【第1章】召喚された異世界でライターになりました!~学校の先生、今は育児と原稿に追われています。〜 #創作大賞2025
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第1章|召喚されたら書けって言われた

「ちょっと!なにこれ夢!? 召喚ってどういうこと!? 勝手なことしないでよ!」
私は叫んだ。
夢ならはやく醒めてくれ。やることは山ほどある。
私を召喚したと語ったローブの男ーーレオニスに詰め寄る。
いつもの私だったらーー周りの顔色をうかがって、「すみません……」「今話しかけてもいいですか……」から入る。こんなふうに初対面の男性に強く出るなんて、私らしくない。でも、そのくらい今の状況に焦っていた。
「あはは!まぁまぁ、落ち着けって〜!俺っちが順番に説明してやっから!」
もう!なんでいちいちこんなにノリが軽いんだ。こっちからしたら一大事だというのに(そして、一人称が「俺っち」の時点で、絶対友達になれないタイプだなと心の中でこっそり太鼓判を押す私)
「まず、〈セーヴェリオ〉は〈言葉〉で世界を守ってんだよね。
詩で敵の心をやわらげ〜コピーライティングで民を導く!!!それがこの世界のやりかた!
で、これまではそのちょー大事な役割を『筆導士』て呼ばれる人たちが担ってきたわけ」
なるほど。つまり「筆導士」というのは、いわゆる「ライター」にあたる職業のようだ。
「でもでも!いま〈セーヴェリオ〉は圧倒的筆導士不足! 他にもおもしれー仕事たくさん出てきちゃってるから、文章書くなんて地味〜!なんて声もあってマジしんどい。そもそも文章書ける人も減ってきちゃってるし、このままじゃ世界のピンチ!
で、どーしたもんかなーって考えてたところに来ちゃったわけ!神託ッ!」
と、レオニスは、懐から透明な結晶を取り出す。それを私にかざすと……ぼんやりと青い光が灯った。
「ふむ、キミの固有スキルは……『語彙力』『文章構成力』『教育指導』『忍耐力』……さすが国語の先生!俺っちの目に狂いなーし!」
「!!!異世界ものでよく見るやつ!!!」
「いやー、書ける人っていまほんっと貴重なの。キミの言葉の力なら、ちゃんと実績を重ねてったら覇権取れる!記事ガンガン書いて、筆導士カッケー!って盛り上げて、書ける人増やして、そんでこの世界を救って!!!お願い!!!」
「世界を救う!? さっきから筆導士だの、スキルだの……そんな話、すぐに信じられるとでも思っているの?」
レオニスは続けた。
「……キミなら、三行で人の心を動かせる。文の裏にある“感情”をすくいあげる力がある。
これは戦士や魔法使いにはない、選ばれし筆導士に与えられた特別な才能なんだよ!
そうじゃなきゃわざわざ、魔力使ってこんなとこまで呼ばねーしぃ。召喚ってけっこー疲れんのよ?
これもなんかの縁ってことで、セーヴェリオの筆導を引っ張ってよ!ね?」
特別な才能。そんなふうに褒めてもらること、最近全然なかった。
仕事も育児も全部中途半端、なにもできてない、私なんて……って、沈む時間のほうが長くてさ。
確かに学生の頃は、作文コンクールで金賞もらったりして、書くのも結構好きだったな……。
おっといけない、うっかりちょっと嬉しくなってしまった。
「おっ!さっそくいい表情!やる気になってくれた?」
「な、なってない……! 第一、縁もなにも、あなたが勝手に召喚?したんでしょう!」
―—と、そこでようやく、少し冷静になってきた。
「あっ!子どもたちは!?夫は!?元の世界に置き去り?」
だとしたら、今頃どんなに心配させているだろう!というか、今何時?仕事は!?
慌てふためく私に対し、まぁまぁ……と手で制するレオニス。一拍置き、目を細めて言った。
「安心して〜!そういうと思って、一緒に呼んどいたよ!」
「……え?」

数分後、私は別の部屋に案内され―—無事に長男・ハルト、次男・ミオと再会した。ちゃんと服も着ていて、泣いている様子もない。私が目覚めるまでのあいだ、レオニスと遊んでいたらしい。
「ママ~~~!」
ハルトが走り寄ってきた。ミオも、ぎゅっと私の服の裾をつかんで離さない。
それまでは、「夢なんじゃないか」「こんなことありえない」と思っていた。でも、こうして子どもたちと触れ合うと、不思議と「ああ、これは現実なんだ、夢じゃなかったんだ」となぜか"理解"できてしまった。
――なにがあっても、この子たちを守らなきゃ。
気づくと私は、彼らを引き寄せ、ぎゅっと抱きしめていた。
「……あれ? 夫は?」
ーーはたと、あたりを見回す。子どもたちはいるけど、夫の姿は見えない。
「え?いないほうがいいんじゃないの?オット」
レオニスがきょとんとして答えた。
「日本には『亭主元気で留守がいい』って言葉があるんでしょ?だから呼ばないでおいた!」
どう?えらい?とばかりに、両手でピースを作ってフリフリするレオニス。
まさか……。
異世界で、子ども2人、ワンオペ育児するってことぉ!?!?
「レオニス………あなた……なんてことを……今からでもなんとかならないの……」
「え〜!!!めっちゃ怒ってっし……なんでぇ?
あ、マジレスすると、同時に大人2人、子ども2人を同時に転生させるだけのパワーが俺っちにないの。キミら3人ですっからかんだから、魔力貯まるまではもうなんもできないんで、よろ〜」
子どもたちが安全で、元気で、ここにいてくれることはありがたい。ありがたいけども……!これじゃ「召喚された異世界でワンオペ育児を強いられています」だよ……!!!
「ちょっとママ〜レオニスおじさんのこといじめないで!おじさん、もうぼくたちの仲間だから」
「レオニスおじさん、またおにごっこしよ」
「もちもち〜!でも、レオニスおじさん、じゃなくて、レオニスにーちゃん!な?」
「「レオニスにーちゃん!」」
「うんうん!ハルトンもミオミオも、今日から俺っちの弟だ!!!」
「おー!!!」
この先の生活がどうなるか、まったく想像がつかない。不安しかない。だけど「レオニスのことは絶対に許さん」ということだけは、最優先事項として心に決めた。
続く
次回:第2章|初めての仕事は広報記事!?
お楽しみに。
召喚された異世界でライターになりました!~学校の先生、今は育児と原稿に追われています。〜

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