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化学メーカーの第一四半期決算分析【大手化学8社】

こんにちは、化学業界を解説するごりおです。

今回は、大手化学メーカー8社の決算について解説します。

トランプ関税をめぐる不確実性が後退するなか、金利動向や米国雇用統計など、一喜一憂させられる展開が続きますね。

そのようななか公表された化学メーカーの決算は、結論から言えばカオス
王者信越化学の不振から始まり、良し悪しが入り乱れる結果となりました。

さらに一部の企業では、早くも通期予想の修正について示唆されています。
一体何が起こっているのか、各社の決算を読み解いていきたいと思います。


大手化学メーカー8社の決算

これまでに公表された大手化学メーカー8社の決算をまとめたものがこちらです。

出所:各社決算短信より
三菱ケミカルグループと住友化学はコア営業利益

まず好調だったのは旭化成積水化学工業です。両社ともに売上高・営業利益で増収増益となり、特に積水化学は過去最高益を更新するなど、幸先の良いスタートを切りました。

次に、減収ながら増益を確保したのが住友化学日本ゼオン。中でも住友化学は、定期修繕や事業撤退の影響で売上高が二桁%減となったにもかかわらず、コア営業利益は約5倍に急伸。構造改革が功を奏し、収益効率の改善が数字に表れています。

一方、信越化学AGC三菱ケミカルグループ日東電工の4社は減収減益。特にAGCは通期見通しを下方修正しており、苦戦がうかがえます。

総じて今期は、企業ごとに明暗が分かれる滑り出し。そのため「業界全体としてどうなっているのか」は、ややつかみにくい印象です。

株式市場の反応も分かれる

実際に株価チャートを見てみると、市場の反応もまさにそんな印象です。
増収増益だった旭化成は株価が素直に上昇した一方、同じく増収増益だった積水化学は下落。逆に、減収減益だった日東電工は決算発表後にいったん下げたあと、上げに転じています。

やはり決算は数字だけではなく、その背景や文脈を読むことが重要ですね。
そこで今回は、この複雑に入り組んだ決算を理解するために、2つのポイントから整理していきたいと思います。

ポイント➀ 為替

まず一つ目のポイントは為替です。
これは各社に共通する“バッドイベント”で、1Qの事業環境に向かい風をもたらした大きな要因でした。

背景には、前年同期の160円近いバキバキの円安があります。そこから今期は相対的に円高へシフトし、海外売上の円換算は目減り。加えて輸出採算も悪化し、減益要因となりました。

ドル円の為替レート

具体的には、日東電工は約68億円信越化学は概算で100億円超が営業利益の下押し要因に。

出所:日東電工 決算説明資料

さらに住友化学は為替差損益の影響で純利益が赤字に転落しました。実力ベースでは黒字だったものの、数字の見た目としてはマイナスに映る決算になったわけです。

出所:住友化学 決算説明資料

ポイント② 事業環境

続いて、二つ目のポイントは事業環境
結論から言えば、まだら模様でした。

まず苦戦が目立ったのは石化製品です。
相変わらず中国メーカーの増産が重荷となり、低マージンが継続。1Qはナフサ安や合成樹脂の価格改定の時期ずれで交易条件こそ改善しましたが、在庫評価損益は悪化しました。

その結果、三菱ケミカルグループの石化事業は36億円の赤字住友化学の石化事業は55億円の赤字に。

出所:三菱ケミカルグループ 決算説明資料

一方で、回復途上にあるのが農薬とAIを除く半導体材料。農薬は流通在庫の解消が進み、半導体も回復基調ではあるものの、まだ完全復活には遠い状況です。

そして意外な好調分野がディスプレイ材料
中国の景気刺激策でパネルメーカーは高稼働を維持し、三菱ケミカルグループや住友化学などの光学材料は堅調でした。ただし、円高や価格下落の影響もあり、大幅な利益貢献には至らずという結果です。

