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【妄想インタビュー④】豊臣秀吉に聞く。「義務」と「ギブ」は、何が違うのか?

先日、私はこんな記事を書いた。

「義務」と「ギブ」は、一文字しか違わない。
でも、仕事をどちらでとらえるかで、
見え方はずいぶん変わる気がする。

やらされる感じのある「義務」。
誰かに渡すものとしての「ギブ」。

もちろん、
現実の仕事はきれいごとだけでは回らない。
忙しいし、面倒だし、なんで自分が
これを言わなきゃいけないんだ、
と思うこともある。

けれど、ただ「上が言っているので
お願いします」と伝えるだけなら、
その役割は伝書鳩で終わってしまう。

そうではなくて、
相手の手間を減らし、意図をほどき、
動きやすい形にして渡す。

そこに、
その仕事の価値があるのではないか。

もしこれを、
人の心をつかみ、人を動かし、
場を整え、次の一手を考え続けた
あの人が読んだら、何と言うだろう。

というわけで今回は、
豊臣秀吉さんに妄想インタビュー
してみたい。

「義務」は重いが、「ギブ」は
人を動かす

―秀吉さん、今日はありがとうございます。

秀吉
うむ。
おぬし、なかなか面白いことを書くのう。
「義務」と「ギブ」は一文字違いじゃが、
働く者の心持ちはずいぶん違う、と。

―そこに反応していただけましたか。

秀吉
そりゃそうじゃ。
人は、ただ命じられただけでは、
身体は動いても心がついてこんことがある。

だが、誰かのためになる。
次の者が動きやすくなる。
場が少し良くなる。

そう思えたとき、
人は同じ働きでも違う顔になる。

―まさに、そこなんです。
やること自体は同じでも、
「やらされている」と思うか、
「渡している」と思うかで、
気分が変わる。

秀吉
気分だけではないぞ。
成果も変わる。

義務として渡された仕事は、
角が立ったまま届く。
ギブとして整えられた仕事は、
受け取った者が動きやすい。

その違いは、次の一手の速さに出る。

伝えるだけなら、伝書鳩で
終わる

―この記事では、
 経営と現場のあいだにいる
 部署の話も書きました。
 上から来た依頼を、
 そのまま現場に流すだけなら、
 ただの伝書鳩になってしまう、と。

秀吉
ほう。
それはよい視点じゃ。

伝えるだけなら、誰でもできる。
だが、間に立つ者の値打ちは、
右から左へ流すことではない。

―では、何にあるのでしょう。

秀吉
まず、上の意図を読むこと。
そして、下の忙しさや事情も知ること。
そのうえで、両方が少しでも
噛み合う形にして渡すことじゃ。

上は「急げ」と言う。
現場は「今それどころではない」と思う。

そこで、「上が言っているから頼む」
とだけ言えば、そりゃ恨みも買おう。

じゃが、
なぜ必要か。
どこまでやればよいか。
何を省けるか。
どう渡せば手間が減るか。

そこまで考えて初めて、
間に立つ意味が生まれる。

―まさに、私が言いたかったことです。

秀吉
ようするに、こういうことじゃろう。

「間にいる者は、圧を流す役ではなく、
流れを整える役である」

―それです。
 まさに、それです。

人は、楽だから動くのでは
ない。納得できると動く

―現場に何かをお願いするとき、
「なんでこれをやらなきゃいけないの?」
という空気になることがあります。

秀吉
なるじゃろうな。
皆、暇ではないからのう。

―そうなんです。
 ただお願いするだけでは難しい。
 不満を減らしつつ、
 でも意図に合ったものを出して
 もらいたい。
 その間をどうつなぐかが
 悩ましいんです。

