリカンフットボール部員違法薬物事件の記者会見、J事務所による性加害問題の記者会見、T歌劇団によるパワハラ問題の記者会見が次々に大炎上し、世間を大変騒がしました。
大手中古車販売会社の社長会見が炎上
7月に中古車販売大手B社の社長会見に批判が殺到しました。B社の不正は、2021年の内部告発を週刊誌が取り上げ、さらにインフルエンサーにより拡散されており、マスメディアとネットの両方で大きな話題になっている最中に記者会見が行われました。
数々の保険金不正請求、顧客への不適切な対応、などが発覚したことについてB社の社長は、「天地神明に誓って知らなかった」「各工場長が不正を指示したんじゃないか」と経営陣の関与を完全否定。
社員がゴルフボールで車体を傷つけて保険金を水増し請求したことについては、「ゴルフを愛する人への冒涜ですよ」と他人事と捉えられる発言もあり、責任逃れと反省が感じられない記者会見に大変多くの批判・非難が集まりました。
再発防止策について明らかにせず、退任表明をしてしまうことにも多くの人が違和感をもちます。会見後も店舗前の街路樹伐採問題や副社長のパワハラ事案が次々に告発されるなど炎上は続きました。
最終的にこの会社が犯した不正は、8万件にのぼったとのことです。
大学記者会見が炎上
8月にはN大によるアメリカンフットボール部員違法薬物事件の記者会見があり、これにも多くの批判がありました。とくに違法薬物だと認識しながらも放置していた副学長の態度と釈明に悪印象をもつ人が多くいて、ネット炎上につながりました。
副学長は元検事ということもあり、「ブツ」「パケ」などの専門用語を会見で使いながら釈明。この違法薬物事件について、トップである理事長と学長が担当の副学長にまかせっきりで、監督義務を果たせなかったことも批判されました。
作家で著名人の理事長は会見中、記者からの質問に苛立ちを隠せず、副学長は謝罪会見であるにもかかわらず、最初の謝罪礼から会見修了時まで全体的に態度が大きく、会見を通して印象が悪いものでした。こういったさまざまな理由から「失敗謝罪会見」と呼ばれるようになったのです。
会見後、事件は個人の犯罪だったとして無期限活動停止処分だった部活動を解除したことも、批判と炎上の対象になりました。その後、新たな容疑者が続き、部は廃部。学長と副学長は辞任し、国からN大への私学助成金も不交付となり、大きな影響がありました。
大手芸能事務所の記者会見が炎上
この年、芸能界でも大きな炎上事案が発生しました。大手芸能事務所J社の元社長による性加害事件です。数十年にわたる少年たちへの性加害がイギリスで大きく報じられ、日本でもネットや週刊誌で話題となりました。
J社は9月に記者会見を行い、社長の辞任と被害者への謝罪を表明。元社長の姪である社長は「事務所としても、個人としても、性加害はあったと認識している。被害者の皆さんに心からお詫び申し上げる」と謝罪しましたが、具体的な被害者への救済案や再発防止策がなく、謝罪会見としては大変物足りないものとなり、なおかつ、新社長から「元社長の名が入った事務所名は変えない」とする発言もあり、多くの批判・非難が集まりました。
これを受けJ社は2回目の会見を行うことになり、被害者への救済の具体案、組織体制や会社名の変更、などを表明しています。
有名歌劇団の記者会見が炎上
11月にはT歌劇団の記者会見が注目を浴び、ずさんな外部報告書と劇団側の発言が炎上しました。9月に劇団員が転落死したことについて遺族は、長時間労働とパワハラが原因だったとの訴えでしたが、調査報告書により、劇団は長時間労働だけを認め、パワハラはなかったと結論付けたのです。これに遺族側から猛反発を招き、関係者からの告発もあって大きな話題となり、ネット上でも炎上を招きました。
記者からのさまざまな質問に対し、「報告書のとおり」と逃げる発言が多く、とくに新理事長の「(遺族に)パワハラの証拠を見せていただきたい」という旨の発言は、マスメディアでもネットでも驚きをもって報じられ、亡くなった劇団員や遺族に対する配慮がないのかと炎上。
このような事件と劇団の記者会見の混乱から公演は長期間中止となり、劇団のイメージが大きく損なわれたのです。ファンからの信頼も揺らぎました。
こうしたなか、翌年3月、2回目の会見を開き、劇団はパワハラがあったことを認め、親会社の会長ら経営陣が遺族に謝罪しました。
マスメディアが炎上
年々増え続けるネット炎上。報道する立場のマスメディアも例外ではありません。以前はネットメディアやソーシャルメディアを敵視していたマスメディアが積極的にSNSを使い、広報していくことは、いまや普通になりました。こうしたなか、公式アカウント以外でも、新聞・テレビ・ラジオ・雑誌などマスメディアに勤める社員やスタッフ個人も炎上しています。
