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『AI導入に悩む管理職が読む本 「守りのコスト」を削りAI投資の原資をつくるIT構造改革』第1章・無料全文公開

2026年6月24日発売の書籍『AI導入に悩む管理職が読む本 「守りのコスト」を削りAI投資の原資をつくるIT構造改革』から、第1章「自社のIT支出を「攻め」と「守り」で見える化する」を全文公開!

1.1 「そもそも何にいくら使っているか」を見える化する

■ 見える化の目的

AI導入を成功させたいのであれば、まずは現状把握が必須です。「いくら使っているか?」が把握できていないまま議論しても、本質的な意思決定にはつながりません。しかし多くの企業では、次のような状況が普通に起きています。
 
● IT支出が情報システムや経理、総務など、各現場部門に点在している
● SaaS契約が各部の判断でばらばらに進む
● 保守契約やサーバ契約の「解約忘れ」が頻繁にある
● 似たような機能のツールが複数契約されている
● 月額契約の金額が積み重なり、誰も全体像を把握していない
 
つまり、IT支出は「ブラックボックス化」しやすい構造をもっているのです。
単に支出を一覧にまとめることが目的ではありません。見える化の最大の目的は、「攻め」に回すための原資をどこから捻出するかを判断できる状態をつくることにあります。

■ 見える化の方法(3ステップ)

《ステップ1:支出項目の棚卸し》
まずはIT支出をすべて洗い出します。
棚卸しする対象には、次のようなものがあります。
 
● システム保守費
● 追加開発費
● 運用委託費
● サーバ費(オンプレ/クラウド)
● ライセンス費(SaaS含む)
● ネットワーク費用
● ハードウェア購入費
● 外部専門家・コンサル費
● ベンダーサポート契約
● データセンター費用
● パソコン/モバイル端末管理費
 
このように挙げると「思っていたより多い」と驚くケースは非常に多いです。
棚卸しは完璧である必要はありません。まずは粗い粒度で構わないので、どこに・どれくらい・なんの名目でお金が出ているかを把握しましょう。
 
《ステップ2:一元管理表をつくる》
棚卸しがおわったら、次の項目を一覧にまとめます。
● システム名称
● 費用区分(保守/開発/ライセンス/運用/クラウド/ハード)
● 金額(年間)
● 契約方式(年契約/月契約)
● 契約先ベンダー
● 担当部署
● 利用部門
● 利用人数
● 契約開始・終了日
● 契約更新タイミング
● 目的(業務維持/効率化/売り上げの貢献/DX基盤など)
● 効果(高・中・低)
 
一覧表に整理することで、不要・重複・効果の低い支出が一気に可視化されます。
 
《ステップ3:経営向けの「俯瞰レポート」にまとめる》
詳細な一覧表をつくったあとは、「経営向けサマリ」を必ず作成します。
 
● 攻め:守りの支出比率
● ベンダー別の支出比率
● システム寿命(老朽化)
● SaaS重複
● 効果の低い支出
● 解約可能なサービス
● 今後3年間の投資必要額を予測

■ 見える化の効果

見える化を行った企業は、次のような成果を得られます。
 
● 不要支出の削減(5〜20%程度)
● ベンダー依存の解消
● 投資判断のスピード向上
● 攻めの予算の創出
● 経営会議での議論が変わる
 
最も大きい効果は、経営が投資の全体像をA4資料1枚で理解できることです。

 1.2 IT支出を「攻め」と「守り」で分類する

見える化した支出を整理したあと、次に必要なのが攻めと守りの分類です。 

■「守り」とは何か

企業活動を止めないために必要な支出のことです。
具体的には、更新、保守、維持管理、既存業務の効率化などがあります。
 
● 既存システム保守
● 運用委託
● 契約更新
● データバックアップ
● セキュリティ対策
● 老朽化対応
● ネットワーク維持
● ルーチン作業の効率化(RPA含む)
 