秀吉
人は、楽だからだけでは動かぬ。

もちろん、手間は少ないほうがよい。
だが、それ以上に納得できるかが大きい。

―納得、ですか。

秀吉
うむ。

なぜそれをやるのか。
誰のためなのか。
どこまでやれば十分なのか。
やった先に何があるのか。

それが見えぬままでは、
ただ負担が増えたように感じる。
だが、少しでも筋が通れば、
人は動ける。

―ただ依頼を投げるのではなく、
 意味の翻訳が要るわけですね。

秀吉
そうじゃ。
しかも、
その翻訳は美辞麗句であってはならぬ。

現場の者は、
きれいごとを見抜くからのう。

気配りは、やさしさ
というより技術である

―この記事では、メールの一言、
 資料の並び順、確認の仕方みたいな
 細かいことも「ギブ」だと書きました。

秀吉
うむ。
そこがよい。

多くの者は、
ギブというと大きな施しを思う。
じゃが実際には、
仕事を動かすのは小さな気配りじゃ。

―小さな気配り。

秀吉
返しやすい文面にする。
迷わぬ順で並べる。
判断に要る材料を先に渡す。
相手が「で、何をすればいいのだ」
とならぬように整える。

それは、情け深さというよりも、
もはや技術よ。

―やさしさではなく、技術。

秀吉
そうじゃ。
気が利く、というのは性格ではない。
相手がどこで詰まるかを
先回りして見る力じゃ。

それにの、
何でもかんでも相手に考えさせればよい、
というものでもない。

「この件、頼む」
「よしなにやってくれ」
それでは、一見任せておるようで、
ただ考える手間を押しつけておる
だけのこともある。

―ああ、それはあります。
 丸ぶりされると、
 結局どこから考えればいいのかで
 時間がかかります。

秀吉
うむ。
ゆえに、間に立つ者は一度、
自分のところで噛み砕かねばならぬ。

どこまでは済んでおるのか。
相手に頼みたいのは結局どこなのか。
何を決めれば先へ進むのか。

そこを整えたうえで、
「あとはこちらだけ頼みたい」
「ここまではこちらで詰めてある」
と渡すのじゃ。

それは親切だからやるのではない。
無駄な思案の時間を増やさぬためじゃ。

人の手を借りるときに大事なのは、
作業を減らすことだけではない。
迷う量を減らすことでもあるからのう。

―たしかに。
 やってもらう時間そのものより、
 何をどう考えればいいかで止まる
 時間のほうが、案外大きいですね。

秀吉
そのとおりよ。

兵を動かすにも、ただ「行け」では足りぬ。
道はどこか。
何を持つか。
どこまで進めばよいか。
そこが曖昧なら、
足より先に頭が止まる。

仕事も同じじゃ。
無駄に悩ませる時間は、
やさしさの問題ではない。
損失の問題でもある

「なんで私が言わなきゃ
いけないのか」という
不満について

―もうひとつ、実は現場だけではなく、
 間にいるこちら側のメンバーも
 不満を持つことがあります。
 「そもそも、なんで私たちが
 これを言わなきゃいけないのか」と。

秀吉
それも当然じゃな。

間にいる者は、
上からも下からも圧を受けやすい。
感謝されにくく、面倒は増えやすい。

―そうなんです。
 すごく報われにくい。

秀吉
じゃがの、
そこにおる者がおらねば、
組織は粗くなる。

命は届くが、意味が届かぬ。
報告は集まるが、意図とずれる。
現場は疲れ、上は「なぜ進まぬ」
と首をかしげる。

つまり、間にいる者は、
目立たぬが重要な働きをしておる。

―でも、本人たちがそこに
 意味を感じられないと、つらいです。

秀吉
ならば、言葉を与えてやることじゃ。

「我らは伝書鳩ではない」
「我らの仕事は、上意下達ではなく、
 意味を通すことだ」

そういう言葉が要る。

人は、自分の働きに名前がつくと、
少し踏ん張れる

―それは、すごくわかります。
 役割の意味が言語化されるだけで、
 苦しさの質が変わる気がします。

秀吉
うむ。
人は仕事そのものより、
意味のない仕事に疲れる
ことが多いからのう。

ギブは、見返りを求めない
ことではない

―「ギブ」という言葉を使うと、
 ともすると自己犠牲のように
 受け取られることもあります。

秀吉
それは違うのう。

よいギブは、相手のためだけではない。
巡り巡って、自分や組織を楽にする。

―といいますと?

秀吉
相手が動きやすくなれば、
戻りが減る。
確認の手間が減る。
余計な行き違いも減る。
信頼も積もる。

それは結局、自分を助ける。

ゆえにギブは、損な優しさではない。
長く見れば、利にかなっておる。

―なるほど。
 ギブは、単なる「いい人であること」
 ではないんですね。

秀吉
そうよ。
目先の面倒を惜しまず、
後の混乱を減らす知恵じゃ。

秀吉なら、
この記事にどんな一言を
添えるか

―最後に、この「義務とギブ」の記事に、
 秀吉さんが一言添えるとしたら、
 どんな言葉になりますか。

秀吉
そうじゃのう。

「仕事とは、
 言われたことを運ぶことではない。
 次の者が動ける形にして渡すことじゃ。」

―いいですね。

秀吉
もうひとつ言うなら、これでもよい。

「義務は背に乗る。ギブは手から渡る。」

―おお・・・。

秀吉
背に乗せれば重くなる。
手から渡せば、つながっていく。

おぬしの記事は、
そういう話じゃった。


編集後記

妄想インタビューを
してみて思ったのは、
「義務」と「ギブ」の違いは、
気分の問題だけでは終わらない
ということだった。

同じ仕事でも、
ただ流すのか。
整えて渡すのか。

それだけで、
相手の動きやすさも、
組織の空気も、
戻ってくる結果も変わる。

間に立つ仕事は、ときどき
損な役回りに見える。
感謝もされにくいし、面倒も多い。

けれど、
そこで意図をほどき、
手間を減らし、意味が通る形にして
渡す人がいるから、
仕事はただの指示伝達ではなくなる。

整えて渡す、というのは、
ただ親切にすることではない。
相手の迷う時間を減らし、
仕事が前に進む形にして
渡すということでもある。

伝えるだけなら、伝書鳩で終わる。
でも、整えて渡せば、
それはもう立派なギブだ。

そんなふうに自分の仕事を
少し言い換えてみるだけで、
明日の見え方は、
ほんの少し変わるのかもしれない。

最後までお読みいただき
ありがとうございます。

中間管理職として
毎日上からの指示と下からの不満に
挟まれているあなたにとって
何らかの気づきになれば
うれしいです。

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