漫画家アシスタント物語 古い話で章〈7〉 新弟子の絵が飾られている!
《写真上:秋山プロのあるマンション近くから撮影した目白通り。秋には見事なイチョウ並木も、冬には枯れていて少し寂しい風景です。 2014年2月 》
< この「古い話で章〈7〉」は、文庫本約9ページ分 >
「古い話で章」は、独立した「章」ですので、「諦めま章」の続きではありません。 無料で、各話、お楽しみいただけます!
ただし‥‥ 各話が連続していますので、「古い話で章〈1〉」からお読みいただく方がよろしいかと思います。
はじめての方は、「マガジン:第1章、第2章」(無料)がお薦めです!
その13
《 漫画家アシスタントが・・・異例な評価を受ける!? 》
これは、テラさん( ※参照 )が秋山プロ( ※参照 )に来てから少し経った頃のことです‥‥
ジョージ先生( ※参照 )の仕事場は、6畳ほどの部屋で、窓の前にデスクが置かれ、その周りを本棚が囲んでいました。
いつものようにキャラクターの描かれた原稿を先生から受け取って、それをアシスタントが待機しているアパートへ運ぶのですが‥‥
先生から原稿を受け取った時に‥‥
ふと、見上げると‥‥
先生の部屋の窓の上‥‥ つまり、先生のデスクの上‥‥ 天井近くの壁に小さな紙が貼り付けてある事に気が付きました。
テラさんは、じっとその紙を見つめます‥‥‥‥
それは、薄黄色くなった一枚のハガキです‥‥‥‥ 何か、絵の様なものが描かれているのですが、その絵には、ハッキリとした見覚えがあります‥‥‥‥
「 あ、ああああ‥‥‥‥‥‥! 」
テラさんが思わず声をもらすと‥‥‥‥ 先生がニヤリと笑います。
ハガキは、以前、テラさんが先生に出したファンレターだったのです。 それも4コマ漫画を描いたものです。
確かに‥‥ 見間違いではない‥‥‥‥ 本当に自分の4コマ漫画が先生の部屋の壁、それも、先生のデスクの真上にしっかりと貼られている!
テラさんが驚いて、思わず「 あああああ! 」と声をもらすのも無理はありません。
当時、テラさんは、仕事にもまだ慣れていないし、背景画の実力を先生に認めてもらってもいませんでした。
時には、先生から「 この原稿は、おめぃ~は描くんじゃね~ぞ! 」と、特に大切なシーンを描いたページには、手を触れる事さえ禁じられるほどでした。
もっとも、以前、禁じられていたページに手を入れてしまい、先生を落胆させたこともあったのですが‥‥‥‥ それは、ともかく‥‥‥‥
スタッフの中でも画力はイマイチだし、特に先生が警戒していた存在だったのに‥‥‥‥‥‥ そのテラさんの絵を‥‥‥‥ いったい何故?
先生は、テラさんが高校生の時に描いた4コマ漫画を高く評価してくれているのか‥‥‥‥?
しかし‥‥‥‥ ニヤリと笑った先生の目はクールでした‥‥‥‥
「 あんまりつまらねぃ~んで、飾ってあるんだよ! 」
それにしても、あの変わり者のジョージ先生が‥‥‥‥ どんな漫画家の絵さえ、ただの一枚だって飾るような事は絶対にしない先生が‥‥‥‥
その4コマ漫画がどんな漫画だったのか‥‥‥‥ とても興味深い4コマ漫画ですが‥‥‥‥ 残念ながら、そのハガキは現存しません。
しかし、当時( 40年前 )の4コマ漫画がどんな作品だったかは、テラさんがよく覚えていました。
それは‥‥‥‥
こんな感じの4コマ漫画だったそうです‥‥‥‥
1、寒いので、子供が古くなったストーブを出して来る。
2、そのストーブを点火する。
3、ストーブが爆発する。
4、「 あ、寿命だ 」( スミだらけになった少年 )
先生は笑いながら‥‥‥‥
「 本当にくだらねぃ~~よ! 」
「 ‥‥‥‥‥‥‥‥?! 」
「 よくも、こんなつまらねぃ~~もの描きやがって! だから飾ってあるんだよっ! 」
茫然とするテラさん‥‥‥‥‥‥ ただ、苦笑いするだけで、言葉が出ません‥‥‥‥
「 これだぜ! これだけつまらねぃ~ものはねぃ~~っ! 」
「 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 」(汗)
「 これを目指せっ! 」
そんなこと言われても、何をど~したら良いのかわからない18歳のテラさんでした。

その14
《 漫画家アシスタントが・・・長年の疑問をぶつける!? 》
何年漫画を描いたら漫画家に成れるのか‥‥?
