【企画短編#noteでBL】vs栗ごはん
毎月恒例、BL祭りに今回も参加いたします。
なみさん、いつもありがとうございます!!
こちらは当初パンツ担当として書き始めたご新規CPです。
なんとかワンコは戻ってきたものの、クールビューティーとラブコメとオチは見つかりませんでした。
ただパンツ履き忘れてごはん食べて話しているだけ……!
でもせっかくだから投稿。
こちらもよろしくお願いいたします!
(1本目はこちら)
前夜祭(フライングパンツ&100字でパンツ)
せっかくなのでまとめてみました。
投稿日までの間も楽しかったなぁ(≧▽≦)
本編
※※BL要素を含みますので、苦手な方はご注意ください※※
【テーマ】3つのお題でBL(3,000~5,000字)
【お題】 秋の味覚・本当にあった怖い話・パンツはき忘れた
【タイトル】vs栗ごはん(スペース除き約4,030字)
「今日の日替わりなんでしょうね!?」
ウキウキとした声を聞きながら、隠しようのないため息が漏れる。
「先輩?」
見つめてくる瞳はキラキラと輝いて、秋空のように澄み切っていた。
何度目かわからないため息を吐きながら、俺は心のなかで呟く。
なんでこうなった。
遡ること2週間ほど前の朝。
俺はトイレ前の廊下で凍りついていた。
目の前には、しゅんと眉を下げた後輩。
「パンツ履き忘れちゃってーーー」
なんでそうなる?
端末の立ち上げ、メール確認、始業連絡、今日更新のデータ取得。
朝イチのタスクを終え、コーヒーでも、と廊下に出たところで行き合った後輩は、残機ゼロみたいな顔をしていた。
なんかあったか、と軽い気持ちで声をかけた結果、俺の残機も急減する。
「寝ぼけてて……」
いやそんなことある??
「どんな寝ぼけ方してんだよ……」
「えーでも僕の姉ちゃんブラ忘れて登校したことあるし、同じようなもんだと思うけど……」
そう……なのか?
「まぁいい。とにかく早く買ってこい」
「え?」
「いやパンツ。履いてないんだろ?コンビニで買ってこいよ」
いいんですか?!と瞳を輝かせる様に軽く目眩がする。
やめろ、俺の残機をこれ以上減らすな。
「いいに決まってるだろ、早く行け!」
「ありがとうございます!」
元気よくエレベーターにダッシュする後ろ姿を見ながら、犬みたいだなと思う。
大型の、人懐っこいやつ。
瞳がキラキラして、いつも楽しそうにしっぽ振ってて。
前世とかあったらあいつは絶対犬だな、と思いながら、俺は残機回復のため喫茶スペースに向かった。
それだけのはずだったのに。
「ほんと助かりました、もう一日どうしようって思ってて」
昼休み。
お互いの業務が落ち着いたところで、後輩は嬉しそうに話しかけてきた。
「いや気づいた時点でコンビニ一択だろ。落ち着けよ」
「先輩はさすがだなぁ」
「俺の話を聞いてないな?」
「あ、お昼一緒しましょ」
自由すぎる。
こういう時、仕方ないなと思わせるところがこいつの強みだ。
なんていうか……
「かわいげ……?」
「え?」
「なんでもない」
気に入った人間に纏わりついて、キラキラした瞳で、しっぽをパタパタさせて。こくんと首を傾げて見せれば、こっちはなぜだか拒否できない。
……なんだそれ、ズルいな?
むかつくからワンコって呼ぼう。
そう決めて、俺は「先輩、早くー」と呼ぶ声を追った。
「栗ごはんにしなかったんですか?今日から選べたんですよ!?」
社食のざわめきのなか、ひときわ異彩を放つ後輩の熱量。
「いやそれは知ってるけど……」
「知ってて白米にしたんですか?」
「え……うん……」
「なんで?!」
「そんな詰められること!?」
俺の言葉に身を引きながら、後輩はむぅ、と唇を尖らせている。
なんだ、その「納得してません」って表情は。
「……なに、栗ごはん好きなの?」
「大好きです、秋になるのが待ち遠しくて!」
「俺は好きじゃないの」
「なんで!?」
いや勢い。思わず深いため息が漏れる。
なぜ昼飯食いながら残機を減らさないといけないのか。今日は朝からいろいろおかしい。
てか、全部こいつのせいじゃね?
