【その2】ギター・マガジン・レイドバック Vol.17の「特集ギタータッグ」に、挑戦状を叩きつける!! というシリーズです。
前回は、ギター誌「ギター・マガジン・レイドバック Vol.17」の特集「70年代世界最強ギター・タッグ決定リーグ戦」の記事に、「その記事ちょっと待ったぁ!!」「これは違うんじゃない??」と、気になった記事に対して、間違いを指摘させていただき、「埋もれてしまった、見落とされた、ロック以前のツインギターの歴史」を紹介しましたが。
今回は、その続編にあたる「挑戦状を叩きつける!! というシリーズ」(笑)です。とは言っても、もちろん批判でもなく、戦うわけではありません。
ギタマガさんがロックのギタータッグなら、こちらはロック以外で勝負していきたいということです。
つまり、
埋もれてしまった、見落とされた、
ロック以外のツインギターの名演やアルバムを紹介をしていきたいと思います。
まずはこちら!
1966年の録音とは思えない衝撃作

少年時代のパコデルシアが憧れたフラメンコギター界、空前絶後の技巧派ギタリストであり、「歴史上最も偉大なギタリスト100」の第97位に選出された、サビーカス。そして、あのマイルスデイビスに初めて抜擢されたギタリスト、ジョーベック。その2人のギタリストによる異種格闘技セッションとも言える共演アルバム1970年発表作品。アレンジとコンダクターはジョーベックが担当。バックは、ベースにトニーレヴィン、ドラムはドナルドマクドナルド、ピアノにウォーレンバーンハートという意表を付くような豪華な面子。まさにフラメンコにジャズロックを融合したような衝撃的内容だ。
実は、発表は1970年だが、録音は、なんと1966年。...ということは、ジミヘンがデビューする1年前であり、ツェッペリンがデビューする2年前、マイルスの「In A Silent Way」の3年前、マクラフリンの1stの3年前、ラリーコリエルの1stの3年前、 ザッパの「Freak Out!」と同年。とは言っても「Freak Out!」と聴き比べても、その10年先を行ってるかのようなサウンドに驚かされる。しかし、1966年録音でありながら、1970年に発表するまで、なぜ4年ものブランクがあったのだろう?レコード会社側もこのアルバムの良さがまだ理解できなかったのか?、まだハードロックやジャズロック、ましてやクロスオーバーという言葉すら生まれていない時代だったからか?、まだ時代が追いつかず早過ぎたからか?...不思議でしかない。
マイルスが当時、なぜジョーベックを起用したのかイマイチ疑問に思ってた人も、このアルバムを聴けば納得だろう。フラメンコとジャズロックの融合というだけでは収まらない、まさにギターアンサンブルの革命的な内容と言っても過言ではない、まさに「埋もれてしまった、見落とされた、ロック以外のツインギター」を象徴する名作である。
まだ聴いたことがない人は、是非ともアルバムをフルで聴いていただきたい。度肝を抜かれること間違いなしでしょう。
この時代のファーストコールギタリスト

ギター好きが選ぶ「歴史上最も偉大なギタリスト・ランキング100」の第11位に選出された、現代ジャズギターの父こと、ジムホール。
本作は、1stアルバムから、なんと12年ぶりに録音された単独リーダーとなる2ndアルバム1969年作品。なぜ12年もの間が空いたかというと、前前回の「レココレさんの記事その3」にも記載した通り、60年代のジムホールといえばビルエバンスやソニーロリンズなど含め(今で言うファーストコールギタリストと言える人気ギタリストゆえ)共演作が非常に多かったことがその理由の一つだろう。さて内容の方は、ギター、ベース、ドラムというトリオ編成だが、ここでのジムホールはギターによる多重録音を試みている。バッキングはもちろん、ギターソロにおいても、2つの異なるアドリブを同時進行させるという、斬新なギターアンサンブルが聴ける。
チャレンジ精神なくしてギター音楽の進化はない

ジョンマクラフリン然り、ラリーコリエル然り、彼らのように、常にジャンルを超えた異種格闘技セッションを繰り返したことで、クロスオーバーやフュージョンという、新しいジャズを生み出してきた。かつて、ある大物ジャズメンが「ジャズにおける唯一の伝統は、常に新しいものを取り入れて進化し続けてきたこと」と言っていたように、まさに、彼らがその伝統を守ってきた。ある意味、チャレンジ精神なくして、ジャズの進化はない、ギターの進化もない、とも言えるだろうか。
本作は、その後のジャズのメインストリームであるクロスオーバーやフュージョン時代、そしてスーパーギタートリオを筆頭とするアコギブームの先駆けとも言える、ラリーコリエルのソロ3rdアルバムにあたる「Vanguard」レーベルに残した1970年作品。ジョンマクラフリンとのギターバトルはギターファン必聴だ。ロックギタリストにも多大な影響を与えた衝撃的名作。
ポリリズムこそが「グルーヴの正体」である

もちろんジャズの世界だけではなく、ソウルやファンクの世界にも、ツインギターの名演はたくさん残されている。本作は、ファンクの帝王ジェームスブラウンの1972年発表作品。ギターには、ハーロンチーズマーティンとロバートリーコールマンが参加。一人のギタリストがリフを弾き、もう一人のギタリストがカッティングをする、そして更にベースやドラムが異なるリズムパターンを同時進行させることで、最高のグルーヴが生まれる。これが、いわゆるポリリズムとも呼ばれ、様々なフレーズの組み合わせによる化学反応によって絶妙なノリが生まれる。このポリリズムこそが「グルーヴの元」すなわち「ノリの正体」であり、ギターアンサンブルの進化の一要素とも言える。
カントリー界もツインギターの宝庫