攻めのAI導入と比べると派手さはありませんが、1つでも止まると企業活動に即影響する重要領域です。

■「攻め」とは何か

将来の競争力や売り上げ創出のための投資のことです。
新しい機能の提供、顧客価値やサービス向上につながる領域です。
 
データ分析基盤
生成AI活用による新サービス開発
AIチャットボットによる顧客接点の強化
プロダクト開発
マーケティング自動化
新規ビジネスモデル創出
顧客体験の向上
データ活用による高付加価値化
 
「投資対効果」が求められ、成功すれば競争優位を生む領域です。

■ グレーゾーンの例

ここが皆さんが最も困るポイントになります。
次のような支出の場合、どちらに分類するか判断が難しいです。

■ 分類の「正しい考え方」

結論からいうと、分類とは「経営の意思」です。
同じ投資でも、企業によって攻めにも守りにもなりえます。分類に「絶対の正解」はありません。
重要なのは、以下のような経営の意思決定に耐えうる軸をもつことです。
 
● その投資目的は何か?
● 3年後の事業計画と整合しているか?
● 効果は測定できるか?
● 守りに分類することで予算が奪われていないか?

 1.3 なぜ多くの組織が〝「守り」偏重〟になるのか

■「守り」が強すぎる組織はなぜ生まれるのか

多くの企業がIT支出を見える化すると、ほぼ例外なく「攻め3:守り7」あるいは「攻め2:守り8」という結果が出ます。ですが、これは単に保守費用が高いからではありません。もっと根本的に、「組織そのものの仕組み」が守りへ偏るように設計されているのです。
経営層も現場も、「AIやDXで変革を進めたい」と言います。しかし実際の予算配分になると、「現行システムの維持」「障害対応」「法対応」などが優先され、結果的に攻めの余地が削られるのです。
なぜそのような構造が生まれてしまうのでしょうか。
 
《理由1:ITは「止めてはいけないインフラ」という前提》
第一の理由は、「ITは止まってはいけない」という文化です。
システム障害が発生すれば、業務が止まり、クレームが発生し、経営リスクに直結します。そのため、IT部門の最優先ミッションは「安定稼働の確保」となります。
攻めの企画を進めたいと思っても、トラブル対応や老朽システムの更新に追われ、時間も予算も残らないのが現状です。
その結果、IT部門は守りの仕事で手一杯になり、経営層からも「変革より安定」を期待されるようになります。
これは善意と責任感ゆえの守り偏重構造なのです。

《理由2:「削減よりも安全」を重んじる意思決定構造》
次に、経営判断のリスク回避志向が守り偏重を助長する、という点です。
新しいAIツールや分析基盤に投資するよりも、既存システムを維持するほうが説明責任を果たしやすいのです。「攻めの投資で成果が出なかったら責任を問われる」一方で、守りを優先して安定を保てば評価は下がらない。このような構造では、自然と守りが増えます。
経営の世界では、失敗のリスクより成功の不確実性を恐れる文化が強い傾向にあります。
だからこそ、「挑戦するより無難な選択」が繰り返されるのです。この心理的要因が攻めの芽を摘んでしまっています。
 
《理由3:ITベンダーとの関係構造》
さらに見逃せないのが、ベンダー依存型の発注構造です。
多くの企業では、システムの設計から運用までを外部ベンダーに委託しています。この関係が長期化すると、「ベンダーの提案=会社の方針」になりがちになります。
しかし、ベンダー側にとっても守りの案件(保守・更新)は安定的な収益源であり、積極的に攻めの投資を提案するインセンティブが弱いのです。結果として、提案内容も「既存システムの延命」「保守契約の拡張」が中心になり、攻めのITが後回しになってしまいます。ここでも誰も悪くないのです。
ベンダーは顧客の安定稼働を第一に考え、顧客はリスクを避けたい。この「善意の循環」が、結果的に企業の成長を止める構造をつくってしまっているのです。
 
《理由4:IT予算の「固定費化」》
もうひとつの大きな要因がIT予算の固定費化です。
保守契約、クラウド利用料、ライセンス更新料などの費用は、毎年ほぼ自動的に計上されます。
よって、経営会議で議論になるのは「新規投資」だけであり、既存コストは「見直されない聖域」として扱われるのです。
そのため、守りの費用が年々積み上がり、攻めの原資を圧迫していきます。
特に注意が必要なのは、「昔の要件のまま残るシステム」です。利用実態が減っているにもかかわらず、「契約更新の慣習」で継続しているケースが多いです。こうした「ムダな予算」を棚卸ししない限り、攻めの投資は生まれません。
 