「なんで嫌いなんですか?」
人の気も知らず、やつはこくんと首を傾げる。
無駄にキラキラした瞳。くーん、と鳴く声が聞こえそうな。
ワンコめ。
「甘いだろ、栗って。甘いもんが白米に混ざるのは好きじゃない。栗は栗、米は米で食いたい」
栗の甘露煮とか栗羊羹とか、栗を使った菓子は好きだ。でもだからこそ、米に入れるよりそのまま栗として食べたい。
ワンコはへぇー、と気の抜けた声で返事をして、目を丸く見開いた。
「ほくほくして美味しいと思うのに……」
「人気あるのはわかる。選べるなら選ばないってだけで、俺も出されたら食べるし」
「さつまいもご飯は?」
「あー、同じだな。出されたら食べるけど、自分では選ばない。でもさつまいも単品は好き」
「え、じゃあポテサラのリンゴは?酢豚のパイナップルは?」
「それな!?」
古今東西血で血を洗う終わりなき戦いのひとつ、おかずに果物はありか問題。思わず反応したところで、はたと気づいた。
なんの話だ。
「待て待てそんなこといいから早く食えよ、栗ごはん冷めるだろ」
「えー」
「えーて。好物なんだろ、なんで不満げだ」
「だって先輩とこんな話するの初めてだから」
確かに。
そもそも俺はひとりメシ派だ。部のイベントでもない限り、誰かと食事に行くことはほぼない。
なのに、今日はパンツの流れで自然と誘いに乗ってしまった。結果、残機は減る一方だ。
くそ、パンツめ。
「先輩、いつも気づいたらいないから。今日はラッキーだったなぁ」
「いつも誘いたかったみたいな言い方だな」
「みたい、じゃなくて誘いたかったんです!ほんとファインプレー俺のパンツ。もはやファインパンツ」
白米が喉に詰まる。
「ちょ……やめろ、なんだファインパンツって!」
「……笑った」
「え?」
「先輩のそんな顔、初めて見た」
どこまでも明るく、晴れ渡った高い秋の空のように、後輩が笑う。
「僕、ずっと、先輩とこうやって話してみたかったんです」
なんでだよ、と思ったけれど、あまりに嬉しそうな顔に、言葉がうまく出てこなかった。
それ以来、俺はとても困っている。
「見て先輩!今日はきのこごはんですよ!」
「良かったな……」
「どうしようスペシャル定食にしようかな……先輩は?」
「かけそば」
「ウソでしょこんなに季節限定メニューがあるのに?!」
いつの間にかこいつとのランチがデフォになってしまった。
本当はひとりがいいのだが、満面の笑みで「ご飯行きましょ」と誘われると断れない。
くそ、ワンコめ。
「食欲ないんですか?」
別に、と流した俺の目の前に、ずいっと精悍な顔が迫る。
「ちかっ!?」
「僕、迷惑ですか?」
「は?」
「連日誘って、迷惑でしたか?」
犬なら耳をたたんでしっぽがへたっているだろう、しゅんとした表情。
「……迷惑、っていうか。他人とメシ食うの、慣れてないから疲れるだけ」
「じゃあ明日からも誘っていいですか?」
「疲れるんだが!?」
とりあえず訊いただけかよ、どんな発想だ。
「だって僕、先輩に憧れてたんだもん。もっと親しくなりたい」
「なんでだよ」
自慢じゃないが、他人に憧れてもらえるような要素はない。
しかもこいつとはチームが違うから、仕事で絡む機会もほとんどなかった。パンツの時みたいに、ヤバそうだったらスルーはしない、というくらいの関わり具合だ。
そんな俺と親しくなりたいという理由は、まったく思いつかなかった。
「僕が部に来た時、決算の数字ミスってたって事件あったの、覚えてます?」
「ああ……」
数年前、部を挙げて上を下への騒ぎになった大事件だ。担当チームだけでは処理し切れず、修正作業は部全体で対応することになった。
