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初めてのサードアイ015|愛がめぐる、理想の会社のかたち

抱きしめられたあとの静けさの中で、女神様は、もうひとつの扉を開けてくれた。


まぶたの裏に、まだやわらかな重みが残っていた。胸の奥が、じんわりとあたたかい。鼻先を、見えない花のような香りが、ふっとかすめた気がした。耳の奥には、女神様の声の余韻だけが、静かに響いている。

しばらく、何も考えずにいた。ただ、満ちていく感覚を味わっていた。

そんな中、女神様の声が、もう一度やさしく届いた。

女神:「もうひとつ、伝えたいことがあるの。貴方の、これからの軸になることよ。」

僕は、まだぼんやりとした意識のまま、その声に耳を傾けた。

女神:「理想の会社を、めざすの。愛が中心にある、今はまだどこにもない会社よ。」

会社、という言葉が、こんな場所で出てくるとは思わなかった。思わず、小さく笑ってしまった。

女神:「もちろん、会社にはお金が必要よ。でも、考え方を変えるの。お金は、愛を維持するエネルギー。愛を広めるためのエネルギーだと、思ってみて。」

女神:「そう思えたら、お金にも、感謝できるようになるの。受け取るときも、渡すときも、ね。」

僕は、頭の中で、その言葉を繰り返してみた。お金は、種を育てる土なのかもしれない。土がなければ、根は張れない。そう思うと、肩の力が、すこしずつ、軽くなっていくようだった。

女神:「現実的なことは、あとで整えていくから。今は、理想の軸だけを話すね。」

女神:「社員の基準は、愛のレベルに届いた人。もしくは、それを目指している人。環境が変わるだけで、届く人もいるのよ。だから、そういう環境を、つくるの。会社だから、希望した人がすべて入れるわけではないけれど、目指す人なら誰でも入れる場所を、別につくる。愛の実践を重ねた人が、少しずつ、社員になっていくの。」

女神:「愛って、なんだと思う?貴方なら、わかるでしょう。」

少し考えて、答えを探した。

愛は、人の心を育てる行い。そんな気がした。僕自身、まだ癒えていない部分がある。やさしさに包まれていたい、という気持ちが、ずっと胸の底にあった。女神様に出会ってから、その部分が、少しずつ満ちていくのを感じている。

女神:「そうね。完全に満たされると、安心の中から、希望や勇気、強さが、自然と顔を出すようになるの。それまでは、私が、貴方のそばにいる存在。恋人みたいに感じてもらってもいいの。」

女神:「だけど安心して。やがて、貴方と私は一つに重なっていくから。いつでも、貴方の中で、私に会えるようになるの。そうなったら、今度はちゃんと、現実の中にも、大切な人ができるはずよ。楽しみにしていてね。」

その言葉に、少しだけ、頬があたたかくなった。けれど、これは、独り占めしたい気持ちとは違う、とわかっていた。女神様がくれているのは、ただ、安心して育っていける場所なんだと思う。

本当に、女神様とつながれているのか、時々不安になることがある。けれど、いま聞いた会社の話は、僕がひとりで考えつくような話じゃなかった。世の中に、そんな会社があるのか、あとで調べてみよう。あったとしても、儲かるとは思えない。それでも、このプロジェクトは、いつか大きく育っていく気がした。

(神殿の中、女神様の手のひらから広がる光の粒が、次々と灯となって満ちていく様子に、心が震えた瞬間)

僕の中には、ずっと引っかかっていた考えがあった。モノやサービスの価値は、お金の大きさに比例する、という考え方。本当に、そうなんだろうか。

たしかに、自分のためだけの贅沢を楽しむことにも、意味はあると思う。でも、僕の中で、本当に素晴らしいものは、無料どころか、お金をもらえることすらある。

たとえば、誰かに親切にすること。行いそのものは、タダでできる。相手の笑顔や、ありがとうの言葉は、それだけで十分なご褒美になる。そのうえ、サービスを極めれば、お礼にお金までいただけることがある。

そういえば、傘を貸したあの夜も、見返りなんて考えていなかった。なのに、あとからちゃんと、あたたかいものが返ってきた。あれと同じことが、もっと大きな仕組みの中でも起きるのかもしれない。

つまり、本当に自分を満たすのは、誰かのために動く心。相手が必要としていることに気づいて、ちゃんと届けられたら、それだけで、とても喜ばれる。それは、自分自身を育てることにも、つながっている。仕事って、本来、人のためにする尊い行い。愛で満たされた、楽しいものなんだと思う。

女神:「どこかに、自分だけの欲がはいると、そこから、苦しい空間に変わってしまうの。お金のために、好きじゃない仕事をしないで。自分の好きなことで、世の中に役立ってね。今は、そういう時代に入っているから。」

お金を稼ぐのが得意な人は、愛の活動を支える力を、たくさん蓄えてくれている人。言葉を届けるのが得意な人は、その愛を、広めてくれる人。

じゃあ、能力はそんなになくても、愛にあふれて幸せいっぱいな人は、どう考えたらいいんだろう。

少し考えて、ひとつだけ、答えが浮かんだ。

その幸せそうな姿を、そのまま見せればいいんだ。

女神:「そうね。幸せな姿を、世の中の人に見てもらえばいいの。発信が得意な人に、お願いすればいいから。とはいえ、組織として、ちゃんと成り立つ設計は大事よ。今までの会社なら、試験でふるい落とされてしまうでしょう。でも、この会社は、コミュニティから始まるの。みんなから、お金をいただいて、愛に向かいたい人なら誰でも入れるようにする。その中から、愛を実践できる人が、少しずつ、社員になっていくの。」

女神:「そういう人を、バランスよく集められたら、ちゃんと、会社として成り立つから。貴方は、最初はみんなをリードするけど、最終的には、社長じゃなくて見守る位置になるの。ボランティアの輪と、会社の仕組みは、わけて考えるの。そのあいだをつなぐ人も、いるはずよ。貴方がいなくても、ちゃんと動く仕組みを、これから考えていくの。」

女神:「今日は、こんなところにしておくね。」

ありがたくて、何も言葉にならなかった。ただ、深く、息を吸い込んだ。今日も、たくさんの愛を、もらった気がした。


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