男の失恋ソングコレクション
この前こちらで中西保志さんの「最後の雨」を取り上げて、男の失恋ソングってインパクト強いのが多いなぁと思いました。女性の失恋ソングに比べて少ないから、余計にそう感じるのかもしれません。
というわけで、新旧男の失恋ソング(ほぼ旧ですが)について、だらだら語りたいと思います。
中西保志「最後の雨」(1992)
失恋ソングの金字塔、ともいえるこの作品。
歌詞が、痛いくらいストレートなのですよね。
本気で忘れるくらいなら
泣けるほど愛したりしない
誰かに 盗られるくらいなら
強く抱いて 君を壊したい
作詞:夏目純(←中西さんじゃなかったのね)
流行った当時私は高校生。
「誰かに盗られるくらいなら……君を壊したい」
のくだり、カラオケで聴くたび「怖いよー😨」なんて茶化してました。とられるを「盗られる」って書いてるし。
でも今自分も創作活動をしていて思うんですが、たとえ自分の話でなくても、登場人物の弱さや痛々しさを表現するのってすごく怖いんですよね。自分の弱さが透けて見えそうで。だからこそ、受け取る側からするとすごく響くのかもしれません。
この楽曲自体のすばらしさはもちろん、その辺にいそうな(失礼)リアルな雰囲気の中西保志さんが、雨に打たれながら情熱的に歌ってたところもインパクト強かったんですよね。
多くの人にカバーされているこの曲だけど、切実な感じや生っぽさはやはり中西さんのオリジナルが一番だな、と思います。
山崎まさよし「One more time, One more chance」(1997)
名曲。山崎まさよしさんの声大好きなんです。
でも、弱さ痛々しさといえばこの曲、とも思います。危なっかしいとすら。
いつでも捜しているよ どっかに君の姿を
向いのホーム 路地裏の窓
こんなとこにいるはずもないのに
作詞:山崎将義
消えた「君」を、主人公の「僕」はひたすら捜し続けます。
(さがす、の字が捜索の「捜」なんですよね)
切ない歌詞はだんだんエスカレートし、捜索の手は「交差点」「夢の中」「明け方の街(桜木町)」へ。
やがては「旅先の店」「新聞の隅」にまで及びます。
「そこにはいないだろ」
「そこさがし始めたらやばいよ」
カラオケで誰かが歌うと、皆でざわざわとつっこむのが常でした。
そして終盤
奇跡がもしも起こるなら 今すぐ君に見せたい
新しい朝 これからの僕
言えなかった「好き」という言葉も
ここで「好きと言ってなかったのか」とさらに衝撃が走ります。
つきあってた彼女の話じゃないのか?
まぁ、つきあっていても最初好きって言わずにそのままってカップルも、いるか……
主人公と「君」との関係が謎のまま、とにかく主人公の不器用さ危なっかしさを浮き彫りにして曲が終了します。
今こういう曲って、なかなか作れない気が。
「One more……」は、危なっかしいくらいの恋心をそのままに表現できた最後の時代の曲だったかもしれません。
(ほんとごめんなさい茶化して。後で回収するので好きな方、怒らないでね……)
槇原敬之「もう恋なんてしない」(1992)
「もう恋なんてしないなんて言わないよ絶対」
という歌詞があまりにも有名で、失恋ソングというより二重否定構文のテンプレみたいに使われているこの曲ですが。
歌詞全体を味わうと、軽やかなのにすごく切ないんですよね。
君がいないと何も
できないわけじゃないと
ヤカンを火にかけたけど
紅茶のありかがわからない
ほら 朝食も作れたもんね
だけどあまりおいしくない
君が作ったのなら文句も
思いきり言えたのに
作詞:槇原敬之
「彼女がいないと何もできない僕」の描写は昭和的で、今だと違和感もありますが。
でも寂しい悲しい、と何回言われるよりもずっと切なくなるようなリアリティがあります。
2本並んだ歯ブラシも
1本捨ててしまおう
君の趣味で買った服も
もったいないけど捨ててしまおう
”男らしく いさぎよく”と
ごみ箱かかえる僕は
他のだれから見ても一番
センチメンタルだろう
コミカルだけど切ない。
彼女を思う気持ちを物や風景に込めるところが文学的だなぁ、さすがマッキー古びないなぁ、と思います。
Mr.Children「Over」(1994)
1994年発表、累計売上300万超のお化けアルバム「Atomic Heart」に収録されたこの曲。
私の中では、男の失恋ソングといえばこれなんですよね。。
”風邪が伝染(うつ)るといけないから
キスはしないでおこう”って言ってた
考えてみると あの頃から君の態度は違ってた
いざとなれば
毎晩君が眠りにつく頃
あいも変わらず電話かけてやる
なんて まるでその気はないけど
わからなくなるよ
男らしさって一体 どんなことだろう?