《理由5:「IT=コストセンター」という誤解》
最後に、企業文化の根深い誤解として、「ITはコストであり、収益を生まない部門」という認識があります。この発想が残る限り、IT投資は常に「削減対象」として議論されます。
しかし実際には、ITはすでに収益を生み出す事業インフラへと進化しているのです。
データを活用すれば、顧客体験を向上させ、営業効率を上げ、利益率を改善できます。
つまり、ITは「支出」ではなく、「投資対象」です。この発想転換ができないままでは、いくらAIを導入しても守り型運用から脱却できません。
攻めのITを増やす第一歩は、ITを「費用」ではなく、「戦略資産」として捉え直すことにあります。

1.4 「守り」が増え、「攻め」が減る会社の宿命

ほとんどの企業で守りが膨張し、攻めが縮小するのは、誰かの怠慢やミスではなく、構造がそうさせているからです。 

■ 担当者の「責任回避構造」

担当者にとっては攻めよりも守りのほうがリスクは低く、安全なのです。
 
● 守りはやらないと怒られる
● 攻めはやっても評価されにくい
● 攻めで失敗すると責任を問われる
 
そのため、行動心理として守り重視が合理的になってしまうのです。

■ 評価制度が「維持管理」を高く評価する

ほとんどの企業で、IT部門の評価項目は以下のとおりです。
 
● システムが止まらない
● トラブルがない
● コストを抑える
つまり、攻めの投資によって新しい価値を生んでも評価されません。AI投資が進まないのは人の問題ではなく、制度の問題なのです。

■ ベンダー依存構造

ベンダーは悪意があるわけではありません。ビジネスモデル上、次のような構造になりがちです。
 
● 既存システム保守で安定的に利益が出る
● 攻めの投資は提案しても見送られることが多い
● 顧客にとって攻めの投資は不確実
 
そのため、提案は守り中心になります。
結果として企業は守りばかりにお金が流れる仕組みになっています。

■ 老朽化の負担増

保守費は毎年少しずつ増加するものです。老朽化したシステムは、保守性が低下するため追加コストが増加します。「更新しないと危険です」というベンダーの提案も増えます。
その結果、守りのための支出が雪だるま式に増える、といった構造ができあがるのです。 

■「守り」を責めるのではなく、「守り」の中から「攻め」を生み出す

ここまで述べてきたとおり、守り偏重には構造的・心理的・文化的な背景があります。
だからこそ、守りを削るのではなく、効率化し、「攻めの原資を生み出す」アプローチが現実的です。
運用業務の自動化、クラウドリソースの最適化、ライセンス統合などにより、守りのコストを20%削減できれば、その分をAI投資に回せます。つまり、守りの合理化が攻めの出発点になるのです。

1.5 「攻め」と「守り」の定義を経営視点で再整理する

ここまでの議論を踏まえると、攻めと守りの定義は次のように整理できます。 

■「守り」の投資

《1:目的》
事業の安定稼働を維持・継続し、リスクを最小化しつつ、コストを適正化するための支出である。
 
《2:内容》
● 止めてはいけない既存システムの維持・保守
● 法令対応
● セキュリティ対応
● インフラ更新、既存基盤の維持管理
● 社内業務の効率化・自動化
● 運用業務の標準化
● コスト最適化のための取り組み
 
《3:経営への効果》
● コスト削減(IT支出の可視化・削減)
● リスク低減(障害・セキュリティ事故の未然防止)
● 業務の安定性向上(止まらない基幹システムの実現)
 
守りを疎かにすると、攻めどころか事業継続にすら影響する。

■「攻め」の投資

《1:目的》
新たな収益機会の創出、競争優位の確立、事業モデルの進化
 
《2:内容》
● 顧客価値の向上
● データ活用
● 自動化の高度化
● AIによる新サービス創出
● 差別化された体験設計
● マーケティング高度化
 
《3:経営への効果》
● 売り上げ成長(新規顧客獲得、既存顧客拡大)
● サービス・事業の差別化
● 経営スピードの向上(意思決定・改善サイクルが加速)

