漫画家アシスタント物語 第3章〈5〉 一人ぼっちのユミさん
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《 画像上:'78年、ガンさんの少年キングデビュー作「ブルーなあいつ」》
< この3章〈5〉は、文庫本約18ページ分 >
その25
23歳、1978年昭和53年の春・・・・・・・。
私は秋山プロに入社以来ほぼ毎日( 数ヵ月間 )、出勤時間( お昼 )に遅刻していました・・・・・。
私の暗い性格は、その生活を夜更かし型に変え、しだいに寝つきも悪くなり・・・・・・朝、起きる事がなかなか出来なくなりました・・・・・。
ついには目覚まし時計を3~4個も用意して寝床につく始末・・・・・・・。
夜明け近くに横になっても2,3時間は寝付く事が出来ない・・・・ 昼頃、幾つかの目覚まし時計を蹴飛ばしながら、あわてて秋山プロに向かう・・・・・。
汗びっしょりかいて秋山プロのドアを開け、いつもの様にとぼけた顔して自分のイスに体を沈める・・・・・・
先輩スタッフ6人は、もうせっせと仕事を始めている。毎日30分以上遅刻して来る私に誰も何も言わない・・・・。
「 小池君! お昼は何にしますか~? 」
いつも、明るくそう声をかけてくれるユミさん( 仮名:吉村由美子、?出身、自称23歳 )。 近くのおそば屋さんに出前の注文をしてくれるのだ・・・・・。
そこで私はいつもの様に・・・・・・
「 鍋焼きうどん! 」
私が秋山プロに入ってきてから2ヶ月ほどで、ガンさん( 仮名:羽賀 司郎、東京出身、28歳 )は独立して、辞めていかれました・・・・・。
ガンさんは「 週刊少年キング 」に喫茶店のボーイさんを主人公にした漫画の連載を勝ち取ったのです・・・・・・当時、ガンさん28歳。
映画「 サタデーナイトフィーバー 」が流行、ディスコが雨後のたけのこの如くあちこちに出店した頃でした・・・・・・
ガンさんはTVで見た若者のインタビューをよく引用していました・・・・・・
「 小池ちゃん! そのテレビリポーターがディスコで踊る若者にさぁ、こう質問したのよ・・・ 『 あなたにとって青春とは? 』って・・・ その若者、何て答えたと思う? 」
「 ・・・さ・・・さぁ・・・・・・・・・? 」
「 自分の額の汗を示しながら・・・ 『 これだゼ・・・・! 』って! 小池ちゃん! カッコイイと思わない? 暗いのはダメよ~っ! これが青春よ~っ! 」
当時、何度も同じ話を聞かされました・・・・・・・。
私は俗に言う「 流行り物 」は苦手で、ディスコも大嫌いでしたから、この話をされるたびに気が滅入ったものでした。
ガンさんは、デビュー前からものすごく作品を描いていました・・・・・・しかし、あまり推敲(すいこう)もせず安直に描き飛ばしてしまう欠点があったのです・・・・。
とにかく「 週刊少年キング 」で連載を持った事は確実に漫画家への第一歩を踏み出した事になるのですが・・・・・
この時は、それがまさか地獄の一丁目への門出になろうとは、誰一人予想もしていませんでした・・・・・・。

その26
多くの漫画家アシスタントが夢見る事は連載を持って独立する事です。
もし、すぐ横にいる先輩が連載を持って独立して行ったら・・・・・・
どれほど、その先輩が光り輝いて見える事でしょう・・・! ( 数年後の自分の姿をオーバーラップするわけです・・・ )
独立する苦しみなど理解出来ずに、白紙がのった机と向かい合う毎日の孤独な苦行を想像すらせず・・・・・・・
私は、ただ・・・・・・ 漠然とあこがれていたのです・・・・・
私はこの頃のガンさん( 東京出身、28歳 )を見ていてさわやかに羨ましく、その明るい面だけを眩しく見上げていました・・・・。
ガンさんには当時、同い年の奥さんがあり、老母も扶養しておられました。 そのガンさんが長年( 10年近く )のアシスタント生活から独立!
