ただ「気持ちいい」を磨く夜。目的のない自作アプリ
アプリ開発では、
「不満を解決する」とか「明確なゴールを設定する」とか、
そういう話をよく聞きます。もちろん、それは正しいと思います。
でも、自分専用のアプリを作っていると、たまにそこから外れたくなります。
役に立つかどうかより、
触った瞬間に気持ちいいかどうか。
今回は、目的よりもその感覚だけを追い求めて作った2つのアプリの話です。
FlipCoin|指で弾く小さな宇宙
「FlipCoin」は、コインを弾くだけのゲームです。
画面のコインを指で引っ張って、放す。
それだけ。

現実的な動きに近づけるのではなく、あえて重力はゼロにしました。
ぶつかったときの跳ね返りも、少し大げさにしています。
狙い通りに当たると気持ちいいですが、
思ってもみなかった方向に弾け飛んでも面白い。
ゴールもスコアも作ってみました。
でも正直、ほとんど見ていません。
一番時間をかけたのは、動いた痕跡です。
勢いよく飛ぶと、光の尾が残る。
ぶつかると、小さな火花が散る。
当たり方によって、波紋が広がる。
ただ弾いただけなのに、画面の中で連鎖が起きて、
指の力加減ひとつで、全部がぐちゃぐちゃになる。
それを眺めていると、ついもう一回弾いてしまいます。

InkFlow|指先で操るVJソフト
「InkFlow」は、もっと単純です。
画面を触ると、色がにじみます。
混ざって、広がって、ゆっくり消える。
それだけです。
完全に消えてしまうのではなく、
少しだけ前の動きを引きずるようにしています。
そのため、水のようでもあり、煙のようでもある、
はっきりしない動きになります。
左右対称にしたり、万華鏡のように回転させたり。
同じ指の動きでも、表情が変わる。
色も、その日の気分で変えられます。
夜に見ると落ち着く配色もあれば、
少し懐かしい気持ちになるような組み合わせもあります。
音楽に合わせてタップすると、色が脈打ちます。
スマホを傾けると、流れの向きが変わります。
計算された動きが、指先ひとつで、有機的な模様に変わっていく。
深夜に部屋を暗くして、自分専用のVJソフトのように眺めている時間は、
何ともいえない没入感があります。

手触りの癒し
スマホの画面は、ただのガラスの板ですが、
プログラム次第で指先で弾ける宇宙にもなるし、液体が流れるキャンバスにもなります。
何の意味もないけど、「あと少しだけ動きを柔らかくしよう」と、
深夜に一人で数値を書き換えて、自分が一番気持ちいいと思える瞬間を探している。
画面の中で起きる予測できないノイズや揺らぎを眺めながら、
自分専用のおもちゃを磨き上げている時間は、
もしかすると一番贅沢な癒やしなのかもしれません。
これは、誰かに見せるためでも、リリースするためでもなく、ただ自分のために作った、私のiPhoneの中だけにある秘密のアプリたちの記録です。
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