新聞社報道部長が誹謗中傷し炎上
N社の報道部長がX(旧Twitter)での中傷投稿により炎上した事案が2015年に起こりました。この事案では、報道部長が匿名でX(旧Twitter)により弁護士や現職の閣僚、政党幹部に対して中傷を行っています。一般ユーザーに対しても誹謗中傷や脅迫的な投稿を繰り返していました。
報道部長は「酒に酔っていた、仕事のストレスがあった」と説明したうえで謝罪しましたが、最終的には無期限の懲戒休職処分を受け、その後退職。この事件は、報道機関の幹部が起こした事件、ということでの驚きとネット上での匿名性、その影響について大きな議論を呼び起こしました。
放送局員が誤爆で炎上
2021年、地方局Sの放送局員がX(旧Twitter)の公式アカウントで特定の政党を批判して炎上しました。局員は新聞の記事を引用しながら「××党って要らないよね」というハッシュタグをつけ、「地獄へ堕ちろ」などと厳しい言葉で糾弾。この局員は、実は個人のアカウントと間違え、権限をもっていた公式アカウントに投稿してしまったのですが、会社は批判対象の政党に正式謝罪するとともに、本人だけではなく、社長及び担当役員も減俸になるなどの処分を下しました。放送に携わる局員がこのような行為をしたことは、社会的な影響は大きかったようで、この局員は懲戒解雇になっています。
ニュース番組のウェブCMが炎上
2021年、東京キー局Aのゴールデン帯ニュース番組が制作したウェブCMが不適切だとしてネットで炎上し、番組側はそのCMを削除し、謝罪しました。
このCMはYouTubeなどで公開されたもので、「女性蔑視だ」「ジェンダー平等に取り組む人を揶揄している」などと批判が殺到。出演した若い女性が放つ「どっかの政治家が『ジェンダー平等』とかって スローガン的にかかげてる時点で 何それ 時代遅れって感じ」といったセリフがとくに問題視され、SNS上で大きな反発を招きました。ニュース番組を見ることに対し、ギャップや意外性を見いだしているような演出も「若者、とくに女性を馬鹿にしている」と物議を醸しました。CMは若い女性視聴者をターゲットにしていたようですが、逆に多くの人たちに不快感を与えてしまったのです。
A社は公開2日後に制作意図を説明し、ウェブCMを削除して謝罪する事態となりました。
放送局の不適切テロップが炎上
地方放送局が全国的にネット炎上した、おそらく初めての事案が2011年に発生しました。名古屋の放送局Tが朝の生放送番組で、その年に起こった東日本大震災被害を揶揄したテロップを放送してしまい大炎上。この事案は、SNSが全盛ではない時代の地方メディアが起こした炎上事案の象徴といわれています。
それは番組のプレゼント当選者発表のテロップに不適切な表現が表示されたことからはじまりました。局は当日のニュースや翌日の特別番組で謝罪しましたが、すでに番組放送中にYouTubeとX(旧Twitter)で拡散され、地方局の放送事故が瞬く間に全国に広がります。とくに東北地方の人たちの怒りは大きく、当時はSNSが発達していなかったものの、電話とメールで全国から1万8千件もの非難・批判が集まりました。ほかの全国メディアでも大きく取り上げられ、大炎上を引き起こしてしまったのです。それに加え、社長の記者会見まで発生から7日間もかかったことなどを含め、対応策が遅れたことも批判。この問題は、地方メディアの信頼性や倫理について大きな議論を呼び、放送内容のチェック体制の重要性があらためて認識されるきっかけとなりました。
番組は休止、その後終了が決定し、局は役員など関係者に重い処分を課しました。
なお、この放送局では、問題が起こった8月4日を「放送倫理を考える日」と制定し、現在でも毎年、全社員参加でヒヤリハット事例を報告しあう集会や研修を行っているなど、この問題を永遠に忘れないよう次世代に引き継ぐ行動を実行しており、それ以降、炎上していません。
迷惑行為で炎上
近年では迷惑行為の炎上も増えています。以前から社会問題化している一般人による常識外の行動です。迷惑行為はSNSが発達することによって炎上してしまい、全国化しています。SNSと迷惑行為が結びついて炎上してしまった発端は、2013年にある四国地方のコンビニエンスストア(以下コンビニ)の事案といわれています。アルバイト店員がアイスケースのなかで寝そべった姿をSNSに投稿して炎上した事件です。
「バカッター」初期の炎上
2013年、四国地方のコンビニL社でアイスケースにアルバイト店員が仰向け、うつ伏せになる姿がFacebookに投稿され、X(旧Twitter)で拡散されました。瞬く間に批判投稿が続き、店舗や店員の情報も特定されていきます。店舗やL社本社にも「食品ケースに人が入るなんて不衛生」「Lに行くのはやめよう」などと批判・非難の電話やメールが続き、L社は契約を解除し、結局この店舗は廃業となりました。