当然俺も対応したが、別に特別なことをやったわけではない。
「あの時、めっちゃピリピリしてたじゃないですか。今思えば当たり前なんですけど、僕来たばっかりだったから超怖くて。ミスったらこんなことになるんだ、どうしようやっていけるかな、って不安で」
決算時期はただでさえ殺気立っている。
しかもその時は過年度からの集計ミスが発覚し、原因究明と今期計数の修正、過年度計数の影響範囲調査とまさに修羅場の状況だった。
運悪くそのタイミングで担当チームに配属されてしまった彼は、上司にも先輩にも放置され、ぽつんとひとり、延々と規程類を読んでいたのだ。
捨てられた子犬のようなその姿を、ぼんやりと思い出す。
「何もできないし怖いし、チームの端で縮こまってた俺に、援軍で来てた先輩が声かけてくれて」
「……そうだっけ?」
「はい。『びっくりしただろうけど、怯えなくて大丈夫だ。ミスは修正すればいいし、作業はやってれば必ず終わる。こうやって誰かが絶対なんとかする。だから心配しないで、普通にやってればいいよ』って」
「ええ………」
まったく覚えていない。
「それ、本当に俺か?」
「そこから!?」
正直言ってピンと来ない。絶対に言っていない、とも思わないけれど。
あの時は、みんな修羅場すぎて意識が朦朧としていたから。今となっては、「ヤバかった」という感覚しかなかった。
それでも、殺気立つ部の片隅で、しょんぼりと縮こまっていた子犬のような姿は覚えている。
ああ可哀想に。怖いだろうな。そんなふうに、思ったことも。
「話しかけてくれたことも嬉しかったけど……先輩、当事者どころか担当チームでもない、ほんとにただの援軍だったじゃないですか。自分の仕事もやりながら他人のミスの処理させられてるのに、『大丈夫、誰かがなんとかする』って言えるの、すごいなって」
「ええ……ピュアすぎるだろ……」
実際に言葉にするかはともかく、たぶん誰もがそう思っている。
幸い人が死ぬような仕事ではないのだから、ミスに怯える必要はない。適当な仕事は論外だけれど。
「それだけで、チームも違う俺と親しくなりたいって思ってたわけ?」
「だって、本当に嬉しくて……」
後輩は身体を縮めて俯く。まるで叱られた大型犬みたいだ。ねぇダメだった?と、怒っている相手の様子を窺うような。
そんな姿にふと思う。
あ、こいつ、本当に俺に懐いてるんだ。
その時の、たったそれだけのやりとりで。
「……まじか」
眉を下げて、丸い瞳で。
困ったように、俺の様子を窺うように。
ねぇ、僕ダメだった?と言うようなその様子を見ていると、なんだか不意におかしくなった。
何年も前の、言った人間も覚えていないような一言を、ずっと大事に握りしめて。
たったそれだけで、話してみたい、親しくなりたいと思っていたなんて。
「とんだ忠犬だな」
「ちゅうけん?」
「……なんでもない」
きょとんとした後輩は、驚いたように目を見開いて、それからくしゃりと相好を崩した。
「へへ、先輩が笑ってる」
そんなことが嬉しいなんて。
やっぱり、とんだ忠犬だ。
……別に、可愛いなんて思っちゃいないが。
昼食くらい、付き合ってやってもいいかもしれない。
あとがき
オチがない!!!
栗の甘露煮食べたい。
秋の味覚、と聞いて真っ先に浮かんだのが栗ごはんでした。
美味しいものがいっぱいの秋、皆さまの作品は何を食べてる(?)のかなー。
楽しみです♪
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