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ギター・マガジン・レイドバック Vol.17の「特集」に物申す!! 「その記事ちょっと待ったぁ!!」という喝シリーズです。

ギター誌「ギター・マガジン・レイドバック Vol.17」の特集「70年代世界最強ギター・タッグ決定リーグ戦」の記事を読み進んでいく中で、「その記事ちょっと待ったぁ!!」「これは違うんじゃない??」と、気になった記事があったので、少し記事を引用させていただき、間違いを指摘していきたいと思います。

とは言っても、少年時代からの愛読書であるギタマガさんには常々お世話になっており、いつもユニークな企画に感動をいただいて、勉強になりっぱなしなので、あくまで愛があるからこその指摘ですので、予めご理解ください。


…ということで、さっそく本題に入ります。

20ページの「2本の個性が起こす化学反応 ー ツインギターの4スタイル」のところで、以下のような記事がありました。

では、この機会にツインギターという形態について考察してみよう。
ロック以前のジャズの世界などにおいて、ひとつのバンドにギタリストが2人いることは、まずなかった。音がぶつかることを嫌うジャズでは、ピアノとギターでさえ微妙な関係なのに、同じギターが2人などありえないのだ。あるとすれば、超絶ソリスト2人の戦略的なコラボレーションであろうか。

ギター・マガジン・レイドバック Vol.17 から引用

そんなことありません。


まず、

ひとつのバンドにギタリストが2人いることは、まずなかった。

ギター・マガジン・レイドバック Vol.17 から引用

…という点ですが、そもそもジャズでは「バンド」という言い方はしませんが、カルテットとかクインテットとか、何人編成などと呼ばれてはいるものの、ジャズの歴史において、一つのグループの中に2人のギタリストがいることは決して珍しくはありません。

例えば、1930年代からジャンゴラインハルト率いるフランスホットクラブ五重奏団には、常にギタリストが2〜3人いました。他にもたくさんあります。そのもっと遥か前からツインギターは存在していたのです。


その次に、

あるとすれば、超絶ソリスト2人の戦略的なコラボレーションであろうか。

ギター・マガジン・レイドバック Vol.17 から引用

これも、ちょっと違っていて。ジャズの世界ではもちろんですが、遥か昔からクラシックギターの世界でも、ハーモニーだったり、対位法やカノンだったり、コンビネーションを駆使したギターアンサンブルも、実はロック以前にたくさん存在していたのです。

あと引っかかったのは、どうしても、いつもジャズやクラシックを語るときに、テクニック至上主義みたいな言い方をされることも多々あるけど、今回のこの言葉の中には、そのニュアンスを少なからず感じてしまいました。もちろん、超絶であることが悪い、という意味ではないにしても。どうしても技術や理論ばかりに耳がいってしまいがちだが、しっかりと本質を見極めれば、超絶である前に、質の高いアンサンブルが土台にあってこその技術であることも、改めて知っていただきたい。

なぜ今回このような指摘をしたかというと、それは、いつもこの手の記事や特集を見ていると、どうしてもロック目線であって、なぜかジャズやクラシック音楽が置き去りにされてる感が否めない。まるでジャズやクラシックがなかったかのような語り口で始まってしまう。ロックありきでギター音楽が語られてしまう「もどかしさ」がいつもあるのです。
それは以前の「歴史上最も偉大なギタリスト・ランキング100」や「史上最高のギター名盤ランキング100」での記事の中でも散々書いた通り、アメリカの某RS誌のランキングにしても、日本の某雑誌のランキングにしても、某Youtuberのランキングにしても、どうしてもロックが中心のランキングばかりで、総合的なランキングが見当たらないこと。これと全く同じ原理であり、全く同じ仕組みだと言わざるをえません。


もっと広い視野で、ギター音楽の歴史を語るべきだろう、と言いたいのです。
あたかもロックだけがギター音楽の歴史を作ってきたかのような話で完結してしまう。その偏った歴史を少しでも正したい、というよりも、少しでも隠れて埋もれてしまっているギター史を知ってほしい、というのが一番の思いなのです。