■ 経営層に説明する際のポイント

● 攻めは成長をつくるIT、守りは既存事業を安定的に回すIT
● 攻め=売り上げを伸ばす投資、守り=コストを下げる投資
● 攻めで未来を創る、守りでリスクを減らす
 
IT費用は攻め=成長・変革、守り=維持・安定と二分して整理すると、意思決定の軸が明確になり、投資判断が圧倒的にしやすくなります。
成功すれば企業成長の原動力となります。

■「守り」を整えて「攻め」を可能にするという関係

攻めと守りは対立概念ではありません。正しくは「段階的に相互依存する関係」にあります。
 
● 守りを整えずに攻めをやると失敗率が高い
● 守りを整えることで、攻めの投資が加速する
● 守りの効率化は攻めの原資を生む
 
攻めに投資するためには守りの最適化が絶対条件です。
 
まず行うべきことは、次の3点に集約されます。
 
《1:現状を「見える化」して支出の全体像を把握する》
● 不要・重複・効果の低い支出を洗い出す
● 経営が一目で理解できるようにまとめる
 
《2:支出を「攻め」「守り」に分類し、投資判断の軸をつくる》
● 経営の意思決定に直結する分類方法
● グレーゾーンの判断基準もセットで提示する
 
《3:「守り」偏重を生む構造を理解し、改革の対象を明確にする》
● 責任構造・評価制度・ベンダー構造・技術負債
●「誰も悪くないが、放置すると全員が困る」という問題の本質
 
これらを実行することで、第2章で扱う「攻め5:守り5」に変える戦略に進む準備が整います。

1.6 IT支出の見える化へのステップ

ITを守りのコストから攻めの資産へ転換する必要がある一方で、多くの企業では、ITは長らく「経費」として扱われてきました。安定稼働、障害防止、保守更新など、たしかに必要です。
その結果、IT投資が守り一色になり、企業の未来をつくる余力が生まれにくくなります。本節で伝えたい結論は、とてもシンプルです。
 
IT支出を正しく見える化し、「守り」の最適化から「攻め」への再投資へ循環をつくることこそ、「攻め5:守り5」への最短ルートです。
 
攻めと守りは、どちらか一方だけの話ではない。
守りが過剰になれば企業は硬直する。
攻めが強すぎれば現場は疲弊する。
だからこそ、守りで生まれた効率を次の攻めの原資に変え続けるサイクルが必要なのです。このとき、ITは「経費」ではなく、「経営資産」へと姿を変えます。
以下では、このサイクルをつくるための実務ステップを、現場がすぐ実践できるかたちで整理します。
 
《ステップ1:「見える化」から「見直し」へ進む》
まずやるべきは「見える化」です。
ベンダー別・システム別・目的別に支出を整理していくと、驚くほど多くの「惰性コスト」が見つかります。
よくある例として以下があります。
 
● 利用率が10%以下の社内ポータル
● 誰も閲覧していない文書管理システム
● 更新目的ではなく「止め方がわからない」契約
 
こうした支出は、毎年数千万円規模でムダになっていることがあります。ここで大切なのは、「コスト削減のために見直す」ではなく、「目的を失った支出を止める」という姿勢です。
利用実態の低いシステムを廃止・統合すれば、守りの支出を削減できるケースは多いです。
その浮いた原資を攻めに回す。これが改革の第一歩となります。
 
《ステップ2:「攻め」の仮説を明確化する》
攻めのIT投資を成功させるうえで欠かせないのが、攻めの仮説の設定です。
「AIを導入したい」という表現では、経営層は動きません。投資テーマを「ビジネス仮説」に落とし込むことで、全社の合意形成が一気に進むのです。
以下のように、「何がどれくらい変わるか」を具体化するのです。
 