明暗を分けたのは

以上をまとめると、化学メーカーの事業環境は回復の道半ば
全体的に起爆剤に欠ける状況で、足元では円高シフトが重荷となっている印象です。

そんな中で、明暗を分けたのは個別要因でした。

例えば増収増益だった積水化学は、住宅事業が好調。戸建て市況が弱いなかでも、高価格帯の住宅販売を伸ばし、棟単価を引き上げました。

出所:積水化学 決算説明資料

同じく営業増益を確保した旭化成は、ヘルスケア事業が好調。買収したCalliditas社の業績寄与や、医薬品の販売増加が業績を押し上げました。

ちなみに旭化成も住宅事業が堅調
化学業界の話をしているはずなのに、住宅事業が業績の牽引役というのは…なんとも複雑な気分になりますね。

今後の見通しは

ここまでは、各社の業績と全体感を考察してきました。
では、今後の見通しはどうでしょうか。

実は堅調な滑り出し

まず1Qの進捗率を見てみると、おおむね25%前後で推移。積水化学住友化学も中~下期に利益が偏るタイプであることを考えると、堅調な滑り出しと言えます。つまり、期初の通期予想に対しては想定の範囲内で進んでいるわけです。

出所:各社決算短信より

そもそも前期の1Qは、円安やナフサ高が強い追い風となり、実力以上に好業績に見えていた面がありました。そのため、今期の反動減はすでに織り込み済み。通期ベースで見れば、増益を掲げている企業が多い状況です。

見通しに変更はあるか

投資家として気になるのは、今後、業績が上振れするのか、それとも下振れするのかという点です。

結論から言うと、現時点では一進一退といった印象。

理由のひとつは、為替が想定より円安で推移していること。さらにトランプ関税も当初の懸念よりは穏やかな着地でした。為替や関税の影響を慎重に見積もっていた企業にとっては、プラス要因になり得ます。

一方で、ナフサ安による交易条件の改善や、好調だったディスプレイ市場は、下期には需要が一巡すると見られています。つまり、今期は上振れも下振れもあり得る、どちらに転んでもおかしくない展開なのです。そして実際に、通期予想も明暗が分かれ始めています。

通期予想を修正した企業

例えば日本ゼオンは、早くも通期予想を上方修正しました。要因は、円安進行ディスプレイ材料の堅調な需要。為替前提も140円から145円に引き上げています。

日本ゼオンの通期予想修正について

一方、AGC通期見通しを下方修正。こちらはバイオ医薬品の低迷塩ビ市況の下落が響きました。

AGCの通期予想修正について

中間決算で修正が予測される企業

そしてちょっと面白いのが旭化成住友化学です。1Q時点では通期予想の修正はせず、決算短信に**「第2四半期決算発表時に見直し予定」**と記載しています。

ここで気になるのは、上振れか下振れかという話。
旭化成・住友化学ともに、新たに公表した上期予想は強気なので、素直に考えれば通期も上振れ方向と見るのが自然です。

ただし、住友化学は要注意。同じタイミングで一過性損失の見直しも行うとしており、上振れた分だけ何かしら“膿出し”してくる可能性があります。
過去にあれだけ減損しておいて、まだ出すもんあるの?」とツッコミたくなりますが…ここは頭の片隅に置いておきたいところです。

まとめ

以上、大手化学メーカーを中心に決算を振り返りました。
総じて言えるのは、今期の化学業界は「反動からの踊り場」にあるということです。

前期は円安やナフサ高が追い風となり、好業績が目立ちましたが、今期は一転して苦戦する企業が多い印象。ただし、悪いながらも想定の範囲内であり、今後の状況次第では上方修正の可能性も残されています。

一方で、外部環境には要注意。
金利動向や為替、中国勢の攻勢、アメリカ市場の動きなど、複数の力学がせめぎ合う状況は続いています。

投資家としては、環境要因・企業の戦略・市場の期待値を丁寧に見極めながら、冷静に判断していきたいところです。


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