Photo by
yaserukinaidebu
白い糸、空を縫う
飛行機雲が、空を縫っていた。
青い布地に、白い糸をすっと通すように、一本の線が遠くまで伸びていく。あの先には、わたしの知らない街があり、知らない朝があり、誰かの帰り道がある。
空は広すぎる。だからときどき、どこにもつながっていないような気持ちになる。自分のいる場所だけがぽつんと切り取られ、世界の端に置かれているように感じる日がある。
「北海道は、どこか異国のよう」
これまで何度か、こんなふうに言われたことがある。海を渡って来る人にとって、この土地は遠く、別の時間を持つ場所に見えるのかもしれない。
飛行機雲はそんな空に、か細い縫い目を残していく。
ここから遠くへ。遠くから、またここへ。
人は、見えない糸をいくつも持って生きている。会えなくなった人。まだ会っていない人。かつていた場所。これから向かう場所。
空を縫う白い線は、やがてほどけて消える。
それでも、ほんの少しのあいだ、思う。
離れているものも、完全には切れていないのだと。
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