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グラスの泡はすぐにあふれてしまう

ビールが好きで、
お風呂上がりの一杯が至福のひとときです。

特に、キンキンに冷えた缶からグラスへ注ぐあの一瞬。
トクトクと心地よい音を立て、金色に輝く液体が勢いよく流れ込み、
クリーミーな白い泡がゆっくりと立ち上がる。

あれは、一日の終わりに行う小さな「儀式」のようなものです。

海外の無料ゲームによくあるような、
派手なエフェクトや広告にまみれた画面ではなく、

一日の終わりに、ただ静かに、誰にも邪魔されずにグラスを傾ける。
そんな時間を、そのまま画面の中に閉じ込めたくて、
ビールを注ぐだけのアプリを作りました。

それが「TapMaster」です。

一滴の泡も無駄にしない

ゲーム画面には、グラスとビールサーバーのハンドルを表す光だけ。
余計な情報は一切削ぎ落とし、静かな画面の中でただ「注ぐ」ことだけに集中します。

ゲーム画面

目指すのは、ビールと泡の黄金比 「7対3」。

勢いよく落ちる液体が生む荒い泡。
そして最後に蓋をするように乗せる、きめ細かい泡。

プログラムの中でも、この二つは明確に異なるものとして計算しています。


思い返せば、新入社員の頃。

上司に瓶ビールを注いでいるとき、勢い余って泡が溢れそうになったことがありました。
その瞬間に何を思ったか、
私は咄嗟にグラスに口をつけて泡を吸い込んでしまいました。

再現イメージ

今では笑い話ですが、あのときの焦りと、
「泡を一滴も無駄にしたくない」という妙な執着は、このアプリのどこかに残っているのかもしれません。


「注ぎ心地」のためだけにコードを捨てる

実はこのアプリ、一度完成間近までいきました。

ゲームとしては成立していました。
スコアも出るし、ビールも泡もそれらしく動く。

旧バージョン

しかし、納得いきませんでした。

指先に伝わる液体の重さ。
泡がグラスの縁を這い上がる速度。
そして何よりビールが美味しそうかどうか。

そのすべてが、
少しだけ自分の感覚とズレていたのです。

結局、誰に頼まれたわけでもないのに、
私はビールの物理演算部分を丸ごと捨てて、
最初から作り直しました。

その時、アプリの中に、
自分専用の 「実験室」 を作ることにしました。

  • 泡の成長速度

  • グラスを直立させたときの泡のふくらみ

  • 泡が消え始めるまでの持続時間

これらを 0.01単位のスライダーで調整できるようにして、
ピルスナー、エール、スタウトなどの銘柄ごとに自分が「一番気持ちいい」と思える数値を探していきました。

効率よくゲームを完成させることは無視し、
深夜のベッドの上で何十杯とビールを注ぎながら数値をいじる。

完全にただの自己満足です。

シビアすぎる「完璧」

そんな調整を繰り返した結果、
最初は「気持ちよさを何度でも味わえる再現装置」のつもりだったのに、
気がつけば自分でも扱いきれないほどシビアなアプリになってしまいました。

グラスの角度がわずかに狂うだけで理想は崩れ、
タップを戻すタイミングがほんの少しずれるだけで、黄金比は逃げていきます。

今回は頑張ってもGoodでした

それでも、完璧な 7対3 が決まると、
画面には静かに 「Perfect」 と表示されます。

現実では、泡をこぼしてテーブルを拭くこともあります。
でも、この画面の中では何度でもやり直せる。

誰に気を遣うこともなく、
ただ自分が納得いくまでグラスの中の黄金比を眺め続ける。

これは、そんな穏やかな夜を過ごすための、
私なりのデジタルな晩酌です。

【15 / 21】


これは、誰かに見せるためでも、リリースするためでもなく、ただ自分のために作った、私のiPhoneの中だけにある秘密のアプリたちの記録です。


物理ボタンを押し込むような手触りが欲しい時はこちら▼

ただお湯が落ちる時間を眺めたい時はこちら▼

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