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「賞がほしい、きたー!」と叫ぶ作家の生々しさに、お綺麗な文壇は吐き気でも催したか:第14回河合隼雄物語賞・戌井昭人『おにたろかっぱ』受賞に見る、嘘偽りのない「人間の欲」と物語の熱量

綺麗事ばかりの物語なんてクソ喰らえ。人間、欲をむき出しにして生きてなんぼだろ。


「賞がほしい、きたー!」と叫ぶ作家の生々しさに、お綺麗な文壇は吐き気でも催したか


https://www.chuko.co.jp/tanko/2025/09/005947.html

第14回河合隼雄物語賞・戌井昭人『おにたろかっぱ』受賞に見る、嘘偽りのない「人間の欲」と物語の熱量


本文


「人のこころを支える物語」なんて、美しいお題目を掲げた賞の壇上で、ここまで身も蓋もない本音をぶちまけた作家がいただろうか。


第14回河合隼雄物語賞を受賞した戌井昭人氏である。受賞作『おにたろかっぱ』は、3歳の息子と崖っぷちミュージシャンの父親が最後の巡業に出る姿を描いた作品だ。そこまではいい。胸を打つ親子の物語だ。だが、授賞式での戌井氏のコメントが最高に痺れた。

「下世話なくらい賞がほしい、ほしいと思っていたので、受賞の連絡をもらって『きたー!』と思いました」


おいおい、最高じゃないか。

昨今の文壇や出版界を見渡してみろよ。誰も彼もが「作品を通して読者の心に寄り添いたい」だの「社会の分断を埋めたい」だの、行儀のいい優等生発言ばかりでゲロが出そうだ。腹の底じゃ「賞金100万円よこせ」「重版出来させてくれ」とドロドロした欲を滾らせているくせに、カメラの前では聖人君子を気取ってみせる。そんな嘘くさいポーズばかりの業界で、戌井氏は自分の「欲」を隠そうともしない。


選考委員の松家仁之氏は「魂と呼ぶほかのないものが……飛び交っている」なんて洒落た言葉で評していたが、要するに人間の生々しい「体温」と「血の通った欲」がそこにあるからこそ、読者の心を揺さぶるんじゃないのか。自分の身近な人間を描き、下世話に賞を欲しがり、届いたら「きたー!」と叫ぶ。この人間臭さこそが、物語の本質だろう。


ちなみに今回、学芸賞の方は「該当作品なし」だったそうだ。高尚なインテリ様たちが小難しい顔をして「該当なし」とスカしている横で、泥臭く「きたー!」と無邪気に喜ぶ作家がいる。この鮮やかな対比には失笑するしかない。


気取った言葉で綺麗に着飾った作品なんて、何ひとつ心に響かない。下世話で何が悪い。泥を舐めてでも生きようとする人間の生々しさこそが、本当の意味で「人のこころを支える」のだと、瀬尾ユタカは痛快に思うのである。

〈了〉






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