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【企画SS#片想い文芸部】色(あお)

(約2,000字)

「アオハルって言葉自体、結構新しいんですよね」
「そうだっけ」
「昔はふつうに、青春って言いませんでした?」
「あーーー。言わなくなったかも、青春。でも間宮さんはアオハル世代でしょ?」
「まぁ、時期と言葉が一致していたという意味では世代……なんですかね。でも香山さんも、そんなに年変わらないですよね?」
 わたしの問いかけに、上司はいやいや、と眉を下げる。
「みっつ違ったら新世代、それ以上なら宇宙人だよ。だから時々びっくりする、間宮さんと話してると」
「え」
「全然感覚違うもん。あれ、俺引かれてる?とかふつうに心配」
「それは絶対嘘ですよね?」
 またそうやって人をからかって。
 悪い大人はこれだから、と思わず睨むと、上司はおかしそうに笑って言った。
「ほら、その表情かお。俺の感覚では、そんなあからさまに上司を睨んだりしない」
 ……悪い大人め。

「……お邪魔ですか?」
 にやにやする上司を睨んでいると、背後から静かな声が降ってきた。目の前の上司が丸く目を見開く。
 振り返るまでもない、声。
 小さく跳ねた心臓を、息を吐き出して宥める。
「間宮さんに、データの保存場所だけ聞きたいんですが」
「全然どうぞ、雑談ですから。ね?」
 にっこり笑って答える上司に、木戸さんはこくんと首を傾げた。雑談、と小さく呟いている。
「何やらピリピリしていたような」
「それは間宮さんが私にひどいことを言うからです。嘘つきって」
「そんなことは言ってませんが!?」
「ほぼ言ってた。めっちゃ睨んで」
「睨ん……では、いましたけどっ」
 分が悪い。
 むぅぅ、と唸るわたしに、上司は堪えきれないと言うように吹き出す。ほんと面白い、と呟きながら。
「そうやってからかうから怒ってるんです!」
「あはは、認めた」
「香山さんっ!」

 こうなったら無視に限ると、わたしは木戸さんに向き直った。隣では香山さんがまだ肩を震わせているけれど、気にしたら負けだ。
 悪い大人め。
「……楽しそう、ですね」
「どこがですか。えっと、ご入用のデータは」
 この人が欲しがりそうなデータ、と心当たりのフォルダを開いていると、木戸さんがパソコンを覗き込みながら静かな声で言った。
「何の話だったんですか?」
「何の……というほどのことでは。このデータで良かったですか?」
「あ、これの抽出生データをお願いします。……香山さんが嘘つきというのは?」
「嘘つきと言ったわけでは……正確には、香山さんが言ったことに対して『それは嘘ですよね?』と……はい、お送りしました」
「ありがとうございます」
 そのまま、木戸さんはじっとパソコンを見つめている。
 他にも必要なものがあるのだろうか。声をかけようとしたところで、隣から笑いを含んだ声がかかった。

「アオハルって言葉が流行り出した頃、間宮さんはまさにアオハル中だったんですって」
「え?」
 木戸さんがぱっちりと目を見開く。その無防備な顔を眺めて、香山さんは悪い笑顔で続けた。
「雑談の内容です。我々ってその頃、もう中高生じゃないじゃないですか。世代が違うから、感覚の違いで間宮さんに引かれてないか心配になる、って言ったら嘘つき呼ばわりです。ひどいでしょ?」
「……なるほど……?」
「いや伝わらないですよね?!」
 明らかに反応に困っている木戸さんに対して、香山さんは構わずにっこりと笑う。
 なんだこの会話。
 どういう状況なんだ。
「気になるでしょ、木戸さんも。間宮さんのこと」
「え?」
「え!?」
 木戸さんとわたしの声が重なる。
 なんだその言葉。戸惑うふたりに、香山さんは不思議そうに瞬きをした。
「あれ。気になりませんか?私だけかな」
「香山さん?何の話……」
 何って、と首を傾げて、香山さんはやわらかな笑顔で続けた。
 悪い大人の、顔。
「感覚が違うから、思わぬところで引かれてないかな、って話だけど」
 ねぇ、木戸さん?と、上目遣いで微笑みながら。

 なんだこれは。
 なんでこんなに、悪い笑顔をしているんだこの人は。
 こんなのまるで。

 思いついた言葉に自分で動揺して、頬がカッと熱くなる。
 そんなわたしの顔に、ちらりと香山さんの視線が滑った。

「木戸さんも気になってるでしょ?」
 なんだこれは。
 この言葉は。

 どうしてわたしには、この言葉が、違う意味に聞こえるんだろう?


「そうですね」

 なんでこんなことに、と混乱する頭に、ふわりと静かな声が届く。
 目の前で、香山さんが一瞬、すっと真顔になった。

「気になりますね、とても」
 香山さんと同じですね。

 隣に立つ木戸さんの顔が見られない。
 その言葉を都合良く受け取りたい自分の心を、どう抑えればいいかわからない。

 ふーん、と呟く香山さんの悪い笑顔。
 こんなの、まるで。
 いやまさか。

「……なんか、アオハルみたいですね」
 呟く声は笑っている。
 そうですね、と答える声は。


 どういう意味だ。


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こちらの企画に参加させていただきます↓
よろしくお願いいたします。
#片想い文芸部
#色

これは……急展開なのでは???
ついに男子ズの直接対決!?(´∀`*)ウフフ
間宮さん、どうするんでしょうね。

前回のこの人たち↓
白黒つけたくない、って思ってたのにね……

これまでの話はこちらからどうぞ☆
TALESでも公開してます!このシリーズだけならそっちのほうが読みやすいかも。
ぜひぜひ覗いてやってください(*´∀`*)

いつも楽しく参加させていただいてます、
ありがとうございます!


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