そこで今回は、

埋もれてしまった、見落とされた、ロック以前のツインギターの歴史を紹介していきたいと思います。



クラシックギターの世界では19世紀まで遡ります。いや、もっと古いものはあるにせよ、まずは代表的なものを取り上げていきたいと思います。

ギター奏者で作曲家でもあるフェルナンドソル(1778-1839)が、1825年にアグアド(g)と演奏するためにギター二重奏曲を作曲している。
1833年頃には、マウロジュリアーニ(1781-1829)が、2つのギターのための作品集を作曲している。
この2人は、クラシックギター音楽史の作曲家の中でも、ギターデュオ(二重奏)作曲の大家と言って良い存在だ。いずれもハモりや対位法的なハーモニーなどコンビネーションを駆使した斬新なアンサンブルによるギターデュオ曲であることは、決定的な事実である。

20世紀に入ってからは、1950年代に、イダプレスティアレクサンドルラゴヤによるギターデュオの名録音が残されている。
そしてクラシックギターで最も有名なデュオといえば、「ギター好きが選ぶ "後世に残したい史上最高のギター名盤" ランキング100」の第69位にも選出された、ジュリアンブリームジョンウィリアムスという現代ギターの巨匠にして2大スターによる夢の共演がある。






ジャズの世界では、(と言っても、まだジャズやブルースなどのジャンル自体が確立されてない時代だが…)あのジャンゴラインハルトにも多大な影響を与え、1920年代に、ギターをソロ楽器として、バンドやオーケストラの一部として、ボーカリストの伴奏として、そしてギターやヴァイオリンとのデュオ演奏も試みていた、ジャズギターの開祖、エディラング。そして、あのチャーリークリスチャンに影響を与え、ロバートジョンソンを虜にした、ブルースとジャズを股に掛けたニューオーリンズ出身の天才黒人ギタリスト、ロニージョンソン
この2人の天才ギタリストが出会った夢の共演、奇跡のギターデュオとも言える録音を1928年に残している。ここでは、ラグタイムのリズムに乗って、1人がソロパートを弾き、もう一人はリズムギターを弾くのだが、そのリズムギターは、フレディグリーンに代表されるような4つ打ちのコード弾きだけではなく、ベースラインやリズムに工夫を凝らしたユニークかつテクニカルなバッキングギターが聴ける。

Eddie Lang & Lonnie Johnson / Blue Guitars


1932年にはそのエディラングカールクレスとのギターデュオを、1934年にカールクレスとディックマクドノウのデュオ、1947年にカールクレスはトニーモットラとの2ギターカルテット、その後にスイングギターの名手ジョージバーンズとの2ギター+サックスのトリオやデュオ作品の録音をいくつか残している。
やはり、時代と共にツインギターのアイディアも豊富になり、アンサンブルの質も徐々に上がってるように感じる。






一方、ヨーロッパでは、1930年代に、ジャンゴラインハルトがフランスホットクラブ五重奏団(Quintette du Hot Club de France)で、ギター×3人、ヴァイオリン、ベースという編成で、ギターアンサンブルを奏でていたのは、承知の通り。もちろんジャンゴがソロを弾いている時には、あと2人のギタリストは4つ打ちリズムギターに徹するという、マヌーシュジャズの典型的なスタイルで、いわゆるジャンゴスタイルを既に確立している。

天才ジャンゴにバッキングギターを弾かせてまで、ソロを取る無謀なギタリストは、この時代のヨーロッパには存在しなかったのだろう。

Quintette du Hot Club de France






1947年には、お馴染みギブソン・レスポールの生みの親、レスポールがギターの多重録音を行なっている。編成は、ドラム+ベース+リズムギター+リードギターに加え、倍速再生された1オクターブピッチの高いギターを何本も追加して、今の耳で聴いても度肝を抜かれるような、まさに脅威のギターアンサンブルを完成させている。レスポールから多大な影響を受けたことでも知られるジェフベックは、これをバンドで実現しようとしたものの、結局は断念したという逸話も残っている。

Les Paul / The New Sound






50年代から活躍する白人ギタリストの最高峰、タルファーロウが、名門「BlueNote」レーベルに吹き込んだ1954年作品。2ギター+ベース+ドラムというカルテット編成で、もう一人は通好みのギタリスト、ドンアーノンが参加していることもギターファンは見逃せない。ここでは2人のギタリストによる、オクターブ違いのユニゾンを弾いたり(ウェスモンゴメリーがデビューする以前の録音であることも注目すべき点)、ハモりや合いの手を入れたり、違うフレーズやソロを同時進行させているのも、この時代としては斬新で珍しいのではないだろうか。

