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漫画家アシスタント物語  第9章 〈8〉 先生、大学で講演なんですが?

 
《 写真上: 東京某所。このビルの中の一つが大学です。2012年3月 》
               < この9章〈8〉は、文庫本約10ページ分 >
 


「第9章」は、独立した「章」ですので、「第8章」の続きではありません。ほとんど短いショートストーリーですので、「第9章〈1〉」(無料)より、お楽しみいただけます!

ただし‥‥ この「第9章」は、それぞれの話が少しだけ連続していますので‥‥ 「第9章〈1〉」よりお読みいただくのがよいかと思います。
 
それから‥‥
はじめての方は、
「マガジン:第1章、第2章」(無料)がお薦めです!
 

さて‥‥ 本文の前に‥‥ ここで‥‥‥‥
 

拙ブログ記事へチップをくれた、読者の方を紹介させてください。
 ルルトアヤコ さん  ‥‥‥‥‥  チップ、ありがとうございました!

 


               その15  
  
   《 漫画家アシスタントが・・・このブログに救われる!? 》
 
 
2008年、大学( ※参照 )から講師のオファーをいただいた時に‥‥

「 漫画家アシスタントの体験談と、その技術を教えていただければ良いのです‥‥ 」

そんなお話だったので、それなら『 簡単そうだなぁ 』と引き受けたのですが‥‥

実際に大学での授業を見ると‥‥‥‥ 漫画を教える先生が小道具や服装までに気を遣い、細かく論理的に授業を進めているのを見て‥‥‥‥

「 ちょっと、甘く考えていたかも知れない‥‥ 」

‥‥‥‥と、反省。

そこで、昔( 35年前 )かわぐち先生( ※参照 )のところで一緒にアシスタントをした先輩のNさん( ※参照 )に連絡、今は専門学校で教師をしているので、その授業法などを教えてもらおうと‥‥ 早速連絡を取ったわけです。

Nさんは、快く私の要望通りに授業に使うサンプルや試験用紙などを参考にと提供してくれました。( これには大変、感謝しております )

「 小池君、遅刻だけは絶対にダメだよ。 僕は、授業の始まる30分前には必ず学校に行っているし、朝シャンだってやってるんだよ‥‥! 」

‥‥‥‥そこまで神経使って‥‥‥‥ でも‥‥‥‥ 「朝シャン」までは出来そうもない‥‥‥‥。

そして、高校時代の恩師で、去年まで八王子T大学で日本文学の教授をしていたT先生( ※参照 )にもアドバイスをいただきました‥‥

「 え? 非常勤講師‥‥?  そ~か~‥‥ ま、心配ない。  講師なんて、誰にだって出来るさ! 」

‥‥と、一笑。

この「 誰にだって 」‥‥ という一言に、多少‥‥‥‥ 引っかかりが無くは無いのですが‥‥ とくかく、この一言で緊張が溶けました。  また‥‥‥‥

「 講義ノートだけは、しっかり付けなきゃダメだぜ 」

‥‥とのアドバイスもいただき、授業の段取りや流れとその時間割りなどをまとめた「 講義ノート 」をさっそく作成。

それでも、大学では何から何まで生まれて初めての経験ですので、どうしても緊張してしまいます。

そんな時でした‥‥‥‥

大学で漫画制作の授業を見学させてもらった、スリムで知的な女性の漫画家先生( ※参照 )と挨拶をした時です‥‥‥‥

初対面の女性と話す時の緊張感‥‥ おまけに相手は大学の先生‥‥ 

ところが‥‥‥‥ やけに、ニコニコと嬉しそうに私と接してくれるのです‥‥‥‥

そして‥‥

「 私ぃ‥‥‥‥ ブログ‥‥ 読んでますヨ~! 」
「 はぁ‥‥‥‥‥‥? 」
「 あの漫画家アシスタントのブログ‥‥‥‥ 私、ファンなんです! 」

‥‥‥‥これには、驚いた!

