9年隠された"偽装会社"の正体――玉城デニー知事は辞職すべきか徹底検証
沖縄県議会が2026年7月13日、玉城デニー知事に対する問責決議を可決しました。これは沖縄県議会史上初めて可決された知事への問責決議です。
「ここまで問題が積み重なったのに、まだ知事は続けるつもりなのか」という声が上がるのも無理はありません。
今回は、この「ワシントン事務所問題」を振り返りながら、これが単なる「手続きのミス」ではなく、県政のガバナンス不全そのものを露呈させた事件だったことを検証していきます。
そもそもの発端――2015年、翁長県政での事務所設立
沖縄県ワシントン事務所は、米軍普天間基地の辺野古移設に反対する翁長雄志知事(当時)の公約を実現するため、2015年にワシントンD.C.に開設されました。
この時点ではまだ玉城知事は就任していませんが、玉城知事は2018年の就任以降、この事務所の運営を引き継ぎ、自らの基地問題政策の柱の一つとして活用してきました。
2024年11月――「株式会社」だったことが発覚、外交的リスクも露呈
問題が世間に広く知られるきっかけとなったのは2024年11月のことです。事務所の駐在職員が米国で就労ビザを取得するため、県が全額出資する「株式会社沖縄県ワシントン事務所」という法人が密かに設立されていたことが発覚しました。
この会社は米移民当局に対し「県から直接雇用されることはない」という、実態と異なる書類を提出していました。実際には駐在職員は地方公務員の身分のままで、対外的には「社長」「副社長」の肩書きを名乗っていたのです。
ここで見過ごせないのが、この問題の国際的な重大性です。米国の移民当局に対し、実態と異なる雇用関係の書類を提出して就労ビザを取得する行為は、米国連邦法における重大な虚偽申告に問われかねない危うい行為です。
基地問題を訴えるための外交拠点が、米国の法律を軽視した脱法的な手法で運営されていたという事実は、沖縄県の国際的な信用を根本から揺るがすものでした。
実際、事務所設立を支援した米国の法律事務所の弁護士は県議会の百条委員会で「株式会社以外の形態では駐在事務所を設立できなかった」と陳述しており、そもそもの手法自体に無理があったことが浮き彫りになっています。
この事実は9年以上、県議会にすら報告されていませんでした。玉城知事本人も「事務方から報告を受けた」と述べ、自らも知らなかったことを認めています。
しかし、トップが「知らなかった」で済まされる話ではありません。県が全額出資する法人が外国の首都に設立され、社長・副社長を名乗る職員が9年間も活動していたにもかかわらず、知事も県議会もそれを把握できていなかったという事実は、単なる事務方の暴走ではなく、沖縄県庁内の情報共有・監査機能そのものが破綻していたことを意味します。
この点は、後の百条委員会の証人尋問で知事自身が「設立当時の手続きの不備や法令への理解不足、コミュニケーション不足があった」と認めていることからも裏付けられます。
同月、県議会は2023年度一般会計決算を反対多数で不認定としましたが、これは1972年の沖縄本土復帰以降、初めての決算不認定でした。
2025年――疑惑のデパートと呼ばれた1年
2025年に入ると、問題はさらに深刻化していきます。
1月:法令適合性を検証する調査検討委員会が設置され、初会合で委員から「一部がブラックボックス化している」との指摘が出る
2月:2025年度予算案が異例の「差し戻し」となる事態に発展
3月:調査検証委員会が「設立手続きに重大な瑕疵があり、日本法・米国法の十分な調査を怠った」と結論づける報告書を公表
3月28日:県議会が事務所運営費を予算案から全額削除する修正案を可決、玉城知事は「再議」を見送り、事実上事務所閉鎖が確定
6月:ワシントン事務所が正式に閉鎖
産経新聞はこの時期の一連の実態を「疑惑のデパート」と名付け、深層リポートを組んでいます。年間予算はおよそ1億円規模にのぼり、県民の税金がこの不透明な運営に投じられ続けていたことも忘れてはならない点です。
2025年後半――知事の「追認」と減給、そして提訴
事務所閉鎖後も問題は終わりませんでした。11月には、県が公表した設立経緯の報告書で職員6人が訓告処分となり、玉城知事は「私に大きな責任がある」として自身の給与を2026年1月から3カ月間15%減額する条例案を提出しました。
ただし、この減給は前年(2024年度)にも土木建築部の不適切会計処理を理由に一度実施されており、今回が2年連続の給与減額処分となります。