同じころ、ステーキチェーンB社でも、アルバイト店員による土足のまま冷蔵庫に入る画像が投稿され、炎上しています。この店舗も閉店に追い込まれ、B社は損害賠償請求しました。また、ある個人経営の蕎麦店でも、アルバイト店員が大型食洗機に体を入れたり、茶碗を胸に押し当てたりする画像を投稿し、炎上。これにより、夫婦が地道に経営していた蕎麦店は破産し、閉店となりました。
こういった「バカッター」事例は2013年ごろに、ピザ店、コンビニ、回転寿司店、ファミリーレストラン、などアルバイト店員を雇う多くの店舗で生まれてしまいましたが、企業や店側の教育効果があってか、数年間は発生数が減りました。
しかし、SNSの発展や瞬時の大容量受送信が可能になった2019年ごろ、再び「バカッター」が多くなります。今度は画像ではなく、動画を投稿することが普通になったのです。このころSNSではショート動画が流行し、1日で消滅するコンテンツもでき、告発系インフルエンサーも影響力を増していました。
「バカッター」不適切動画を投稿
2019年、関西地方にあるK寿司のアルバイト店員が、さばいた魚をゴミ箱に投げ捨て、一度捨てた魚を拾い上げてまな板に置く動画を投稿し、炎上しました。投稿者はふざけて投稿したとのことで、3時間後には削除していますが、次々に拡散されていきます。この騒動で投稿者たちの個人情報が特定され、K寿司は株価に影響がありました。K寿司は直ちに投稿者たちを解雇し、損害賠償請求をしました。
回転寿司店で醤油ボトルや湯呑みをなめる動画で大炎上
2023年には、アルバイトたちではなく、客の迷惑行為が炎上し、ネット上はもちろん、ほとんどのマスメディアも取り上げ、社会問題となりました。
東海地方にある回転寿司チェーンSで、醤油ボトルや湯呑みをなめたり、回転寿司レーンに流れる寿司に唾液をつけたりするなどの迷惑行為が公開され、大炎上しました。
男性客がふざけて投稿したもので、YouTube、X(旧Twitter)、Instagram、TikTokなど主要なSNSで瞬時に拡散され、多くの人がその様子を目にします。動画は国内のみならず、多くの海外メディアも報じました。
インフルエンサーによって男性客が通っていた高校が明らかにされると、高校にも大変多くの苦情や抗議電話がありました。
回転寿司チェーンSは事件発生後すぐに公式声明を発表し、刑事・民事両面で迷惑行為を行った客に対して厳正な対処を行うことを表明。この行為による株価の下降で一時約170億円の損失になったと報じられています。最終的にSは男性客に対し約6千7百万円の損害賠償を求めましたが、半年後に調停が成立したとのことです。
この大炎上事件の前後には、H寿司やK寿司でも客による迷惑動画が炎上しました。K寿司の客については、一連の迷惑動画による初の逮捕者となります。また、Sの九州地方の店舗では、レーンで回っている寿司にアルコールスプレーを噴射する迷惑動画が拡散され、再度大きな騒動となりました。
2024年にあった炎上
この節では、ここまでご紹介できなかった昨今の炎上事案を挙げていきましょう。2024年は「はじめに」で述べたように、パリオリンピックでの選手や判定などへの炎上が特出した印象で、JOC日本オリンピック委員会が異例の注意喚起の声明を発表したほどでした。
パリオリンピックが炎上
バスケットボール日本戦の審判の日本選手へのファウル判定をめぐり、審判のアカウントに「下手くそ」「審判を辞めろ」などと個人攻撃をする投稿が続出しました。
また、陸上の混合競歩リレーに出場する日本選手が個人種目を辞退すると、「身勝手だ」などと批判する多くの投稿があり、これを受け、本人は「たくさんの方からの厳しい言葉に傷つきました。このようなことが少しでも減ってほしい」と投稿。
柔道の金メダリストには、決勝で相手が反則負けだったことに対し、「立っているだけで勝った」などと批判投稿が書き込まれました。この選手は「他人が悲しくなるような言葉の矢をわざわざ放たなくてもいいのではないか」と自分の意見を投稿しています。
柔道ではほかにもあり、日本人選手が絞め技で負けると「危険な行為だ」「誤審だ」といった誹謗中傷と思われる書き込みが選手と審判の個人アカウントに投稿されました。敗れた日本人選手が「お互い必死で戦った結果だ。選手や審判への誹謗中傷は控えてください」と相手選手との2ショット写真とともに投稿したことで、炎上はおさまったようです。
東京オリンピックで問題になった選手たちへの誹謗中傷。パリではより多くの攻撃的な投稿がされました。SNSが発達することによって批判・非難という炎上が世界規模で起きていることがわかる事例でした。