「 ブルーなあいつ 」「 マイラブサニー 」( 「 週刊少年キング 」 )、ガンさんが描くウェイター物語、連載開始・・・・・・
独立、連載・・・・・・いよいよ、一人前の漫画家としての第一歩を歩み始めたわけですが・・・・・・・
1978年( 昭和53年 ) 初秋・・・・・ 街には、沢田研二やピンクレディーの明る
い曲が流れていました・・・・・・。
連載は少なくとも半年位は続くのでは・・・・と思われていたのに・・・・・・
たった2ヶ月ほどで終わりました・・・・・・・。
ものすごく突然切られてしまいました・・・・・・・。
はた目には、また何処か他の出版社で仕事をするのかなぁ・・・・などと、のん気に傍観していたのですが・・・・・・・
本人の焦りと苛立ちは、尋常ではなかったろうと思います。
ガンさんは新作を持って出版社を回ります・・・・・・
その新作を私も見せてもらいまいたが・・・・・・・・
『 ん~・・・・・・・ イマイチ・・・・か・・・・・・ 』
連載が打ち切りになった頃・・・・・・
たまたま、遊びに行っていたマツさん( 広島出身、24歳 )のアパートで、私は
ひどいイタズラを思いついたのです・・・・・・・
マツさんと私は声色を使ってガンさんをだましてやろう・・・・・・などと考えたのでした・・・・・・
マツさんは、頭をかきながら
「 引っかかるワケなかろ~ 」
「 そうですよねぇ・・・・ 」
二人はバカバカしいとは思いつつ・・・・ガンさんにニセ電話をかけます・・・・・
まず私が渋い声色を使い・・・・
「 羽賀先生のお宅ですかぁ? 私は少年ジャンプのウソノと言うものですが、実は週刊少年Kに連載された、先生の作品を拝見してお電話しました・・・・」
すぐ、バレると思っていたのですが・・・・・・・
ガンさんは意外にもすっかりハメられて、緊張から声を上ずらせる・・・・・。
人の気も知らない私は、命がけで笑いをこらえていました・・・・・。
「 是非、先生に連載のご相談などしたいと・・・・・・一度、お会いしたいと思うのですが・・・・・」
‥‥‥‥もう我慢できない!( 笑いが爆発寸前 )
「 あ・・・ 今、編集長と代わりますので・・・・・・・ 」
後で聞いたのですが、この瞬間、ガンさんは受話器を握りながら、新連載の
構想が頭の中をかけめぐっていたそうです・・・・・
ところが・・・・・・ ここでマツさんが登場‥‥‥‥
「 ・・・・・・ガンさん! ワシじゃ! 」
「 ・・・・・・・・・・??? 」
ガンさんはこの時、頭の中が真っ白に・・・・・・
「 ワシじゃっ! マツじゃっちゅ~の! ガンさん!」
新連載の構想が・・・・真っ白に消えていく・・・・・
「 ・・・・・・・・・・・ 」
「 まだ、分らんのけぇ‥‥? 」
ガンさんは夢から覚めます・・・・・
「 嘘なんじゃ~! ・・・・・・そう! ・・・・・・全部ウソ!! 」
大変申し訳ない事をしてしまいました・・・・
この後、ガンさんが新連載を得、漫画家になっていたならこの話はシャレで
済んでいたのですが・・・・・・
実は・・・・・・
後にも先にも、「 依頼 」の話はこの「 ニセ依頼 」ただ一つで終わってしまい・・・・・・・
もっともこの時のガンさんには、後輩たちのイタズラを笑って許してくれる余裕があったのですが・・・・・・。
その後、何度も出版社をまわって持込みをした結果・・・・・・・
原稿を買ってくれる所はどこにもなく・・・・・・すっかり漫画制作を見切ってしまいました・・・・・・・・・
これ以降、ガンさんは漫画家アシスタントに戻る事もありませんでした。
( 意地でも戻りたくなかったそうです‥‥ )
アルバイトを転々とし・・・・・奥さんと別れ、老母とも別居して一人孤独に・・・・・・・・ どぶ川をはいずる様に生きていきます・・・・・・・
建設現場で日雇い労働の日々を送っていた頃、アパートの家賃やその日の食費にも困るようになり・・・・・・
ついに、ジョージ先生の所へお金を借りに行く事になります・・・・・・
その時のいきさつは次回に・・・・・・。
「その27」より‥‥
追い詰められたガンさん、男ばかりの職場で苦しむユミさん‥‥

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漫画家アシスタント物語 第3章
そして・・・ 鬼才ジョージ秋山の弟子に、また馬鹿が加わる! 全7本、40話! ・・・・ごゆっくり、お楽しみください!
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