漫画家アシスタント物語 第5章 〈9〉 地獄の挨拶と借金地獄!
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《写真上:2024年、チェンマイ市街。デパートとホテル、緑がいっぱい!》
< この5章〈9〉は、文庫本約18ページ分 >
その38
タイで安く日本の古い「 一圓銀貨 」を仕入れて、日本の古物商に転売して稼ぐ‥‥。 そんな事には、現実性も魅力も感じなかった私ですが、佐々木氏( 調布市、会社代表取締役、50歳代後半 )たちが買い込んだ多量の銀貨が、その後どうなったかについては( 正直いって )大変興味がありました。
私は、予定より早くチェンマイを発ち、バンコクで一日ゆっくりと過ごしてから日本へ帰国しました。
そして、人づてに佐々木氏たちが数十万円を注ぎ込んで買った銀貨が全てクズ鉄だったという事を知らされました。
たとえ古銭がニセ物でも銀貨としての価値があれば、それだけでも利益が充分出ると目論んでいた様ですが‥‥‥‥ クズ鉄に銀メッキしただけのニセ物には「 一圓銀貨 」なのに「 1円 」の値打ちもなかったのです。
私は、もう佐々木氏たちと会うつもりも連絡を取るつもりもありませんでした。旅行から帰った後は、もう過去の関係だと思っていました。
そして、このまま実際に何の連絡も無く終わっていたら‥‥‥‥ このすぐ後で私が描く長編漫画「 蟹工船・覇王の船 」の悪役モデルに佐々木氏をイメージする事などなかっただろうと思います。
タイ旅行から帰って一週間ほどして‥‥‥‥
私の頭の中から佐々木氏が消えかけていた時‥‥ その電話はかかって来ました。
クリーム色のプッシュ式電話器が「 リンリンリンリンッ 」と鳴ります‥‥
私は、まさかその電話が地獄の一丁目からの直通電話だとは予想だにしませんでした‥‥!
もっとも、電話をかけている佐々木氏自身、自分が2年後に本物の地獄( あの世 )に落ちる事になるとは想像もしていなかったでしょうが‥‥‥‥
のん気な私は軽く受話器を耳にあてます。
「 はい。小池で‥‥ 」 言い終わらぬうちに!
「 よぉ~っ! あいさつもなく何ンで帰ったんだ~っ! あ~~っ!? 」
地獄の底から響くような怒鳴り声!
佐々木氏は酒に酔って電話をしている。 はじめ絶句した私も、すぐに身構える‥‥。
「 ‥‥でも、ホテルのフロントに伝言を頼んで‥‥‥‥ 」
佐々木氏の声がギアチェンジする
「 チッ! あいさつだよ!」
「‥‥‥‥」
「あいさつもなくぅうう‥‥勝手にぃ帰りやがってよぉおおおおおおっ! 」
完全に酔っている‥‥‥‥ ベロベロに酔っている!
タイでは見せなかった佐々木氏の隠された一面に私は愕然としつつも氏への冷静な対応に努めた‥‥‥‥( 下戸の私にとって、この手の対応は憂鬱極まりない! )
『 反論はまずい‥‥火に油を注ぐ結果になるだけだ‥‥‥‥ 』
説得は不可能と私は判断した。
「 メシぃ~食わせてぇ‥‥車に乗せてやったのによぉおおお~っ!」
「‥‥‥‥」
「それでぇ‥‥あいさつも無しかよぉおおおおお~~~~っ! 」
「 す‥‥すいません‥‥‥‥ 」
「 ホテルだって、俺が紹介したんだろうぉ~! 違うかぁ~!?」
「 はい‥‥‥‥」
「 タクシーだって‥‥‥‥車だって‥‥‥‥ 」
「 ‥‥タ‥‥タクシー代は私が500バーツ(2000円)出して‥‥‥‥ 」
『 しまった! つい‥‥口が滑った!! 』
「 何ンだぁああああ~~っ! 500バーツだぁ~!?」
ボルテージは最高潮!
「‥‥‥‥」
「ふざけるなぁああああ~っ! この野郎ぉおおおっ!」
「‥‥‥‥」
「車のチャーター代がいくらかかってると思ってんだぁあああ~! 」
私は黙って、もう一度、冷静さを取り戻そうと‥‥‥‥謝罪のタイミングを計っていた‥‥‥‥
「 メシ代いくらしたか分ってんのかよぉおおおっ!?」
「‥‥‥‥」
「チェンライ連れてって、ロブスター食わせて‥‥よぉ‥‥」
「‥‥‥‥」
「それでぇ‥‥‥‥あいさつ無しかぁああああああ!? 」
私は受話器を持ったまま頭を下げるように
「 すいません! 本当にすいませんでしたっ! 」
この辺りでは、まだ謝っているだけで、なんとか峠を越せそうな気がしていたのです‥‥‥‥
しかし‥‥
次の一言に私の心臓は止まります‥‥‥‥
「 ジョージ秋山を出せっ! 文句言ってやるぜっ!」
この瞬間、私の顔色が真っ白になったと思います。
「 とんでもね~弟子がいるってよぉおおおお~~~っ! 」
「 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 」
私の心臓も血液も‥‥‥‥凍りついて一言もない‥‥‥‥‥‥
「 ジョージ秋山はよぉ‥‥」
「 ‥‥‥‥‥‥‥‥」
「 弟子にどんな教育してんだよぉおおおおおおおおっ!」
「その39」より‥‥
なぜ漫画制作に集中しないのか、酒乱とタイへ行ってる場合じゃなかったのに‥‥‥‥ そして、あの問題が口を開けて待っていました!

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漫画家アシスタント物語 第5章
ヤングジャンプでデビューしても楽はできない。 その先からが地獄のレース、だがそのコースは泥沼、迷路と迷走、遅延の地獄だった!
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