未知の脅威、持たざる者、気づかない者——『ワールドトリガー』29巻までの歩き方
『ワールドトリガー』はここまで発刊されている29巻までで、おおまかに区分けすると3つに分けられる。
まず1巻から10巻までの「大規模侵攻編」。
次が11巻から22巻までの「B級ランク戦編」。
そして23巻から最新の29巻までで現在も継続中の「遠征選抜試験編」。29巻の時点で試験の前半部である閉鎖環境試験は一区切りがつき、現在では後半の長時間戦闘試験が始まっている。
最初の「大規模侵攻編」が本格的に始まるのは5巻の後半で、そこまでに主要登場人物の登場と紹介のエピソードであるとか、組織内の内輪揉めのブラックトリガー争奪戦などが描かれるのだが、実は大規模侵攻は1巻時点で始まっていたということがわかるのがこの「大規模侵攻編」の面白さである。まず『ワールドトリガー』を読むなら1巻から10巻までを読むのがお薦めである。
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未知の脅威にどう対応するか 「大規模侵攻編」
この大規模侵攻編の面白さは、万全の準備をして臨んだとは言い難い状態で、真っ向勝負では到底かなわない脅威が目の前にいたとして、どう対応すればよいのかという、一種の極限状況の連鎖が描かれている点である。
ボーダー側には未来予知が可能な迅悠一というキャラクターがいる時点で相当な優位性はあるとはいえ、迅の能力は全く知らない相手の予知までは出来ない。なので、可能な範囲で準備をするしかない。それはまるでいつか来るであろうという予測とともに大きな災害に備えるかのようにだ。
初見では為す術なくやられた未知の脅威が、それを解析し情報共有してしまえば既知の脅威へと姿を変える。それに対する対策も打てる。実際の現実の問題に対してもそうするように、『ワールドトリガー』は淡々とその集団の地道な営為を少年漫画の中に描く。
超強力な一点モノと規格化された量産型の戦いというのも「大規模侵攻編」の見所の一つで、このエピソードを通して『ワールドトリガー』の個性ははっきりと確立していったように思う。
「持たざる者」の戦いとしての「B級ランク戦編」
『ワールドトリガー』は全編どこを読んでも面白いのだが、個人的に一番面白いと思っているのがこの「大規模侵攻編」の次に描かれる「B級ランク戦編」である。
「大規模侵攻編」の時点で、ボーダーのA級トップチームや攻めてくる4人のブラックトリガー使いなど、圧倒的な存在が描かれた次にそれよりも実力が劣るはずのB級チームをメインに描くという、インフレの逆のデフレを起こしながらそれでも面白いというのがそもそも興味深いし、『ワールドトリガー』の真骨頂たる集団戦の面白みも存分に描かれる。
だが、そんな中でも一番興味深いのは、「持たざる者」が頑張って「努力」や「創意工夫」を重ねて困難を突破しようとしたとして、目の前に「努力」も「創意工夫」も重ねた上で「才能」すら持っている人物が立ち塞がったらどうする?という問題に対して徹底的に向き合っている点である。
そして「B級ランク戦編」はその問題に対して『ワールドトリガー』なりの解答を提示する。
本作に限らず「持たざる者」の戦いを描く作品は色々あるとは思うのだが、「B級ランク戦編」は「持たざる者」の戦いを描いた物語として一つの到達点に達していると言って良いと思う。
自分が「持たざる者」であり、そのことが周囲にも周知されているのであれば、その一種の「思い込み」すらも利用すればいい。恐ろしいほどにタフに目標に向かって歩みを止めないチームの姿がここにはある。
持っていないことにすら気付いていない者の苦悩が描かれる「遠征選抜試験編」
「B級ランク戦編」以降、現在で継続中なのが「遠征選抜試験編」なのだが、これについては既に書いた記事があるのでこっちを読んでもらった方が良いだろう。
この前半の「閉鎖環境試験」で興味深いのは「B級ランク戦編」で描かれた「持たざる者」の戦いよりさらに奥の「自分は持たざる者ってほどではない」くらいの認識のキャラクターが思ったより持ってなかったことに気付かされるエピソードなのだが、それについてはこちらの記事をどうぞ。
まだ単行本化されていないが、ジャンプSQ誌上で描かれている「長時間戦闘試験」がめちゃくちゃ面白い!だが、おそらくは描くのがめちゃくちゃ大変なのか葦原先生の休載も多くなっているので、お大事に!健康第一!
「閉鎖環境試験」については主人公である三雲修の活躍についてはまだ記事を書いていないのでそれについてはまたどこかで書きます。