● 営業部門:顧客データ分析AIで、案件成約率を10%引き上げる
● 製造部門:AI画像検査で、不良品率を20%改善する
● 管理部門:RPA+生成AIで、月200時間の事務作業を自動化する
 
AI導入を「技術の検討」ではなく、「経営課題の解決策」として扱うことが重要です。
 
《ステップ3:「攻め」と「守り」を連動させる予算設計に変える》
今日、多くの企業の課題は、攻めの予算と守りの予算が完全に分断されていることにあります。これでは攻めへ資金を移すことはできません。
必要なのは、守りの効率化 → 攻めへの再投資を制度化した仕組みです。
保守費を1,000万円削減、そのうち500万円を「AI投資専用枠」に自動的に移す、というルールをつくるだけで、現場の意識が大きく変わります。
守りを改善すれば、自分たちの部門の攻め予算が増える。この仕組みは現場の協力を得るための最強のモチベーションになります。
経営層はこのような再配分を年次ではなく、四半期単位で見直すべきです。AI・デジタル分野は変化が速く、年次の判断ではチャンスを逃しやすいからです。
 
《ステップ4:「数字で語れる成果」を積み上げる》
攻めの投資は、成果を見える化できた企業ほど継続し、社内文化として定着していきます。
経営層が動くのは以下のような数字がついてくる案件です。
 
● AI需要予測で在庫ロスを年間3,000万円削減
● チャットボット導入で月600時間の問い合わせ対応を削減
● RPA×生成AIで経理処理スピードを1.8倍に向上
 
こうした成果を経営会議の資料や社内報で共有していくことで、攻めのITが「成功する活動」であることが社内に浸透します。
成功事例が増えるほど、次の投資がとおりやすくなります。攻めの取り組みは一度きりではなく、成果を積み重ねることが重要です。
 
《ステップ5:経営が「攻めを守る」仕組みをつくる》
最終的に「攻め5:守り5」を成立させるカギは、経営トップのコミットメントです。
現場がどれだけがんばっても、「AIはまだ早い」「今年は守りを優先」という判断が下されれば、攻めの芽はすぐにつぶれます。
だからこそCEO・CFO・CIOが一体となり、次の原則を明文化しておく必要があります。
 
● IT予算の50%を攻めの成長投資に充てる
● AI・データ施策を経営KPIに組み込む
● 守りの最適化によって生まれた原資は、原則として攻めに再投資する
 
この3点が制度化されると、組織の文化は守り中心から攻めで未来をつくる組織へと変わりはじめます。

■「守り」で安定をつくり、「攻め」で未来をつくる企業へ

「攻め5:守り5」というバランスは、数字の遊びではありません。企業がどの未来を選ぶかという、経営の意思表示です。
守りの最適化で足元の安定を固め、攻めの投資で未来の売り上げと利益の種をまき続けます。
この両輪が噛み合った企業だけが、AI時代の激しい競争の中で持続的な成長を実現できるのです。
何よりも、攻めの投資は「短期でおわる施策」ではなく、「育てる資産」だということです。
AI導入の成果はすぐに出るものもありますが、本質的な価値は5年、10年単位で積み上がっていきます。だからこそ、攻めの投資を続けられる「予算構造」と「意思決定の文化」を整えることが企業の未来を決定づけるのです。
 
第2章では、守り偏重から脱却し、攻めのAI投資を実現する方法に踏み込みます。

テンプレート集/チェックリスト 

■ テンプレ① IT支出見える化テンプレート

《基本情報》
● システム名
● ID(管理番号)
● 利用部門
● 利用人数
● 担当部署(情シス・経理・営業など)
 
《費用情報》
● 年間費用(合計)
● 保守費
● 開発・追加改修費
● 運用委託費
● クラウド費
● ライセンス費
● ネットワーク費
● 契約形態(年契約・月契約)
● 契約開始日
● 契約更新日・自動更新
 
《目的分類》
● 目的(業務維持・効率化・売り上げ向上・データ活用・新規事業)
● 守り攻め(暫定分類)
● 効果(高・中・低)
 
《リスク情報》
● 老朽化レベル(高・中・低)
● ブラックボックス度(高・中・低)
● 廃止可能性(有・無)
● 代替可能性(高・中・低)
 