Tal Farlow Quartet  / Blue Note  5042






こちらも1954年当時としては画期的だったギターのオーバーダビングに挑戦したのがジミーレイニーだった。ジャズ名門レーベル「プレスティッジ」に残した1954年〜1955年録音作品。彼の師匠でもあるクールジャズの創始者レニートリスターノがジャズピアニストとしては初のオーバーダビングに挑戦したということもあり、間違いなく師匠からの影響を強く感じさせるクールで自然な自演二重奏が聴ける。ジミーレイニーは、初期プレスティッジを支えた看板ギタリストであり、クール派ギター最重要作品の一枚。ここではテーマ部分のハモりはもちろん、オクターブ違いのユニゾン、対位法やカノンのように異なるメロディーを同時進行したりずらしたり、様々なコンビネーションを駆使した斬新なギターアンサンブルが聴ける。

Jimmy Raney / A






次は、ジミーレイニー、チャックウエイン、ディックガルシア、ジョーピューマという四人の白人ギタリストによるオムニバスアルバムで、「ABC-Paramount」に残した1956年発表作品。録音年は不明。そのうち2ギターによる演奏は、ディックガルシアジョーピューマによる共演が、本作に4曲収録されている。ジョーピューマは1954年発表のソロアルバムも、すでに2ギター編成を経験しているが、本作では、2ギター+ベース+ドラムというカルテット。ここでは主にテーマでのハモりや、空間を埋めるようなギターアンサンブルが聴ける。

Jimmy Raney, Chuck Wayne, Joe Puma, Dick Garcia / The Fourmost Guitars






1957年には、ケニーバレルジミーレイニーが名門「Prestige」にて録音した、その名も「2 Guitars」という名作がある。ここでは、テーマ部分に2本のギターでハモリを付けて演奏している。本来はトランペットとサックスなどでハモる、いわゆるハードバップの基本的な演奏をギター2本で(または管楽器とともに)奏でている。そういう意味では、その後のツインギターの、いわゆるハモりやアンサンブルの基礎はハードバップにあるのかな?という気もする。極論を言えば、バロック時代にも同等レベルのアンサンブルはあったかもしれないが。

Kenny Burrell & Jimmy Raney / Two Guitars






トロンボーン奏者ボブブルックマイヤーが、ジムホールジミーレイニーという2人のギタリストをフィーチャーした変則クインテットで名門「World Pacific」に吹き込んだ1958年作品。ここでは、2ギター+トロンボーンの3声でのハモリや、曲によってはボブブルックマイヤーがピアノを弾き、2人のギターがハモる。かつてのジミージェフリー3のような、実験的なギターアンサンブルが聴ける。

Bob Brookmeyer / The Street Swingers






そしてギターアンサンブルにおいて忘れてはいけないのが、トニーモットラだ。1950年代からリーダー作を多数残し、多くのアメリカのポピュラー音楽やテレビ音楽も手掛けてきた。イージーリスニングジャズの基盤を作り上げた代表的ギタリストの一人。彼の作品にも多くの2ギターや3ギター作品がたくさん残されている、まさにギターアンサンブルの宝庫と言って良い。参加ギタリストの中には、裏ギターヒーローとも言える、アルカイオラ、ドンアーノン、アルカサメンティ、バッキーピザレリ等がいる。紹介するジャケット画像は、1959年発表作品から。

Tony Mottola / Mr. Big: Tony Mottola...Guitar






きっと誰もが?一度は耳にしたことのある数多くの映画やTV番組のギター音楽を担当したアメリカを代表する影のギターヒーロー、アルカイオラ。そして、かつてブルーノートの「Tal Farlow Quartet」のサイドギタリストとして参加し、ジョニースミスやバリーガルブレイス辺りに通じる通好みのジャズギタリスト、ドンアーノン。そのギターマスター2人による共演盤をいくつか残している。こちらも2ギター作品としては歴史的重要な作品だろう。ジョニースミスの一連の作品や"チェスターレスター"等を彷彿とさせる、ギターマニアには堪らない極上の名演奏が並ぶ。基本的には、2ギター+ピアノトリオまたは曲によって管やヴァイブが入る編成。ここでは、1人がギターソロやテーマを弾いてる時には、もう片方のギターはピアノの代役的なコードバッキングに徹するのが基本だが、時折り、合いの手を入れるような名手ならではの質の高い2ギターアンサンブルが聴ける。ジャケット画像は1960年発表作品から。

Al Caiola & Don Arnone / Great Pickin'