まさに、地獄で仏とはこの事か‥‥‥‥ 誰一人、知る人もいない場所でオドオドしていた私に救いの手が差し伸べらたようなものです。

意外な所で、このブログが援護射撃をしてくれました。

実際、50歳過ぎてから、まったく違う環境で仕事を始める時の不安な気持ち‥‥‥‥

若い学生たちと、教務課で働く見知らぬ人々‥‥ おまけに皆、真面目で服装もスーツを着込み礼儀正しく‥‥ 時間は正確で‥‥ 何もかもが清潔‥‥‥‥

白い壁に真新しい事務用品や設備など、その全てが見慣れない私には、冷たいものに感じられ寒々とした気分に沈んでいたのでしたが‥‥‥‥

彼女の一言で、ホントに救われた様な思いがしたものです。
 

前回のブログ‥‥‥‥

授業を見学している時に、学生が刀の事で質問した話を書きましたが、同じ時期に神奈川県にある美術系の大学で「 漫画家アシスタント 」をテーマに講演した時にも、気になる「 質問 」がありました。

90分間の講演を終えてから、一人の女子学生から‥‥‥‥ こんな質問を受けたのです‥‥‥‥

「 どうやったら上手くなれるんですかぁ~? 私‥‥ 背景下手なんですぅ‥‥ 」

‥‥‥‥私だって知りたい様な質問です‥‥‥‥。

その時、私は‥‥‥‥

「 自分が大好きな漫画家の背景画を、模写する( 練習する )のがいいと思います‥‥ 」

真似する事は悪い事ではなく、上手な人ほど真似する事も上手なんだといった話をしたのではないかと思います。

しかし‥‥ もっと具体的な‥‥‥‥

こうすれば、上手くなる‥‥ といった‥‥ 実用的な話を彼女は聞きたがっていたのではないかと‥‥‥‥ 気になっていたのです。

そんな時に、大変、嬉しいアドバイスをしてくれたのが‥‥‥‥ このブログ( 旧gooブログ )に時々コメントをくれる現役の女性漫画家アシスタントさんのRさん( ※参照 )でした。

彼女は、大阪に住んでいるのですが、たまたま東京に用事があって上京した時にお話する機会があり‥‥

池袋の西武デパートの7階レストラン街‥‥ なぜかスープカレーなんぞを食べながら‥‥

「 少女漫画の背景を上手く描ける様になるには‥‥ どうしたらイイんでしょうね? 」

大きな北海道のジャガイモをフォークで二つに割りながら‥‥ そんな風に質問したと記憶しています‥‥

すると、彼女は‥‥

即座に答えます‥‥
「 ああ、それは‥‥ 線ですよ~! 」

「 せ‥‥ 線‥‥? 」


 
 


アシスタントの仕事場です。写真のデスクは使っていません。室内には全部で8個のデスクがありますが、仕事をしているアシスタントは私を入れて2人だけなのです‥‥‥‥2012年3月、撮影

 
               その16  
 
《 漫画家アシスタントが・・・有給休暇を欲しがる理由・・・!? 》

2009年5月、池袋にある西武デパートの7階、いつも家族やカップルで賑わうレストラン街の片隅でスープカレーを食べながらRさんは私の質問に明確に答えてくれました‥‥