《メモ(改善案、統合案、契約見直し余地など)》

■ テンプレ②「攻め」「守り」分類シート

《分類1:目的》
[ ]業務の安定稼働が目的 → 守り
[ ]コスト削減が主目的 → 守り
[ ]利便性向上だけ → 守り
 
[ ]売り上げ向上が目的 → 攻め
[ ]顧客価値向上 → 攻め
[ ]経営戦略と明確に紐づく → 攻め
 
《分類2:効果検証》
[ ]効果が測定できる → 攻め
[ ]効果が測定しにくい → 守り
 
《分類3:時間軸》
[ ]即効性がある → 守り
[ ]中長期で効く → 攻め
 
《分類4:事業との関係》
[ ]業務維持に不可欠 → 守り
[ ]競争優位に直結 → 攻め
 
《最終分類》
● 守り:(   )%
● 攻め:(   )%

【チェックリスト】IT支出の見える化・最適化チェックリスト

 《見える化チェック》
● すべてのIT支出が一覧化されている
● SaaS/クラウド契約がもれなく把握されている
● 解約可能な契約が特定できている
● 経営向けのサマリ資料が存在する
 
《分類チェック》
● 全支出が攻め/守りに分類されている
● グレーゾーンの判断軸が統一されている
● ネットワーク・セキュリティ・保守が正しく守りに入っている
● AI投資が本当に攻めとして扱われているか確認した
 
《最適化チェック》
● 効果の低い支出が特定できている
● 重複契約が洗い出されている
● ベンダー依存が強い領域が可視化されている
● 3年後の更新時期が把握できている
● 守りの最適化=攻めの原資という考えが浸透している

*   *   *
第1章はここまで!
続きを読みたい方は、各電子ストアにて2026年6月24日より随時発売になります。ぜひお買い求めください。
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■AI導入の成否は「AI知識の多さ」ではなく、「ITコスト構造」で決まる

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本書では、IT業界一筋42年の著者が、IT支出を「攻め」と「守り」に分解・可視化し、予算配分を「攻め5:守り5」へ転換するための実践手法を、豊富な事例とともに解説しています。
保守・運用コストの10〜20%削減を成功させてきた著者だからこそ書ける、新システム発注で失敗しない判断軸、追加開発で損をしない見積交渉術、ブラックボックス化した保守費の見直し方など、現場ですぐ使えるノウハウを体系的に整理しました。

これは単なるIT本でも、AI技術解説書でもありません。
「ITを守りのコストで終わらせるのか、それとも未来をつくる攻めの投資へ変えるのか」――その意思決定を担う管理職のための“経営実践書”です。

【目次】

第1章 自社のIT支出を「攻め」と「守り」で見える化する
第2章 なぜ「攻め:守り=5:5」が必要なのか
第3章 新システム発注で失敗しない3つの掟
第4章 既存ベンダーに追加開発するときのポイント
第5章 「保守費交渉」を制する者がITコストを制する
第6章 削減した原資を、AI・DXにどう振り向けるか
第7章 IT構造改革の実践事例

■著者プロフィール

三宅幸次郎
IT投資構造改革パートナー
IT業界一筋42年。株式会社野村総合研究所に文系出身で入社し、IT知識がほとんどない状態からキャリアをスタート。顧客の業界構造や業務課題を徹底的に学び、「顧客に寄り添う」姿勢を貫くことで厚い信頼を獲得し、数多くのITプロジェクトを成功へ導く。
現在は独立し、企業・自治体・大学・医療機関などを対象に、IT投資最適化とベンダーマネジメント改革を支援。特に、ブラックボックス化したITコスト構造を可視化し、「削減すべき領域」と「投資すべき領域」を切り分ける実践支援に強みを持つ。保守・運用コストの10〜20%削減や、IT投資配分を「攻め3:守り7」から「攻め5:守り5」へ転換するなど、多数の成果創出に貢献。
「ITの正しさ」ではなく「経営にとっての最適解」を信条に、CIO・経営企画部門とともに、AI・DX時代を見据えたIT構造改革を推進している。

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