漫画家アシスタント物語 第4章〈4〉 最初のハードルだ!
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《 画像上:2006年1月、リョウさんのハガキのイラスト、少年坂本龍馬 》
< この4章〈4〉は、文庫本約15ページ分 >
その20
漫画原稿を仕上げ、それを机の上に立てて、「 トントントンッ 」とそろえる時の充実感は、漫画原稿を完成させた者なら誰でも知っている感覚です。
この「 トントントンッ 」に至福の喜びを感じて、それを生きがいにしている人もいるほどの爽快感なのです。( 長距離マラソンを走りきった時の様な感覚‥‥ )
リョウさん( 仮名:内海遼一、岡山出身、27歳 )が100ページ、私( 26歳 )は34ページの原稿をさっそくジョージ先生に見てもらいに行きました。
一日の仕事が終わり、スタッフがみんな帰った後で、リョウさんと私の二人がジョージ先生の個室を訪ねます。
にらむ様にナポレオンをグラスにそそいでいるジョージ先生に、どちらからともなく‥‥
「 先生‥‥ 原稿を見ていただきたいんですが‥‥ 」
この一言は年に数回、人によっては10年に一回しか口にできない重い言葉です。 それはまるで、漫画賞でも受賞した様な誇らしさいっぱいの言葉なのです。
この一言を発するために、どれだけの労力と時間が費やされた事か‥‥‥‥
「 先生‥‥ 原稿を見ていただきたいんですが‥‥‥‥」
リョウさんと私はソファにくつろぐジョージ先生の前で胸を膨らませます‥‥。
「 うぅ‥‥? 」
ジョージ先生の不快そうな顔‥‥ 面倒くさいなぁ‥‥ という顔。
『 よく描いたなあぁ! すごいじゃないかぁ! 見せてくれよぉ! 』
‥‥などと、ドラマの様なセリフは期待しません。
でも‥‥「 どれどれ、見せてみろ 」ぐらいの言葉を望む事は「 弟子 」として、ごく自然な事だと思うのですが‥‥‥‥
ジョージ先生は横を向いて独り言でもつぶやく様に‥‥‥‥
「 人の原稿を見るのはよぉ‥‥ 疲れるんだぜぇ‥‥ 」
‥‥と、タメ息をつきます‥‥。
リョウさんと私は黙ったまま立ち尽くす‥‥ 二人の愛想笑いが乾き始めた時‥‥
( ジョージ先生は自分の言葉の効果を充分に楽しんでいるようにに )
「 まぁ‥‥ いい‥‥ どぅり‥‥‥‥? 」
と、ジョージ先生が手を出す。
リョウさんは両手で100枚の原稿を差し出す‥‥。
100枚の原稿が震える‥‥

その21
アシスタントのリョウさんの100ページの大作をジョージ先生はていねいに見ている‥‥。 ( 1981年、昭和56年 )
ニコリともしない。 まるでライバルの描いた原稿でもにらんでいる様に一枚一枚、丹念に見ている‥‥。
最近、この時の事をリョウさんに質問しました‥‥。
「 先生の批評で印象に残っている言葉は‥‥? 」
「 これ( 100ページの大作 )が、将来大きな意味を持ってくから、大事にするんだよって、言われたね 」
そう語るリョウさんですが‥‥‥‥ 実は‥‥ もう一つ‥‥ とても印象に残った言葉があります‥‥ それは‥‥‥‥
『 龍馬になってねぃ~っ! 』
「 歩く幕末 」と呼ばれたリョウさん‥‥。 部屋には坂本龍馬はもちろん幕末史に関する資料が山のように積まれていたものです。 どれほどの思い入れと労力を費やしたか計り知れません。
その100ページの大作がボツになっていく瞬間の気持ちを本人以外の人間に理解出来るでしょうか‥‥‥‥
ただ、私にとって以外なのは、ジョージ先生もリョウさん自身も意外と平静だった事です。 一人の人間の人生が変わってしまうかも知れないこの時に、二人の会話は、まるで日常会話の様にさりげなかったのです‥‥。
「 今日は駅前のラーメン屋で味噌ラーメンを食べました 」
「 うまくねぇだろ 」
「 え‥‥ は、はぁ‥‥ 」
みたいに‥‥。
次は私の番です‥‥
自分が生まれ変わった様な気分で修練した2年間の成果を‥‥ 自信作を‥‥ ジョージ先生に見せます‥‥。
「 どうだっ! 」と、いう気合を込めて‥‥
私は、34ページの原稿をナイフの様に先生の胸元に差し出します。
ジョージ先生は1ページ目を見た瞬間に‥‥
『 おみぃ~は暗ぇ 』
「その22」より‥‥
原稿が没になっても、もう一度前へ踏み出す男たち‥‥

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漫画家アシスタント物語 第4章
ジョージ秋山に弟子入り9年目・・・・テイクオフの時だ! 連続投稿、メジャー誌制覇! 男の野望と欲望の結末は・・・・!?
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