男性差別だと批判殺到
国内に目を向けると、2024年も企業や商品への炎上が続いています。
大手衣料販売SのB店で子ども向け商品のデザインが男性差別だとして批判を集めました。商品はある有名デザイナーとコラボしたもので、「パパは全然面倒見てくれない」「パパはいつも帰り遅い」「ママがいい」などと印刷されたものがありました。これらをインフルエンサーが拡散。そのデザイナーは過去にも批判されたデザインを発表しており、そのことからも炎上しました。
この炎上を受け、B店は「不快な思いをさせてしまう表現があった」と謝罪。コラボ商品の販売を中止しました。
女性蔑視はダメだが男性ならいいのではないか、といった認識が企画側にあったと見られ、もちろん、ジェンダー問題についてはどちらの性も蔑視してはいけない認識をもたなくてはいけません。過去に問題があったデザイナーを起用する時点で気づくべきでした。
知事選ポスターが女性蔑視で炎上
これもジェンダー問題です。九州地方の知事選のポスターが女性蔑視で炎上しました。
そのポスターは「知事って、誰でもいい? ・・・わけない!!」というキャッチコピーにネクタイをした犬を含めた4名の男性の画像があり、男性だけが描かれていることから、女性蔑視だとして炎上。「女性はリーダーになれないのか」「女性はダメな政治家にすらなれない」との指摘が続きました。
ポスターを企画した選挙管理委員会は、企画案では10名の候補があり、そこに女性も入っていたこと、男性だけになったのは意図的ではないことを説明しました。
ポスターや電車の中吊り広告などは、一般に目に触れることを意識し、注目を浴びているジェンダー問題には気をつけないといけません。とくにネット上で見られることを意識しないといけないでしょう。
* * *
第1章はここまで!
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企業も個人も無関係ではいられない「SNS炎上」に備えるための完全ガイド
炎上とは、ネット上で多くの批判や誹謗中傷が共有・拡散され、収拾がつかなくなる状態をいいます。情報が瞬時に拡散されるSNSの特性上、炎上は予想を超える速さで広がり、個人や企業に深刻な影響を及ぼすことがあります。不用意な投稿により、結果的に個人情報が晒されたうえ、勤務している企業が特定されると、個人ばかりでなく、企業も攻撃されてしまいます。
ある調査によれば、今や一般人による炎上数が著名人を上回っています。一般人の不適切な投稿をインフルエンサーが取り上げ、拡散されることが非常に多くなっていて、「私は有名人ではないから炎上しない」といえない時代になりました。たった一言、たった1枚の投稿が、思わぬトラブルの引き金となるリスクが誰にでもあります。炎上はより身近になっていて、企業も個人も無視できない時代に入ってきたのです。
本書は、炎上などのネットリスクに対応できていない企業の広報担当者やSNS運用者を中心に、炎上対策や炎上時に何をすべきか理解していない、すべての方々のための情報が詰まっています。炎上事例をはじめ、防止策や危機対策、SNS別の傾向と対策など、SNSをはじめとするネットリスク全般について、元テレビ局員でSNS炎上研究家である筆者がやさしく解説しています。
SNSが発達し「国民総発信時代」になったことにより、炎上自体をゼロにすることはできないでしょう。この本によって少しでも炎上を減らし企業や個人への影響を少なくしていきたいと、筆者は本気で考えています。
炎上が頻発する時代を安全に安心してSNSを使うための知識を、この1冊で身につけましょう!
【目次】
第1章 現代は炎上だらけの時代
第2章 炎上って何?
第3章 炎上したらどうする?
第4章 炎上しない、させない
第5章 SNS別 傾向と対策
■著者プロフィール
加賀敬章
SNS炎上研究家
モットーは「組織にも人にもリスクマネジメントを!」
1958年、名古屋市生まれ。大学卒業後、テレビ局で営業、報道記者、企画開発、総務部長、デジタル推進室長、コンプライアンス推進局長を歴任。その後、関連会社役員に転じ、退任。この間、コンプライアンス総責任者・責任者を長年務めた経歴をもつ。勤めていたテレビ局での炎上経験をきっかけに、どのようにしたら事前に炎上リスクを減らせるのか、影響を少なくできるのかを真剣に考えるようになり、現在では、SNS時代に対応したコンプライアンス、リスクマネジメントを知ってもらえるよう、SNS炎上研究家・研修講師として尽力している。研修には、約200回の登壇で約6,000名が受講し、非常にわかりやすくタメになるとして好評を博している。
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