本作は、ジミーレイニーが、ギタリストのジムホールやサックス奏者ズートシムズ等を迎え「Mainstream」レーベルに残した2ギター編成のアルバム1964年作品。編成は、2ギター+サックス+ベース+ドラムというクインテット。ジムホールといえば、ハーモニー面において、ギターという楽器を、もうワンランク上へ押し上げた最大の功労者であり、ギターバッキングの名手でもあるので、本作でも当然コードを用いたバッキングはもちろんのこと、時折、サックスとギターの2声テーマに、合いの手を入れたり、3声でハモったりと、それまでにはなかったような、斬新かつ充実したギターアンサンブルが聴ける。

Jimmy Raney / Two Jims & Zoot






あと最も有名な2ギター編成といえば、ジョーパスの代表作である1964年の「For Django」。14歳の時にジャンゴラインハルトを聴いて、ジャズギタリストを目指したという、ジョーパスが、そのジャンゴに捧げた一枚。本作の編成も、2ギターによるピアノレスカルテット編成で、ギターは名手ジョンピサノが担当。ここでは、ジョーパスがソロを、ピサノがバッキングに徹しており、完全に分担されている。しかし、これが絶品のコードワークで、ソロを聴いても良し、バッキングを聴いても良し、まさにジャズギターのお手本のような、一石二鳥の2ギターが楽しめる一枚。

Joe Pass / For Django






もちろんジャズの世界に限らず、フラメンコの世界でも、スーパーギタートリオでも活躍したパコデルシアリカルドモドレーゴという2人のギタリストによるデュオが本盤の1965年作品の他にも何枚か残されている。ここでもハモリはもちろん、カノンのようにタイムをずらしたユニークなギターアンサンブルも聴くことができる。

Paco De Lucia - Ricardo Modrego / 12 Exitos Para Dos Guitarras Flamencas






本作は、当時なぜか、ジャズ批評「プレスティッジ・ブック」に「ジャケット存在せず?」と書かれており、幻のレコードと言われていたPRESIGEの傍系レーベル、STATUSに残された1965年作品。
ケニーバレル、ビルジェニングス、タイニーグライムスという三人の名ギタリストの未発表セッション集。そのうち2ギター編成は、ケニーバレルとギター職人ことバリーガルブレイスによる未発表セッションが3曲収録されている。
ジャズギタリストの中でコードワークの達人と言えば、ジムホールが有名だが、実はケニーバレルのハーモニー感覚も非常に優れていることは意外と知られていない。それは、おそらく彼がデュークエリントンを研究したことも大きな理由の一つかもしれない。そのジャズハーモニー最大の功労者であるデュークエリントンの代表的な名曲カバー「It Don't Mean A Thing」も収録。

Kenny Burrell, Bill Jennings, Tiny Grimes / Guitar Soul






いかがでしょうか。

ギターデュオやツインギター作品が、ジャズやクラシックの世界にも数多く存在することが、わかりましたよね? しかも2本のギターによるアンサンブルも巧みで様々な工夫がされてますよね? 少なくても、単なる「超絶ソリスト2人の戦略的なコラボレーション」だけには収まらないことは明らかでしょう。
今回は、19世紀から1960年代前半までを中心に代表的な作品だけを取り上げましたが、まだまだ他にも数多くの埋もれた作品があることも知っていただきたい。もちろん、それ以降の60年代後半から70代〜80年代にかけて、さらにジャズギターが最も勢いを増し「黄金時代」が到来することは、前回の「レココレさんのシリーズ」でも承知の通り、以前の記事「ジャズ黄金時代」でも散々書いた通りですので、そちらも合わせてご覧いただければ幸いです。

ただ、今回、ギタマガさんの特集「70年代世界最強ギタータッグ決定リーグ戦」の記事を読まなければ、このような埋もれてしまった、見落とされた、ツインギターの歴史を紹介することも、再評価することもできなかったので、そういう意味でもギタマガさんには感謝しております。

何より、私自身もプロレスファンだったこともあり、今回の特集の趣旨であるツインギターを、プロレスのタッグに例えて「ギタータッグ」と名付けてしまう、そのユーモアセンスにも、思わずグッときてしまいました。つい手が出てしまうそのインパクトが、逆に功を奏したと言っても過言ではありませんね。今後もギタマガさんの企画を楽しみにしております。

ご覧いただき、ありがとうございました!!



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