残念な職員を守るのか、真面目な職員を守るのか―経営者に問われる覚悟
「何度注意しても変わらない職員がいるんです」
介護事業所の経営者や管理者から、こんな相談を受けることがあります。
利用者への馴れ馴れしい言葉遣い、繰り返される遅刻、周囲を傷つける言動。リーダーが注意しても、その場では「わかりました」と答えるだけ。しばらくすると、また元通りです。
そして最後には、「もう何を言っても無駄です」と諦めてしまう。
しかし、そこで諦めてしまって本当にいいのでしょうか。
経営者が守るべきなのは、問題を起こす職員ではありません。毎日きちんと出勤し、利用者に丁寧に接し、仲間と協力しながら懸命に働いている職員たちです。
真面目な職員ほど、実はよく見ています。
「あの人は何度遅刻しても何も言われない」
「利用者から苦情が出ても結局そのまま」
「ハラスメントをしても許される」
そんな状態が続けば、職場には少しずつ諦めが広がります。「きちんとやっている自分たちが馬鹿らしい」と感じ始めたとき、組織は静かに崩れ始めるのです。
だからこそ必要なのが、
「注意する」から「仕組みで改善を求める」への転換です。
まず口頭で指導する。それでも改善しなければ、注意書として文書に残し本人に手渡す。さらに同じ行為が続けば厳重注意、警告へと段階を進める。
いわば職場の「イエローカード」です。
大切なのは、怒鳴ったり、感情的に責めたりすることではありません。
「何が問題なのか」「何を改善してほしいのか」「改善されなければ次にどうなるのか」を冷静に、明確に伝えることです。
これは職員を追い込むための仕組みではありません。本人に変わる機会を与えるための仕組みです。
それでも改善が見られないのであれば、就業規則や法的な手続きを確認したうえで、配置転換や退職勧奨など次の対応を検討する必要も出てくるでしょう。
「人手不足だから辞められたら困る」
その気持ちはよくわかります。しかし、一人の問題行動を放置した結果、真面目な職員が三人、五人と辞めていくことの方が、経営にとってはるかに大きな損失です。
毅然とした指導とは、厳しさではありません。
「ここで働く人を守る」という経営者の覚悟なのです。
良い職場文化は、願っているだけでは生まれません。守るべき基準を決め、それを守り続ける。その積み重ねが、職員から「この職場なら安心して働ける」と思われる組織をつくっていくのです。