そんな事は誰にも分からない。
高校生でデビューする人や、18歳で連載漫画を描く人もいる。
私のように40年、漫画に関わっても漫画家に成れないドジもいる。
私にとって個人的に重要なテーマは、どうやったら連載漫画を取れるか‥‥ という問題なのですが‥‥‥‥
つまり、デビューする事は、そんなに難しくはないのですが‥‥‥‥ 連載漫画を持つこと( 漫画家に成る事 )は、結構、難しいのです。
デビュー作を描く延長線上に連載漫画があるのではなく、デビュー作よりも数段高いレベルが要求されるからです。
私の長年の疑問は、この「 数段高いレベル 」とは、何なのか‥‥‥‥ というものでした。
もちろん、それは、人によっては様々な解釈があるかと思いますが‥‥‥‥
去年( 2013年 )の暮、私はある漫画関係の忘年会から、お誘いを受けて出かけたのです‥‥‥‥
その時に、一人の漫画家に紹介されました‥‥‥‥ それが、少年〇ャンプで有名なプロレス漫画を連載していた人物、私より5歳若いY先生でした。( 氏の功績で出版社の社屋が一つ増えたとの噂もある。俗に『××マンビル』 )
ドリフターズの高木ブー氏が気持ち良さそうにウクレレを弾いているような感じの人でした‥‥‥‥
せっかく紹介されても、初対面の人に何を喋ったらよいのかわからないし、ただでさえコミュニケーション下手で臆病な私ですので、一瞬‥‥‥‥ 沈黙が続くわけです‥‥‥‥‥‥
「 こちらが‥‥ ジョージ秋山先生のところでアシスタントをしている小池さんです 」
‥‥と、紹介してもらったのですが、Y先生、まったく興味が無さそう‥‥‥‥( 当然です )
さらに‥‥‥‥
「 『 漫画家アシスタント物語 』というブログをやっていて‥‥‥‥ 」
などと‥‥ 紹介を続けていただいても、まったく興味が無さそう‥‥( これも当然 )
パーティーの主催者( ジャンプ系漫画家 )が、私のような万年アシスタントを大御所とも言える漫画家先生に紹介するのも大変だったろうとは思いますが‥‥‥‥
私は、長年疑問だった事‥‥‥‥
『 デビューしてから連載をもらうために必要なこと 』
この疑問を、率直に訊いてみたい衝動にかられました。
「 私は、デビューしてから30年近く‥‥‥‥ 結局、連載は取れませんでした‥‥‥‥ 」
‥‥と、前置きしてから‥‥‥‥
「 先生がデビューした後で、連載をもらう事ができたのは、なぜでしょうか? 」
急に質問された事に戸惑われたのか、すぐには返事をされません‥‥‥‥
そこで、私は、ちょっと失礼かな‥‥‥‥と思いつつも、どうせ、一期一会のチャンスだと思って‥‥‥‥( どうせ、雲の上の人だし )
「 運が良かっただけなのか‥‥‥‥ それとも、よほど優れた才能にあふれていたのか‥‥‥‥? 」
‥‥と、Y先生を見つめます。
黙っている先生でも、「 運が良かっただけ 」という言葉には、きっと反応してくれるだろうと思ったのですが、さすがにちょっと失礼だったかもしれません‥‥‥‥
そして‥‥
「 運じゃないです 」
‥‥と、キッパリ返答。
「 ‥‥‥‥ 」
「 運じゃないですね、連載を始めた時は、まだ19歳位で何もわかりませんでしたから‥‥‥‥ 」
「 はい 」
そして、最も印象深い一言が続きます‥‥‥‥
「 楽しかっただけですよ 」
ニコニコと笑顔をみせながら‥‥‥‥
「 楽しくて夢中で描いていただけですよ 」
私は、とっさにバカにされているんじゃないかと思いましたが‥‥‥‥
よく考えてみれば、苦しみながら( 嫌々 )描き続けた私と、「 楽しかった 」というY先生との違いは明白です。
19歳で、「 先生、面白いです 」「 素晴らしい!」「 もっと描いて下さい! 」「 人気投票トップです!」と一流雑誌社から連載を依頼されるY先生と、30歳でやっとデビュー‥‥
ところが、読者の人気投票では最低、次の作品も最低辺、言われる評価は‥‥
「つまらない」「暗い」「言わなくてわかるでしょ」「ジョージ先生は凄いのに」‥‥‥‥こんな調子で没原稿だけが積み上げる。
ついに‥‥ 30年間‥‥ 三流雑誌社からも相手にされない‥‥‥‥
そんな私が「楽しく夢中で描いてました」と言ったら、病院送りになる事、間違いありません。
さて‥‥‥‥
次回は、18歳、19歳のテラさんがどのようにして漫画道を歩んで行ったのか‥‥‥‥ また、歩めなかったのか‥‥‥‥ そんなお話をしたいと思います。
「 漫画家アシスタント物語 古い話で章〈8〉」へつづく・・・・
「古い話で章〈6〉」へもどる‥‥
「もくじ」 へ‥‥
~~~ 参照 古い話で章〈7〉 ~~~( 読んでも、読まなくても!)
【その13】
・テラさん : 九州の小倉出身。1969年に高校を中退して秋山プロへ。35年勤務して童話画家を目指す。
・秋山プロ : 漫画家ジョージ先生の仕事場。東京目白にあり、スタッフは2014年には2人。連載は1誌。ちょっと淋しい今日この頃です。(バブル期には連載6誌、スタッフ6人)
・ジョージ先生 : 有名漫画家、1966年、23歳で売れっ子作家に。1970年には27歳で、週刊連載6誌という逸話もある。現在は1誌に連載中。2014年現在、71歳。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
⇩⇩ イエス小池、チェンマイ楽隠居の現実‥‥ マガジン・シリーズ!
⇧⇧ 全部、無料です!
いいなと思ったら応援しよう!
年金生活者にとって、とても嬉しいご支援! 感謝申し上げます!