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《オリジナル盤探究記》─Jeff Beck『Blow By Blow』 【切り抜き】

※本連載は、一枚のレコードの全体像から印象的な場面を切り出して紹介する【切り抜き】版です。

今回は、ギター好きが選ぶ「歴史上最も偉大なギタリスト」ランキングの第1位に選ばれたジェフベック。そして「史上最高のギター名盤」ランキングでも第1位に選ばれたアルバム「Blow By Blow」。

そのUKオリジナル盤「Epic / S EPC 69117」について深掘りしていきたいと思います。

※専門用語がわからない場合は『レコード用語集』を参照ください。



存在しないはずのタイトルが刻まれたラベルの謎

1975年の初回プレスは、当時のエピックの標準である「イエローラベル」です。最大の注目点は、A面1曲目の表記です。本来は「You Know What I Mean」となるべき箇所が、「It Doesn't Really Matter」と誤記されています。

UKオリジナル 初版ラベル

ここで注目すべきは、A面1曲目のタイトルです。本来なら「You Know What I Mean」と表記されるべき場所が、なんと「It Doesn't Really Matter」となっています。驚くべきことに、この誤植は一度きりのミスではなく、1970年代後半のリプレス盤、さらには1990年頃のリイシュー盤に至るまで、イギリス盤では修正されることなく伝統のように引き継がれました。

こちらはUKリイシュー盤
こちらはUS盤



ジャケットから消えた1曲目の真実

さらに、イギリスの初期のスリーブ(ジャケット)では、裏面の曲目リストの1番上が「空白」になっており、タイトルすら印字されていません。ラベルを見れば間違った曲名があり、ジャケットを見れば何も書いていないという、世界的に見ても極めて稀な仕様となっています。

タイトルすら印字されていないその場所は、まるでそこに曲が存在しないかのような、あるいは直前まで曲が決まらなかったかのような違和感を放っています。ラベルを見れば全く別のタイトルが刻まれ、ジャケットを見れば名前すら与えられていない。この世界的に見ても極めて稀で不完全な仕様は、単なる印刷ミスという言葉では片付けられない、まるで「何か」を物語ってるようです。これもまたアナログ時代ならではの「愛すべき混乱」の産物と言えるでしょう。

UKオリジナルのジャケット裏の曲目リスト
こちらはUS盤のジャケット裏の曲目リスト



「It Doesn't Really Matter」は実在したのか?

この「It Doesn't Really Matter」を日本語に直訳すると「大したことじゃないよ」とか「どうでもいいよ」です。これは単なる事務的なミスなのか、それとも幻の未発表曲への手がかりなのでしょうか。

前回取り上げた『Wired』の際も同様の混乱が見られましたが、修正が間に合わないほど早く世に送り出したかったがゆえの失策なのか。あるいは、ジェフ自身が音楽以外のことには無頓着な性格だったせいなのか。

有力なのは、アルバム完成直前までタイトルが未定で、ジェフがスタッフの問いかけに「そんなのどうでもいいよ(It Doesn't Really Matter)」と答えた仮タイトルが、そのまま工場のプレス指示書に書き込まれてしまったというアナログ時代ならではの愛すべき説です。しかし、当時のセッションでは、後の『Wired』に繋がるようなアウトテイクも録音されていました。もしかすると、「You Know What I Mean」の原型となった別テイクの仮題がそれだったのかもしれない……という想像も掻き立てられます。

とはいえ、見方を変えれば、締切日のギリギリまでジェフ自身がギタープレイやアレンジに関して試行錯誤を繰り返していたからではないだろうか。彼は死ぬまで進化の歩みを止めなかった稀有なギタリストです。「まだこうしたい」「まだ何かできる」と、常に現状に満足せず、より高みを目指して努力し続ける底知れない向上心。その常に更新され続けるスタイルが、結果として事務手続きを追い越してしまった。そう考えると、この誤植こそが、発売直前まで彼が理想の音を求めて格闘し続けた「試行錯誤の証」という見方もできるのかもしれませんね。




刻印やラベルの詳細については、また他の回で説明できたらと思います。

今後も《オリジナル盤探究記》として、さまざまなレコードのオリジナル盤について深掘りしていきたいと考えています。ただ、一枚のレコードの全体像を投稿しようとすると、かなりの長編になってしまいます。そこで今回のように【切り抜き】という形で、要所を端折りつつ部分的に掲載していけたらと思っています。

そんな少しマニアックでディープなレコードの世界ですが、今後ともゆるく楽しんでいただければ幸いです。
ご覧いただきありがとうございました!!

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