全員を同じように扱う職場ほど、優秀な職員が離れていく理由
「頑張る職員ほど辞めていく職場」には、必ず理由があります。
介護事業所で職員個別面談を行うと、「できる人にばかり仕事が集まる」「動かない職員の分まで負担している」という声をよく耳にします。
経営者から見れば、「能力には個人差がある」「人手不足だから仕方がない」と感じるかもしれません。しかし、現場で起きているのは、単なる能力差ではありません。仕事に取り組む姿勢や責任感の違いが放置され、そのしわ寄せが真面目な職員に集中しているのです。
最も危険なのは、仕事を避ける職員が残り、組織を支えてきた職員が疲れ果てて辞めてしまうことです。人材不足を理由に問題のある職員へ配慮を重ねた結果、本当に失ってはいけない人材を失う。これは現場の問題ではなく、重大な経営課題です。
だからこそ、職員の善意や我慢に頼るのではなく、努力と成長が報われる仕組みをつくらなければなりません。
私は職員のキャリアを、高速道路の車線に例えています。新しい仕事に挑戦し、より大きな役割を担う人は追い越し車線。与えられた役割を着実に果たす人は走行車線。家庭事情や体調などにより、今はゆっくり進む人は登坂車線です。
どの車線を走るかに、単純な優劣はありません。人生には、速度を上げられる時期もあれば、ペースを落とす時期もあります。問題は、自分がどの車線を走っているのかが曖昧なまま、評価も処遇も変わらないことです。
一つの車線しかない職場では、全員が最も遅い速度に合わせることになります。すると、意欲のある人は前に進めず、「頑張っても意味がない」と感じ始めます。必要なのは、努力する人が評価され、挑戦したい人には次の役割が示され、ゆっくり進む人にも再出発の機会が用意される仕組みです。
追い越し車線を走る職員には、昇給や昇格、役割の拡大という道を示す。走行車線の職員には、期待する基準を伝え、安定した働きを正当に評価する。登坂車線の職員には、事情を確認しながら、次の目標や再出発の時期を話し合う必要があります。
すべての職員を同じように扱うことが、公平なのではありません。意欲、努力、責任、成果に応じて評価することこそ、本当の公平です。
評価制度、定期面談、キャリア段階、役割基準。人が育ち、定着する職場は、偶然には生まれません。経営者が道をつくり、職員が安心して走れる仕組みを整えることで、組織は初めて前へ進むのです。
