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【小説】『人生ラーメン』| 第1話 人生ラーメン、ちっちゃいおっちゃん

 20代後半の頃だっただろうか。記憶も曖昧になっているが、カレー焼き飯を食べたら、やたらとリアルに思い出す記憶がある。

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 大阪の旭区という町に私が一人暮らしをしていた頃、外食が多いというより、ランチや夜飯を気軽に食べられる店を探していた。その中でも、特別「カレー焼き飯」が好きな私は、近所にある中華料理店を軒並み回って注文した時期だったように思う。

「人生ラーメン」と書かれた白色の布地に赤字の古びた暖簾。

少し入りにくさがあったが、二十代後半の勢いで格子戸を開けると、中から「いらっしゃい」と元気な声が聞こえた。

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 テーブル席が2つと、カウンターが8席ほど。20人もいれば満席になるようなこぢんまりした店。それが人生ラーメン。店主のおっちゃんはちっちゃくて、いかにも頑固を身体中で表現したような見た目。最初に行ったときは、喋りかけるのも憚られるような雰囲気に、恐る恐る、

「カレー焼き飯、できますか? 」

「カレー焼き飯? でけるよ」

最初に交わした言葉はこれだけだった。

ラーメン屋のあの独特な匂いの中、大量の油を敷いて卵を溶いて入れ、野菜やハムを入れ、軽く炒めた後でご飯を入れる。それから調味料を目分量でお玉を使って入れていく。さらに、炒めて、炒めて、カレー粉を入れる。S&Bのカレー粉。手際よく中華鍋を振る。  

ジュー、ガッシャガッシャガッシャガッシャ
ジュー、ガッシャガッシャガッシャガッシャ 
カンカンカン
と中華料理屋さん、独特のリズムで焼かれていく。

本当におっちゃんは小さくて、一見鍋とのバランスがアンバランスに見え、鍋に振られてる感じがする。しかし、あっという間にカレー焼き飯が出来上がった。

中華スープをすくう、スプーンみたいな、レンゲみたいなもので口に入れる。食感はパラパラ。
後からカレーの刺激が来て、鼻に匂いが抜ける。そして、数回口に運ぶと辛さが舌を刺す。
ほぼ私の理想に近い味のカレー焼き飯。

食べたら、また来ようと決めて、店を出るため、

「ごちそうさまでした。美味しかったです」

というと、

「あいよ、えっと……600円」

と、言われた。
まず、メニューにはない。
焼きそば、炒飯、ラーメン、餃子などは古い紙に書いて貼ってあるが、そもそもカレー焼き飯はメニューになかった。良心的な値段に私は安心した。

 それからは2日と空けずにカレー焼き飯を食べに行った。仕事柄遅くなるので、夜10時頃に行くもギリギリ開いている。家から歩いて行けるので、車を置いて人生ラーメンへと向かう。

「すいません。まだ、いけますか?」

「でけるよ。何しよか?」

「カレー焼き飯、……と、生中」

「あいよ、生中ね」

と、すぐにサーバーで生を入れて出してくれる。それから、おもむろに中華鍋に油を入れ、あっという間にカレー焼き飯が出てくる。私はカウンター席の1番入口側に座るが、奥の方にテレビが置いてあって、それを眺めながら、ニュースを見ながら食べる。それが、週に2回になったり、3回になったりしていった。

これが、私と人生ラーメンとの出会い。
ちっちゃいおっちゃんとの出会いだった。


👉第2話 「ハンバーグとカレー焼き飯」

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