「 線ですよ~! 」

どうやったら漫画背景が上手くなるのか‥‥‥‥ その質問に対する彼女の答えは意外なものでした‥‥。

「 細い線です、いかに細く描くか‥‥ ですよ~! 」

「 細い線‥‥? 」

「 はい、細い線って意外と難しいんですよね 」

「 ‥‥‥‥‥‥ 」

「 私なんかアシスタントになり始めた頃には、細い線を描く練習を結構やったンですよね~ 」

「 細い線を‥‥? 」

「 少女漫画の場合、細い線が引けないとダメなンで~、細い線が引けるかどうかが大事なんですよ~ 」

「 なるほど‥‥ 」

「 でも、本当に難しいんですよ~、細い線って! 」

私は、彼女の言葉から大学で少女漫画の背景を指導する時の重要なポイントを授かった思いで、勇気でも貰った様な気分でした。

少年漫画から劇画、さらには女性誌へ‥‥ 指導の幅が拡がったわけです。

さらに、参考資料となる様な優れた背景を描く女性漫画家を数人教えてもらい、資料としても高い価値のある「 お手本 」を手に入れる事が出来ました。

Rさんは、自分の何気ない話などは、たいした価値はないと今でも思っているかと思いますが‥‥ 実は、私の授業では大変に重要なファクターとして役立っているのです。

スープカレーをおごったくらいでは安過ぎるので‥‥ ちょっと申し訳ないな‥‥ などと思っております。
 

さて‥‥

私が漫画家アシスタントをしながら、非常勤講師の仕事ができるのは、授業時間を朝一番の1時限に限定しているからなのです‥‥

それによって、お昼からのアシスタントの仕事には十分間に合うわけです。

しかし、神奈川県にある美術系大学での講演( ※参照 )は平日(月曜日)の午後に決まっいましたので、どうしてもアシスタントの仕事と重なってしまいます。

バブルの頃とは違い、秋山プロでの仕事もすっかり少なくなり、週の半分はお休み状態でしたので‥‥‥‥

だったら、半年以上前から休みの申し込みを‥‥と、月曜日を1日だけ、いただけないかなと‥‥

まず、その許可をジョージ先生( ※参照 )からもらってから、大学での講演を引き受けようと思ったわけです‥‥

『 半年も先だし、10年に一回くらいはたったの1日か2日‥‥ 有給休暇をもらってもいいだろと‥‥ 』

そんな気持ちでジョージ先生の部屋へ入って行きました‥‥

4畳半ほどの広さの個室‥‥ 昼間でも薄暗く‥‥ 窓に面した机に向かうジョージ先生の姿は、逆光になっていてとても眩しい‥‥

「 先生、大学から講演の依頼があって‥‥ 来年の4月‥‥ 月曜日なんですが‥‥‥‥ お休みをいただきたく‥‥‥‥ 」

振り返る事もなく、先生は‥‥ 例のごとく‥‥ 低い‥‥ 地の底から響く様な声で‥‥‥‥

「 ‥‥大学ぅ? 」
「 はい、4月の月曜日なんですが‥‥ お休みを‥‥‥‥ 」
「 俺ぃはよぉ‥‥」
「‥‥‥‥」
「どうかなぁ‥‥‥‥ 」

‥‥‥‥完全に自分が講演依頼を受けているのだと勘違いしている!

「 ま‥‥ 考えてみるか‥‥‥‥ 」
「 せ‥‥ せんせ‥‥‥‥! 」
「 ん‥‥‥‥? 」
「 あ‥‥ あのぉ‥‥ 」
「 ? 」

 
 
 

       「 漫画家アシスタント物語 第9章〈9〉」へつづく・・・・

                   「第9章〈7〉」へもどる‥‥

                   「もくじ」 へ‥‥

 

 

 ~~~ 参照 ・第9章〈8〉 ~~~ ( 読んでも、読まなくても!)

 【その15】
・大学 : 東京某所、繁華街にある美術系のTM大学。一見すると10階ほどの商業ビルにしか見えませんが、内部は、全階、教室や演習室、事務室などになっています。教授として漫画家松本零士先生が教えていました。
・かわぐち先生 : 「沈黙の艦隊」などで有名なかわぐちかいじ先生。私とNさんが勤めていた頃は、まだ無名に近く、モルタルの小さなアパートで仕事をしていました。徹夜の夜は、近所のラーメン店でスタッフ皆で一緒に味噌ラーメンを食べた事が忘れられません。
・Nさん : 1976~7年頃に、かわぐちかいじ先生の所で一緒にアシスタントをやっていた先輩。漫画家として独立後、体調を壊してからはデザイン会社を経営。後に、専門学校講師、漫画家志望個人レッスンなど。
・T先生 : 私が高校(東京目黒)時代に古文や国語を教えてくれた当時24歳の若き恩師。学校外でも色々な事を相談しました‥‥大変な迷惑だったと思います。 拙作文庫本「蟹工船・覇王の船」に解説文を書いていただきました。 現、八王子T大学日本文学名誉教授。
・漫画家先生 : 少女漫画家、「花とゆめ」でデビュー。当時は大学講師をしながら、業界誌や単行本等で漫画制作をしている。趣味は剣舞。
・Rさん : 旧gooブログの開設期からコメントをくれていた読者さん。関西で漫画制作、同人誌制作、アラブ系サイト運営などで活躍中。
 【その16】
・講演 : 東京から小田急線に乗って神奈川県の某所、名前はけっこう有名な美術系の大学。その「漫画科」の授業の一環として行われる作家や業界関係者による講演。テーマは「漫画家アシスタントの苦労話」
・ジョージ先生 : 有名漫画家、1966年、23歳で売れっ子作家に。70年には週刊連載6誌という逸話もある。08年当時、65歳、2誌に連載。

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