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自分あらば「好き」語り・その62——卵

「好きな食べ物は何ですか」と聞かれると、私は案外答えに困ります。

カレーも好きですし、ラーメンも好きです。コーヒーも好きですし、スパゲッティも好きです。この連載でも、食べ物だけで十数回書いてきました。

しかし、あらためて「一番身近で、一番よく食べているものは何だろう」と考えると、思い浮かぶのは卵でした。

卵が嫌いという人には、これまであまり出会ったことがありません。

もちろん、アレルギーや体質によって食べられない方はいらっしゃいます。しかし、そうした事情を除けば、多くの人が「好き」とまでは言わなくても、自然に食卓に並ぶものとして受け入れているのではないでしょうか。それほどまでに、卵という食材は日常に溶け込んでいます。

しかも、不思議なくらい、どんな料理にも馴染みます。主役にもなれますし、脇役にもなれます。和食にも洋食にも中華にもなじみ、朝でも昼でも夜でも違和感がありません。あまりにも当たり前すぎて、そのすごさを忘れてしまいがちな食材です。

きょうは、そんな卵について語ってみたいと思います。


卵かけご飯は、シンプルだからこそ奥深い

私が最初に思い浮かべる卵料理は、やはり卵かけご飯です。

以前、この連載で玄米について書いたことがあります。

私は玄米をよく食べます。そして、その玄米に生卵を落として、しょうゆを少し多めに垂らし、箸でふわふわになるまでよくかき混ぜます。

塩分を考えれば、しょうゆは控えめのほうがよいのでしょう。頭では分かっています。それでも、ほんの少しだけ多めに入れたしょうゆが、卵の甘さを引き立てます。そして、ご飯と一緒に口へ運ぶ。

これだけで十分幸せになれます。

卵かけご飯は、特別な料理ではありません。むしろ、究極にシンプルな料理です。だからこそ、ご飯のおいしさや卵のおいしさが、そのままあらわれます。料理というより、「素材を楽しむ食べ方」なのかもしれません。

卵は、どんな料理にも寄り添える

卵の魅力は、何と言っても守備範囲の広さだと思っています。

朝食なら、ゆで卵。ホテルや喫茶店のモーニングでも、ゆで卵が添えられているとうれしくなります。追加注文することもしばしば。もちろん、そのまま食べてもおいしいですし、少し塩を振るだけでも十分です(最初から塩味がついていることもありますね)。

ラーメンに入っている卵も大好きです。

黄身が半熟で、とろりとしているものはもちろんおいしいのですが、家でしか楽しめない食べ方として、私はカリッと焼いた目玉焼きをラーメンにのせるのも好きです。外側は香ばしく、中はまだ半熟。その食感がスープと混ざると、また違ったおいしさになります。

そばに生卵を落とすのも好きです。温かいそばに卵を崩しながら食べると、つゆが少しまろやかになります。

カレーにもよく合います。ゆで卵でも、生卵でも、それぞれ違った良さがあります。辛さを少し和らげながら、味に厚みを加えてくれます。

石焼ビビンバもそうです。卵を崩して全体を混ぜると、熱々のご飯と具材が一つにまとまり、辛さの中に優しさが生まれます。

丼物にも欠かせません。親子丼はもちろんですが、牛丼や豚丼に温泉卵を載せるだけでも印象は大きく変わります。

さらに、最近紹介されたのは、会社の近所にキッチンカーで出店しているローストポーク丼にかける温泉卵。しかもキッチンカーが出店している路地の向かいのコンビニで温泉卵を買えば、追い温玉ができるとは、このnoteに密かに何度か登場している、ある同僚の弁。彼はどうやら僕を道連れに太らせようとしているようです。

さらに。

パスタにも使えます。サラダにも使えます。

パンケーキにとっても欠かせない存在です。

そして、日本人なら、だし巻き卵。ふわふわの食感と出汁の香りは、何度食べても飽きません。

こうして並べてみると、「卵を使えない料理」を探すほうが難しいくらいです。

鶏の卵だけではありません

卵といえば鶏の卵を思い浮かべますが、私はうずらの卵も好きです。小さくてかわいらしく、それでいてしっかり卵らしい味がします。サラダに入っていてもうれしいですし、中華料理に入っていても存在感があります。ラーメンに入っていても、なんだか少し得をした気分になります。

そういえば、サラダのゆで卵も好きです。丸ごともよいものですし、薄切りになっているゆで卵もよいもの。一枚一枚が野菜とよくなじみ、見た目にもきれいです。

卵は料理をおいしくするだけではありません。料理そのものを少し華やかに見せてくれる力も持っています。

私は、あの「とろっ」とした食感が好きなのだと思う

ここまで書いていて、「私は卵の何がそんなに好きなのだろう」と考えてみました。

たぶん、一番好きなのは食感なのだと思います。あの、とろっとした感じです。

完全に液体でもありません。
完全に固体でもありません。

半熟の黄身には、独特のやわらかさがあります。

卵かけご飯もそうです。
味玉もそうです。
温泉卵もそうです。
石焼ビビンバもそうです。
目玉焼きであっても、外側はカリッとしていて、中は少しだけとろりとしている。
私は、あの境界線のような食感が好きなようなのです。

しかも、不思議なことに、その「とろっ」とした存在感は、料理の中に入っても消えません。

ご飯と混ざっても。
麺と絡んでも。
カレーと一緒でも。

ちゃんと卵らしさが残っています。主張しすぎないのに、確かな存在感があります。

どんな味とも仲良くなれる

もう一つ、卵の好きなところがあります。それは、相性の良さです。
しょうゆとも合います。
塩とも合います。
ソースとも合います。
ケチャップとも合います。
マヨネーズとも合います。
出汁とも合います。
カレーにも合います。
ラーメンにも合います。
パンにも、ご飯にも、麺にも合います。
これほど付き合いのよい食材は、そう多くありません。

しかも、自分の個性を消してしまうわけでもありません。料理全体を引き立てながら、自分の存在もしっかり残している。そんな絶妙なバランスを持っています。だからこそ、世界中で愛されているのでしょう。

おわりに

この連載では、「好き」という気持ちを通して、自分自身を少しずつ見つめ直しています。卵について書いていて気付いたことがあります。
私は、「何にでも合わせられるもの」が好きなのかもしれません。

以前書いたコーヒーもそうです。
スープもそうです。
サラダもそうです。
どれも、何かと組み合わせることで、新しいおいしさを生み出せる存在です。

卵も同じです。主役になれるのに、脇役にもなれる。料理全体を支えながら、自分らしさも失わない。そんな在り方に、私はどこか惹かれているのでしょう。

というわけで、きょうは仕事の帰り道、定食屋に入って、卵かけご飯を食べたのでした。それだけでも、この文章を書いた意味は十分にあったような気がしています。

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