そしてカントリーの世界も、ツインギターやギターアンサンブルの宝庫なのです。我らがギターの神様、チェットアトキンスと、あのエリックジョンソンも憧れたギタリスト、ジェリーリードによる共演1972年作品。全曲ギターインスト集。もちろんギャロッピングやチキンピッキングの最高峰である2人の共演ならではの指弾きによるテクニックも満載で、一人がソロやテーマを演奏してる時でも、バッキングによる指弾きテクニックも聴き逃せない。2人の速弾き合戦から、リラックスした演奏まで、ギターの楽しさが伝わってくる名演が満載。この2人の双頭リーダーアルバムとしては本作を含め3作品ある。他にもチェットアトキンスは、様々な名手とのギター共演盤を数多く残していて、その全てがギター名演の宝庫と言えるので、聴いたことない人は是非そちらも推薦したい。
まるでエレキを弾くコルトレーン

ギター好きが選ぶ「歴史上最も偉大なギタリスト・ランキング100」の第20位に選出され、あのマイルスデイビスの片腕としてジャズの歴史を変えた、ジョンマクラフリン。そして、そのマイルスの信者であり、コルトレーン信者でもあるギタリストのサンタナ。この偉大なギタリスト2人よる双頭リーダーアルバム1973年作品。当時インドの宗教家シュリチンモイに弟子入りしたサンタナとマクラフリンが、同じくインド音楽に傾倒していた故ジョンコルトレーンへ捧げた一枚。そのコルトレーンの名曲カバー「A Love Supreme」や「Naima」など収録。2人のギタリストによる共演は、まるでコルトレーンがエレキに持ちかえ、異父兄弟と共演を果たした神秘の音洪水のようだ。
かつてマイルスが目指したポリリズムの完成形

ピアニスト、ハービーハンコックの1975年発表作品。バックには、スティービーワンダー、ウェインショーター、ポールジャクソン、ベニーモウピン、アーニーワッツ、ハーヴィーメイソン等、錚々たるメンツに加え、ギターには、ワーワーワトソン、デヴィッドTウォーカー、そしてファンカデリックのブラックバードことドウェインマックナイトが参加。
ギターファンにとって注目すべきは、なんと言ってもワーワーワトソンの存在で、本作では6曲中4曲を作曲。特に「Hang Up Your Hang Ups」のギターリフがヤバすぎる。右と左に最初はユニゾンで、その後に別のフレーズに変わり、並行して中央にカッティングが入る。そこにベース、ドラム、ハービーのエレピが混ぜ合わさり、最高潮に達し、凄まじいグルーヴを生み出している。これこそが、マイルスが70年初頭に目指したポリリズムの完成形なのだろう。
常識を覆す空間を操る浮遊系ツインギター

ギター好きが選ぶ「歴史上最も偉大なギタリスト・ランキング100」の第76位に選出された、ジョンアバークロンビー。同じく第64位に選出された、アコギジャズの新時代を切り開いた革命児、ラルフタウナーというECM2大ギタリストによる共演。
ラルフタウナーはナイロン弦のガットギターとスチール12弦ギターを使用し、ジョンアバークロンビーはエレキ、アコギ、マンドリンを使い分けている。それまでギターなどのコード楽器は、空間を埋めることが仕事のような傾向にあったけど、その常識を覆すような、タウナーのアコギの生の響きとアバークロンビーのエフェクトの効いたエレキの深い音色は、ECM特有のリバーヴの効いた録音も相まって、幻想的かつ芸術的音響空間を生み出している。まさに、この時代を象徴する浮遊系ジャズの先駆的ギターアルバムだ。
2人の「陽キャ」ギタリストによる共演

かつてジャズ界のヴァーチュオーソ、ジョーパスとデュオ共演を果たした、圧倒的な速弾きテクニックの持ち主であるカントリー界のヴァーチュオーソこと、ロイクラーク。そしてアメリカはルイジアナ州出身のブルースギターの名手であり、歌はもちろん、ヴァイオリンやハーモニカまでこなすマルチ奏者でもあるクラレンスゲイトマウスブラウン。ブルースから、ケイジャン、カントリー&ウェスタン、ジャズまで、幅広い音楽性と幅広い演奏テクニックの持ち主。
本作は、その2人よる夢の共演アルバム。「MCA」レーベルに残した1979年作品。まさに2人の「陽キャ」ギタリストによるツインギターはこうなる、という答えの見本のようなギター演奏だ。
錯覚による究極のギターアンサンブル

現代音楽の大家スティーヴライヒの1989年作品。パットメセニーがギターで参加したミニマルミュージックの傑作。3つの楽章で構成されていて、10本のギターと2本のベースを予め多重録音したテープを再生しながら、パットメセニーがリアルタイムで弾くという演奏方法。異なる反復を繰り返しながら、微妙なズレを生じることで徐々に変化をもたらし、いつの間にかトランス状態に陥り、ドラマティックな世界観が生まれるという、ある意味、錯覚による音楽芸術とも言えるし、これぞ究極のギターアンサンブルとも言えるだろうか。
いかがでしたでしょうか。
ロックのギタータッグと戦っても、負ける気がしません(笑)
それはともかく、
いかにロック以外のギター音楽が認知されていないか、埋もれたまま、見落とされてきたか、おわかりいただけたでしょうか。
改めて気づいたことは、「挑戦無くして進化なし」ということ。挑戦する姿勢や、攻める姿勢がなければ、音楽の進化もなし、ギターの進化もなし、ということですね。
そして今回一番、言いたかったことは、ギター音楽はロックだけのものではない、ということ。ロック以外にも、隠れた名盤名演が山ほど眠ってるということです。
だからこそ「埋もれてしまった、見落とされた、ロック以外のギターの名演やギター名盤を、これからも紹介し続けなければと、改めて強く感じました。
ご覧いただき、ありがとうございました!!
