漫画家アシスタント物語 第4章〈9〉 K談社連続持ち込み!
初めての方は「 第1章」や「マガジン:第1+2章」(無料)がお薦めです!
《画像上:1986年に描いた「死亡少年」のラストシーン、暗い絵が大好き》
< この4章〈9〉は、文庫本約19ページ分 >
その48
漫画家として華々しくデビューするいくつかの演出を、私は野望として持っていました。
少年誌でヤクザ組織を壊滅する小学生「 グワッキ 」。そして青年誌Yでは、SF戦争問題作「 AIZU2145 」。さらに意外なジャンルでペーソス漫画「 僕です! 」‥‥そして、本命のホラー漫画「 死亡少年 」‥‥
これらの作品を1年ほどで一挙に( メジャー出版各社に )発表し、その幅広いジャンルをこなす才能と実力を世に問う! ‥‥そんな大それた目論みがあったのでした‥‥‥‥
しかし、暴力団を潰す小学生「 グワッキ 」は投稿前にグロッキー。 未来戦争をテーマにした「 AIZU2145 」は賞に応募すら出来ずに憤死。
漫画青年の軽薄な胸算用など、広い世間ではなんと虚しいものか‥‥‥‥ ところが、そうした現実に気づいていたのかいないのか‥‥ まだまだやる気だった1986年( 31歳 )の私でした‥‥‥‥。
ペーソス漫画「 僕です! 」をK談社Y誌に投稿し、その選考を待つ間にホラー漫画の制作に入りました。 私は元々は暗い性格ですので、この作品こそ『 オレの世界だ! 』と、気合いが入っていました。
話の内容は自殺した少年が霊界をさ迷う話。まさにタイトル通り「 死亡少年 」な訳です。
地獄へ行くか天国へ行けるか‥‥その瀬戸際をさ迷ううちにすさんだ気持ちが消えて、素直な自分を取り戻すというお話です。
キャラクターは主人公と死後の世界の案内人の2人。 背景は全て荒野‥‥。 全体に暗いトーンでしたが、SFの時と同じで、ほとんどつまずく事もなく、サクサクと進みました。
全24ページ、制作日数は約3ヶ月ほど、夏には終わる予定でした。気分は完全にホラー一色。 毎日「 地獄の門 」だの「 死神 」だの、「 死の世界 」にどっぷりとつかっていたわけです。
そして、「 僕です! 」の予選が発表されます。全応募作品から10作品ほどが最終選考作品に残るのですが‥‥ このY誌に自分の作品名がその10作品に選ばれているかどうか‥‥
まだまだ自信にあふれていた私でもさすがに怖い‥‥‥‥。 宝くじの当選結果を見る気分というより、大学や高校入試の合格発表を見る気分に近いものがありました‥‥‥‥
めずらしく朝早く起きて( それでも10時頃 )近くの本屋へ行きます。 そしてドキドキしながら青年漫画Y誌を手に取る‥‥ しかし、買って帰るつもりはありませんでした‥‥。
自分の作品が最終選考に残っている事を「 ちょっと 」確認するだけなのだから、本を買う必要はなく、立ち読みで充分! ‥‥と ‥‥しかし‥‥
自分の名前が必ずあると自負しているのに‥‥ なぜか心臓はドキドキと‥‥‥‥

その49
漫画家アシスタントとして秋山プロに勤めて、あっという間に8年が過ぎていきました。
1986年初夏‥‥。
この当時、私( 31歳 )はペンネームに「 ZOPA工場 」という変わったペンネームを使っていました。「 ZOPA(像波) 」は電波、音波と同じ様な波という意味で「像波」という言葉を造語しました。
それに「 工場 」をくっ付けて「 ZOPA工場 」・・・・というわけです。 いちいち人に説明しなくてはならない面倒なペンネームでした。( ただし、一年後にペンネームが変わります‥‥その理由は、またいずれ‥‥ )
では、さっそく前回からのつづきを‥‥‥‥
ドキドキしながら私は「 最終選考作品(10作品ほどの)発表 」のページを開きました‥‥。 「 僕です! 」という簡単なタイトルは、とても目立つので、すぐに目の中に飛び込んで来ました!
ホッ!
うれしいと言うよりも「 ホッ 」としたという気持ちがホントでした‥‥。もし、このタイトル名が無かったら‥‥目の前が真っ暗になり、地獄の泥沼に落ち込んで行ったでしょうから‥‥‥‥。
しかし‥‥‥‥次の瞬間、私は息が止まります! 「 僕です! 」のタイトル名の後のペンネームが‥‥‥‥!
「 『 僕です! 』 作、20P工場 」
『 20P工場 』‥‥? ‥‥何だこりゃ~???
「 『20P』じゃねェ~よぉ!『ZOPA』だっつ~のぉおおっ! 」
この時の何とも情けない気持ち‥‥。 書店の窓からサンサンと差し込む朝10時の日差しにも白けた気分が広がる様な‥‥‥‥。
「 ZOPA工場 」を「 20P工場 」と誤植した単純なミスですが、何だか頼りない様な、情けない様な気持ち‥‥。 大手の出版社からすれば、無名の投稿者のペンネームなど、ど~でも良いのかもしれませんが‥‥‥‥
腹が立つわけでも、ナニが立つわけでもなく、ただ「 ちっ、面倒くさいな‥‥ 」と思いながら‥‥K談社のY誌編集部へ電話して、ペンネームの誤植を指摘したわけです。
私としては『 一応報告しておいた方がいいかなぁ‥‥ 』という程度の軽い気持ちでしたが‥‥
「 あ~‥‥そうですか、それはどうもすいませんでしたぁ! 」
Y誌編集員は、まったく当たり前の謝罪対応を自然にするわけですが‥‥みじめに恥ずかしくなっていくのは、自分のペンネームを説明する私の方でした‥‥‥‥
「 え~と‥‥ゼット、オ~、ピ~、エ~です‥‥ 」
電話口の編集員が弱ったような声で‥‥
「 ‥‥すいません、何語ですか?」
「 英語のアルファベットです‥‥ 大文字でぇ‥‥ 」
編集員は納得しながら‥‥
「 なるほど、英語の‥‥大文字ですね‥‥ 」
「 はい‥‥そうです」
「 ‥‥セット、オン、ピ~ですね?」
「 違います‥‥ゼットです、ゼット! それから、オ~! ピ~!
エ~~ッ!」
「 オ~、ピ~、エム‥‥?」
「 はぁ‥‥? 違います、エムじゃないです!」
編集員は困惑している‥‥
「 エムじゃないの?」
「 違います、エ~です、エエエ~~~ッ!」
もう泣きそうになる‥‥‥‥。
「その50」より‥‥
漫画賞への投稿作品‥‥その結果は、想定外な出来事へ進み‥‥

ここから先は

漫画家アシスタント物語 第4章
ジョージ秋山に弟子入り9年目・・・・テイクオフの時だ! 連続投稿、メジャー誌制覇! 男の野望と欲望の結末は・・・・!?
年金生活者にとって、とても嬉しいご支援! 感謝申し上げます!
