漫画家アシスタント物語 第5章 〈1〉 壁を超えれず、壁を描く?
初めての方は、「漫画家アシスタント物語 第1章」(無料)がお薦めです!
または、「マガジン:第1章、第2章」(無料)も読みやすいと思います!
《画像上:1996年に出版された「サイコホスピダー」の表紙。最後の作品》
< この5章〈1〉は、文庫本約13ページ分 >
その1
漫画家の集うパーティーを私の師匠であるジョージ先生は‥‥
「 つまらねぃ~ぜぇ~! 」
と切って捨てる。 しかし、私は集英社ヤングジャンプ誌の忘年会( 立食パーティー )へ一度は自分の目で見ておきたいと思って出席しました。
何よりも新人賞を取った同期の漫画家志望の青年たちと知り合いたかったし、多くの先輩漫画家に直に接する事が出来るチャンスでもあると考えたのです。
有名ホテルのパーティー会場などという所はよく政治家のパーティー会場やタレントの結婚披露宴会場としてテレビで見るくらい。 まったく私の様な貧乏人には縁もゆかりも無い場所でしたから、ヨレヨレのスーツに身を包み自分を励ますようにして出かけたわけです‥‥‥‥。
会場の装飾は意外とシンプルでしたが、さすがにその天井の高さと広さ、白を基調とした壁の美しさやまぶしい照明に圧迫感を感じつつ‥‥私は多くのゲスト( 200人ほど )の中でキョロキョロ、オドオドと震える子犬の様にいじけていたのです‥‥‥‥。
幸い担当の編集員K氏が私を見つけてくれ、近くにいた他の漫画家に私を紹介してくれたりしました。 中央で賑やかな有名漫画家とは対照的に壁際には無名の漫画家や出版関係者がいるのですが、私が紹介されたのは、その中の一人‥‥
独特の怪奇漫画で知られる日野日出志先生( 怪奇漫画界の巨匠、大阪芸大キャラクター造形学科教授 )。 私よりも年上そうなお弟子さんを一人連れて、黙って(退屈そうに)立っているのです。 これほど有名な作家が華やかなパーティー会場で壁際の置物の様になっている事を不思議に思いながら‥‥私は、日野先生に氏のある作品について話しかけたのです。
『 日野さんの‥‥ 』そう話しかけようとした瞬間。日野先生のニコリともしない無表情と鋭い眼光に圧迫され‥‥‥‥
「 ‥‥日野さ‥‥先生の‥‥ 」
「 ふ、古道具屋の話‥‥カワイイ少女も出てきますね‥‥。あの作品はどんな感じで描かれたんですか?」
ハッキリとは記憶していませんが、確か「どんな世界を表現しているんですか?」といった感じの質問をしたのだと思います‥‥。 テーマやキャラクターについての答えが返って来ると思っていた私に‥‥日野先生は即座に、低いかすれる様な声で‥‥
「 酔いです 」
と、一言!
『 この作家はただ者ではない! 』
日野先生に私はジョージ先生と同様の感性を感じ取って緊張する‥‥。 先生はクールに続ける‥‥
「 酒に酔った感じを描いているのです‥‥」
確かに先生の作品の主人公の老人はいつも酒に酔っている様な茫洋とした雰囲気がある‥‥。私は何をしゃべったら良いのか分らなくなる‥‥。
「 君は幾つですか? 」
突然、私が一番気にしている事にメスを入れてくる!
「 ‥‥はぁ‥‥‥‥さ、32です‥‥‥‥ 」
遅い‥‥。 32才でのデビューは遅い。「 何色が好きですか? 」みたいに軽くキツイ所を突いてくる。 私は息苦しくなって来る‥‥‥‥。 慣れないネクタイが首に締まる‥‥‥‥
一秒の間。
「 ‥‥‥‥大丈夫。 まだこれからですよ‥‥ 」
子供にアメ玉でも与える様に言ってくださいましたが‥‥‥‥しかし‥‥‥‥全然、大丈夫じゃなかったんですよ‥‥日野先生!

その2
慣れないスーツに生まれて初めての有名ホテルパーティー会場‥‥‥‥カチカチになっている私に、担当のヤングジャンプ編集員K氏は私と同期デビューした漫画青年Y氏を紹介してくれました。
実は私がこのパーティーへの出席で、最も楽しみにしていたのが同じ道を歩む同世代の若者に会う事でした‥‥。出来れば漫画談義に華を咲かせたいものと本当に期待していたのです‥‥
私と同じヤングジャンプ青年漫画大賞準入選を取ったY氏は、私より若く友人も一緒だったので、年上で30過ぎのオッサンに、用は無ぇ~よといった素っ気ない感じでした。
「漫画談義」などと甘い夢を見ていた私など相手にせずパーティーで行われるビンゴ大会の景品にY氏とその友人は目を輝かせていました‥‥
「ビデオデッキかぁ‥‥」
「レーザーディスクもあるんだぁ!」
「こっちのは何だろう‥‥」
私は二人の目の前に居ながら心は遠ざかって行く。 どんどん遠ざかって行く‥‥‥‥。 もう全然見えない所まで遠ざかって行く‥‥‥‥
そして、私の最初で最後のパーティー経験は終わる。 ここでプッツリとテープが切れる様にパーティーでの記憶が途切れます‥‥。
この時に会ったY氏はその後、原作付きの漫画作品を多く発表します。 有名な所では「○逃げ屋本舗」などがあります。 第一線で活躍する漫画家先生になったわけです。
私の事など記憶の片隅にさえ存在しないでしょう‥‥‥‥
しかし、この時(1987年12月)‥‥ 私は‥‥‥‥
『俺のドモ五郎はカラー2色で掲載されたんだぁ!』 ‥‥などと‥‥
バカ丸出しな事を考えて悦に入っていたのです‥‥! 自分の行く道が崖っぷちになっている事も知らずに‥‥‥‥
「その3」より‥‥
壁にぶち当たる‥‥ そんな土壇場で壁を描くのか?
3章より、各節が100円の有料記事になっています。しかし、2026年
の夏か秋年末からは、各章、ゆっくり「ほぼ無料化」する予定です。
遅すぎ‥‥ なんですが‥‥‥‥ どうかお許しください。

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漫画家アシスタント物語 第5章
ヤングジャンプでデビューしても楽はできない。 その先からが地獄のレース、だがそのコースは泥沼、迷路と迷走、遅延の地獄だった!
年金生活者にとって、とても嬉しいご支援! 感謝申し上げます!