さらに12月には、ジャーナリストの男性が「重大な法的瑕疵があるにもかかわらず県が漫然と公金を支出した」として、玉城知事に対し委託料など約3億2500万円の返還を求める訴訟を那覇地裁に提起しました。訴状では「県議会の監視を免れる脱法的な支出が行われた」と指摘されています。
2026年――決算再び不認定、そして史上初の問責決議可決
2025年11月には2024年度一般会計決算も賛成少数で不認定となり、これで2年連続の不認定という異例の事態になりました。野党側からは、百条委員会の結論が出る前に知事側が減給を先行させたことについて「幕引きを急ぐ行為」との批判が上がっています。
2026年3月には百条委員会で玉城知事本人への証人尋問が行われ、知事は「設立当時の手続きの不備や法令への理解不足、コミュニケーション不足があった」と認めています。
そして2026年7月13日、自民党会派提出の問責決議案に、これまで中立的だった公明党会派も賛成し、賛成多数で可決されました。決議案提出の背景には、県側が給与1カ月分を45%減額する条例案を出したものの、自民会派が「処分が軽すぎる」と反発したことがあります。
「辞職すべき」という論点をどう見るか
ここまでの履歴を振り返ると、次のような事実が積み重なっています。
9年以上、県議会に法人の存在が報告されていなかった
決算不認定が2年連続(本土復帰後初)
給与減額処分も2年連続で実施
3億円超の返還を求める住民訴訟が提起されている
史上初の問責決議可決
これだけの「初めて」「異例」という言葉が並ぶ状況は、通常の行政運営であればトップの進退問題に直結してもおかしくないレベルだと言えます。実際、保守系の論者からは「知事は辞任すべきだ」という主張も出ています。玉城知事自身も証人尋問で自らの理解不足やコミュニケーション不足を認めており、この点は本人も否定していない事実です。
ここで見過ごせないのが、知事の姿勢そのものに内在する矛盾です。手続きの違法性を問われて閉鎖し、自ら給与減額まで受け入れた事務所を、トップとしての最終的な責任を取らないまま「新たな体制で再開を図る」と表明することは、「けじめ」の論理として明らかに整合性を欠いています。問題の重大性を認めながら同じ枠組みの継続を志向する姿勢は、反省の実質性そのものに疑問を投げかけるものと言えるでしょう。
一方で、問責決議には法的拘束力がなく、任期途中での知事の進退はあくまで知事本人の判断と、次の選挙(有権者の審判)に委ねられる仕組みになっている点も踏まえておく必要があります。現時点で玉城知事は辞職の意向を示しておらず、事務所再開への意欲を継続的に表明しています。
まとめ――問われているのは「けじめ」のつけ方
この問題を一言で表すなら、「一つの手続き上のミスが、9年間放置された末に、県政史上初めての事態を次々と引き起こした」という話です。決算不認定、給与減額、住民訴訟、そして問責決議可決――これだけの「けじめ」がすでに積み重なっている中で、知事自身が「辞職」という最終的なけじめをつけるべきかどうかは、今後の県議会や次の知事選での大きな論点になりそうです。
読者の皆さんはどう感じますか。「ここまでの経緯があれば辞職は当然」と考える人もいれば、「選挙で選ばれた以上、次の選挙まで職責を果たすべき」と考える人もいるでしょう。この問題、ぜひ自分なりの答えを考えてみてください。
参考にした記事
沖縄・玉城デニー知事の問責決議案可決 「ワシントン事務所」ずさんな実態、公明系も賛成(産経ニュース、2026年7月13日)
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問責決議:
議会が首長などの政治責任を問い、非難する意思を示す決議。法的拘束力はなく、辞職を強制する効力はない。
百条委員会:
地方自治法第100条に基づき、地方議会が特定の事案について調査権を行使するために設置する特別委員会。証人尋問なども行える。
再議:
知事などの執行機関が、議会が可決した議案に異議がある場合、議会に再度の審議を求める地方自治法上の制度。
決算不認定:
議会が自治体の1年間の収支報告(決算)を承認しないこと。法的拘束力は弱いが、行政運営への強い不信任のメッセージとなる。
オール沖縄:
辺野古移設反対を軸に、保守・革新の枠を超えて結集した沖縄の政治勢力・支持基盤の呼称。
就労ビザ(査証):
外国人が他国で合法的に働くために必要な入国・在留許可。虚偽申請は取得国の法律で処罰対象となる。
ガバナンス:
組織を適切に統治・管理する仕組みや機能のこと。ここでは行政組織内の情報共有・監査体制を指す。
