漫画家アシスタント物語 第6章 〈6〉 総理を呼べ、俺が話す!
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《 画像上:1988年頃、リョウさんがSFタッチで描いた『竜童』の一部 》
< この6章〈6〉は、文庫本約15ページ分 >
その26
漫画家アシスタントとしてのキャリア14年のリョウさんは、この当時( 1988年9月 )「 竜童 」という漫画を制作していました。
しかし、それは‥‥ この事があって‥‥ 未完のまま20年近く眠る事になります‥‥
秋山プロを早退してから数日‥‥ 他のアシスタントが下宿を訪ねたり電話をしたりして捜していてもリョウさんは、ほとんど下宿に戻らず外を歩き回っていたので発見する事は出来ませんでした。
リョウさんは誰かに狙われていると思っていたからです‥‥
深夜、下宿に帰るとトイレのガラス戸が空いていたり、誰かが下宿を訪ねている気配があるので、その「 疑い 」を確信に変えてしまいます。
つまり‥‥ リョウさんを心配して捜しまわっていたスタッフや先生の行為が裏目に出てしまっていたわけです。
ところで「 誰かに狙われている 」の「 誰か 」とは誰なのでしょうか‥‥ この頃、勧誘に来ていた新興宗教の信者か‥‥ 右翼のテロリストか‥‥ クーデターを起こす青年将校か‥‥ それは、よく分からないのですが‥‥‥‥
恐怖心と緊迫感は日々、増幅されていたわけです‥‥。
つまり、リョウさんは、ゆっくり下宿で漫画を描いていられる状態ではなくなっていたのです‥‥
漫画制作の事を考えてはいられない‥‥ 自分がどうなるのか‥‥? 漫画への夢はどうなるのか‥‥?
‥‥当たり前だった「 日常 」考えられないまま‥‥ 龍馬とそれをめぐる「 陰謀」や日本の「 昭和維新クーデター 」といった政治的幻想と、時々ひょっこり顔を出すマンガ的世界の妄想などがメリーゴーラウンドの様に展開していたのです。
さて、前回、新目白通り沿い( 高田馬場駅近く )にある5階建てマンションの屋上でリョウさんが演説を始めた事を書きました。
この時に、リョウさんがどんな事を演説したかは、そのほとんどが「 遠い過去 」の彼方へ消え去っています。私が書けるのは、そのほんの断片に過ぎません‥‥
リョウさんは、もう完全に龍馬に成りきっています‥‥
「 田中~角栄ぇ~っ!」( 歴代の総理が入れ替わり登場 )
「 出て来んねぇ~っ! 」
「 中曽根を呼べ~っ! 」
「 ワシャ~ここじゃきぃっ! 」
「 戦コ~ちゃる~~っ! 」
高い所から、叫ぶように暴力的な言葉を絶叫すれば、どうなるか‥‥
私もそうですが、読者の皆様も、きっと人が集まって来て騒ぎになっていたのでは‥‥‥‥と、思われるかと思います。
近くの住民が警察に電話したり、「何事だ?」‥‥と、外へ出て来るだろうと‥‥
しかし‥‥
誰一人として外へ出て来る人はいなかったそうです。
屋外でケンカをしていたり、酔っ払いが叫んでいたりしても玄関からは外へ出ずに、警察へ電話‥‥ そっと、窓のカーテンの隙間から目だけギョロギョロさせている‥‥ それが世間( 高級住宅街 )というものの様です。
リョウさんが一人で叫んでいる間に、パトカーがやって来るまでは、それほど長い時間はかかりませんでした。
ちなみに、パトカーは( お上品に礼儀正しく )サイレンも鳴らさず静かにやって来たそうです‥‥‥‥
「その27」より‥‥
時代は平成の直前、リョウさんは‥‥警察署で「平静」になりました‥‥

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漫画家アシスタント物語 第6章
誠実にまんが道を真一文字に突き進んだ男が・・・・・たどり着いたのは自分の夢の世界なのか? 過酷な現実だったのか?
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