奥能登・町野の夏が始まる日 ~大川浜びらきの日に~ ②人と自然が出会う浜
隆起した浜に生まれた物語

この広々とした砂浜は、もともと当たり前にあった風景ではない。能登半島地震による隆起によって、倍以上の広さになった浜なのだ。
大きな自然の変化によって生まれた場所に、今年もたくさんの人が集まり、きれいになった砂浜で過ごす夏の一日を楽しんでいた。
ビーチバレー。
ビーチサッカー。
ビーチサンダル飛ばし。
綱引き。
ステージパフォーマンス。
夏の太陽が照りつけるなか、浜いっぱいに笑い声が広がっていた。
思えば、桜フェスもそうだが、この浜びらきも地震のあった年に始まった。
人は不思議なもので、どんな状況の中でも力を合わせ、楽しみを見つけ出し、新しい物語を紡いでいく。
そんな町野の人たちのたくましい生命力のようなものを、この日あらためて感じた。

浜を照らした炎

日が暮れる頃、浜には大きな炎が灯った。
奥能登豪雨で大川浜に流れ着いた丸太で組まれた櫓に火が入る。今年は昨年にも増して大きく立ち上る炎が、まるで空へ向かう狼煙(のろし)のようだった。
見上げれば細い三日月。そして星々が輝いていた。海風に吹かれながら夜空を眺めていると、自分もまた大きな自然の懐に抱かれているような心地よさを感じた。
昼間の賑わいとは異なる、静かで豊かな時間だった。
人と自然が出会う場所

大石先生のお話によると、この浜びらきは、能登半島地震によって目の前に広がった新しい砂浜を見て、
「せっかく自然が与えてくれた素晴らしい舞台を、さまざまに活用させてもらおう」
という想いから始まったのだという。
そして同時に、
「自然の中に人がひとときおじゃまして、楽しませてもらう」
という感覚を大切にしているとも話されていた。
地震によって生まれた新しい浜。
その変化をただ嘆くのではなく、新たな可能性として受け止め、この場所を育んできた地域の皆さんと全国から集まったボランティアの皆さんがいる。真夏の浜に人が集い、その活気が周囲へと広がっていく。
そして、
「この場所で楽しむ人たちの姿を見て、新しい発想や挑戦が生まれるきっかけになれば」
さらに、
「人は決して人だけで生きているのではなく、自然の中に身を置くことで、そのことを思い出せる場になれば」
そんな願いも込められているのだという。
大石先生は、少年のような眼差しで語っていた。

浜を吹き抜ける風。
波の音。
夕暮れの空。
高く立ち上る炎。
降ってくるような星空。
そして人々の笑顔。
私の目の前に広がっていたのは、長年この浜を見守り続けてきた地域の方々の営みと、そこに集う人々の想いが織りなす物語だった。

おわりに
外から訪れる私たちは、町野の歩みのほんの一場面に立ち会わせていただいているだけなのかもしれない。
それでも、この場所とのご縁をいただいた一人として、これからもできる形で関わっていきたいと思う。


来年はどんな風景が広がっているだろう。
またこの浜で、たくさんの笑顔に出会える日を楽しみにしている。