作詞:桜井和寿
妙にリアルなエピソード(キスの話)
「One more……」ほどではないけどちょっと危ない独白(あいも変わらず電話かけてやる)
等身大の本音の吐露(男らしさって……)
このころのミスチルだなーって感じです。
はまりました私。。
「妙にリアル」でいうと、こんな歌詞もあり。
今となれば
顔のわりに小さな胸や
少し鼻にかかるその声も
数え上げりゃ きりがないんだよ
愛してたのに
心変わりを責めても空しくて
「顔のわりに小さな胸」ってなんだ、つまり胸の大きそうな顔、っていうのがあるのか?
逆に「胸の小さそうな顔」もあるのか?
と本筋とあまり関係ないことが当時、気になって仕方なかった覚えがあります。
……でこの曲、爽やかなようで冒頭からすっごく悲しいんです。
ミディアムテンポなキラキラのイントロで、どんな爽やかな歌が始まるんだろうと思ったら
🎵何も語らない君の瞳の奥に愛を探しても~
と冒頭からもう、完全に失恋してる。
前述の「One more……」の冒頭も、
🎵これ以上何を失えば心は許されるの……
ですもんね。
今回取り上げてませんが、オフコース「さよなら」の🎵もう、終わりだね~ とか。
優れた失恋ソングって、冒頭からしっかり悲しいのかもしれません。
Official髭男dism「Pretender」(2019)
ここ10数年のJ-POP最高傑作の一つ、といえるヒゲダンの「Pretender」。
これまで語ってきた90年代の失恋ソングとは、歌詞の趣きが違うなぁと思います。
もっと違う設定で もっと違う関係で
出会える世界線 選べたらよかった
もっと違う性格で もっと違う価値観で
愛を伝えられたらいいな
そう願っても無駄だから
作詞:藤原聡
性格も価値観も、そもそもの設定も世界線も違う「君」と「僕」。
世界線が違うって「住む世界が違う」くらいの意味なんでしょうか(今さらながら)
うん、そっかー
やっぱり人と人とって、縁だもんね。
と相槌打ちながら、小綺麗なカフェで話ができそうな雰囲気です。Pretenderの主人公の「僕」とは。
「One more time, One more chance」の主人公だったらめっちゃ身構えるでしょうね。
「とりあえず一晩寝よ?余計なこと考えずに寝よ? 明日話聞くから……ちゃんと聞くから!」
と、電話口で叫んでそして切りますね。
でもこのPretenderの主人公、苦しい気持ちを、ものすごく理性的な言葉でくるんでいるなぁって思うのですよね。
noteで、自分よりだいぶ若い世代の方の発信を見ていても思うのですが、皆さんすごく言葉を選んでて、おだやかで理性的だなぁって。苦しくてどうしようもないような話でも。
もっとみっともなく生々しく語ってもいいのに。失恋ならなおさら。恋なんて、利己的で痛々しくてみっともない愚かなものじゃないですかね。
……とここまで書いて「どの口が言うんだ」と思いました。
「最後の雨」も「One more time, One more chance」もさんざん茶化しておいてねぇ。
我々アラフィフ以上の年代がネット黎明期から、さんざんこういうつっこみをしてきた帰結じゃないんですかね。若い人たちがこれだけ、スマートに言葉選びしなきゃいけなくなったのも。
……と一人勝手に自責の念にかられましたが。
ヒゲダンの曲を語れるほど詳しくはないので、もしかしたら彼らの歌詞の標準仕様なのかもしれません。
で、この理性的な感じで来てラストの
「たったひとつ確かなことがあるとするのならば『君は綺麗だ』」
はかなりグッとくるものがあります。意図的なのかも。。
80年代以前まで見たら、さらに大人な感じの(道ならぬ恋系の)歌がいろいろ出て来て面白そうですね。
今回は若者の等身大の失恋ソングのお話でしたが、そちらもぜひ発掘してみたいものです。
ほか、新旧J-POPについていろいろ書いてます。
