個人のハックが「組織の学び」に変わる時。私が社内勉強会の講師になった理由
1. 「業務時間中の勉強会」という高いハードル
これまでの連載で、手元のAIを活用した個人の業務効率化から、キーマンを巻き込んだ組織へのツール定着、そして異動を見据えた引き継ぎ(あるいは手放す勇気)についてお話ししてきました。
私が自身の業務範囲で行ってきたこれらの取り組みは、少しずつ社内でも知られるようになりました。しかし、「このノウハウを他の社員にも教えるための勉強会を、自分で開こう」と考えたことは一度もありませんでした。
なぜなら、ルールの厳しい大組織において「業務時間中に、担当業務以外の勉強会を開く(または参加する)」ということは、組織上非常にハードルが高いからです。それが組織のためになる内容であっても、「その時間は本当に業務と言えるのか?」「誰の許可を得て集まるのか?」という厳格な判断が求められます。 だからこそ、一介の中堅担当者である私が自発的に「AIの勉強会をやります!」と旗を振ることは、現実的ではないと諦めていました。
2. あの「キーマン」からの思いがけない依頼
そんなある日、思わぬところから声がかかりました。 「配車システム」の導入時に相談に乗ってくれた、あの管理部門のキーマンでした。
彼からの相談は、次のようなものでした。 「最近、若手社員から『デジタル分野の勉強会を開催してほしい』という要望が上がっている。私自身も上層部から業務改革を進めるよう求められていて、何か新しい取り組みができないかと考えていた。そこで、あの配車システムなど、あなたが今やっている工夫をみんなに教えてもらえないだろうか」
この依頼は、私にとって非常に画期的なものでした。 私個人の発案ではなく、社内のルールを所管する「管理部門の公式な発案」となったことで、業務時間中に勉強会を開催する大義名分が生まれ、社員も堂々と参加できるようになったのです。
3. 勉強会で伝えた「たった一つのこと」
こうして、私は講師的な立ち位置で、社内のデジタル勉強会に登壇することになりました。しかし、そこで私が語ったのは、高度なプログラミングの知識や、壮大なDXのビジョンではありません。
私が参加者の皆さんに一番伝えたかったのは、「まずは自分自身が、少しだけラクになればいい」ということです。
「最初から組織全体を変えようとしたり、完璧な全自動システムを作ろうとしたりしなくていい。M365やAIを使って、自分が毎日面倒だと思っている定型業務を『80点』でいいからラクにしてみる。そこから少しずつ始めていきましょう」
これは、私が非エンジニアとして泥臭く試行錯誤を続ける中で辿り着いた、等身大の実務の知恵です。自分を助けるための小さな工夫が、結果としてミスを防ぎ、心に余裕を生み、お客様や現場の社員へのより丁寧な対応へと繋がっていく。それこそが、最も確実な「業務改善」の第一歩だと信じています。
4. おわりに:評価されない効率化に悩むあなたへ
全5回にわたって、私なりの「お堅い職場でのAI・M365活用術」をお届けしてきました。
今、全国の職場で「効率化しても評価されないし、むしろ仕事が増えるだけだ」と諦め、激務の中で下を向いている事務職やバックオフィスの方がたくさんいると思います。 かつての私もそうでした。しかし、どうか「自分のための効率化」まで諦めないでください。
組織の評価を求めずとも、ほんの少しの知識とAIを味方につければ、あなたの手元の実務は確実にラクになり、張り詰めた心に「余裕」を取り戻すことができます。
その「少しラクになるためのやり方」を、私はこれからもこのnoteで発信し続けていきます。 私の発信する泥臭い「80点のノウハウ」が、どこかの職場で今日も遅くまでPCに向かっている誰かの助けになることを、心から願っています。
