AIはどんなデータを、どんな目的で使うのか ー 個人情報保護法|AIに関する法律と契約#2
AIと個人情報の関係
AI活用では「どんなデータを、どんな目的で使うのか」が常に問われ、個人情報保護は最初に整理すべき前提条件になります。
AIは大量のデータを学習・分析する技術であるため、その中に個人情報が含まれていれば、必然的にこの法律が関係してきます。
特に画像・映像データは、「個人を特定できるかどうか」という判断が直感とずれやすく、現場で誤解が生じやすい分野です。
AIを使う際には、「データを扱う」という行為そのものが法的な意味を持つことを理解しておく必要があります。
個人情報保護法
個人情報保護法では、「生存する個人に関する情報で、特定の個人を識別できるもの」を個人情報と定義しています。
氏名や住所といった分かりやすい情報だけでなく、
顔画像
音声データ
映像データ
行動履歴
なども、条件次第で個人情報に該当します。
AIの学習データや入力データにこれらが含まれる場合、
「AIが個人情報を取り扱っている」と評価され、企業には法令遵守が求められます。
個人データ・要配慮個人情報の取り扱い
個人情報の中でも、特に実務上注意が必要なのが以下です。
個人データ:検索可能な状態で整理・管理されている個人情報
要配慮個人情報:医療情報、障害の有無、信条など、特に慎重な取扱いが求められる情報
AIの学習や分析において、これらを利用する場合には、
利用目的の特定
本人同意の取得
適切な安全管理措置
が原則として必要になります。
「社内利用だから」「AIの内部処理だから」といった理由で例外扱いされることはありません。
学習データと目的外利用の問題
個人情報保護法では、個人情報は特定された利用目的の範囲内でのみ利用できるとされています。
そのため、たとえば、
防犯目的で収集した映像を
別用途のAIモデル学習に転用する
といった行為は、目的外利用に該当する可能性があります。
AIはデータの再利用が容易な分、
「最初は問題なかったが、後から用途が広がっていた」というケースが起きやすい点に注意が必要です。

事例:監視カメラ映像は個人情報に該当するのか
ここで、実務で特に判断が難しい
監視カメラで収集した個人の画像データを例に考えてみます。
個人情報に該当する場合
次のようなケースでは、監視カメラ映像は個人情報に該当する可能性が高くなります。
映像に顔が鮮明に映っており、特定の個人を識別できる
映像と氏名・社員番号・来訪記録などを紐づけて管理している
映像を検索・再生できる形で体系的に保存している
特定人物の行動履歴や滞在時間を把握できる
このような場合、たとえ「防犯カメラ」であっても、
法的には個人情報(個人データ)を取得・利用していると評価されます。
そのため、
利用目的(防犯、施設管理など)の明示
不要な長期保存を避ける
AI学習など別用途への転用可否の検討
といった対応が求められます。
個人情報に該当しない場合
一方で、次のような条件を満たす場合には、
個人情報に該当しない、または該当しにくいと判断される余地があります。
映像が低解像度で、個人を識別できない
顔や身体的特徴が判別できないよう加工されている
人数カウントや混雑状況把握のみを目的とし、かつ個人を識別できないデータのみを取得・利用している
特定の個人を追跡・識別できない設計になっている
たとえば、
来店者数を把握するために
人の「シルエット」や「動線」だけを解析するAI
といった用途であれば、
個人を識別できない情報=個人情報に該当しない
と整理できる可能性があります。
ただし、「再識別できないこと」が重要であり、
形式的な加工だけでは不十分な場合もある点に注意が必要です。
匿名加工情報・仮名加工情報という選択肢
監視カメラ映像をAIに活用する際のリスク低減策として、
匿名加工情報
仮名加工情報
の活用が考えられます。
匿名加工情報は、個人を特定できず、復元もできない情報です。
仮名加工情報は、内部利用を前提に、識別性を下げた情報です。
これらを適切に用いることで、
防犯・分析ニーズと
個人情報保護
のバランスを取ることが可能になります。
個人情報保護はAI活用の前提条件
個人情報保護法は、AI活用を妨げるための法律ではありません。
むしろ、
利用者の信頼を守る
不要な炎上やトラブルを防ぐ
AI活用を継続可能にする
ための前提条件です。
監視カメラや画像データのように、
「便利だが判断が難しいデータ」ほど、
個人情報に該当するかどうかを一度立ち止まって整理することが、AI活用の成否を分けるポイントになります。
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