人がまさに「転職に失敗する瞬間」を目撃した! さすがに見かねて、仕事の新しい探し方を提言したい。
人の脳は適職選びに向いていない。
すなわち、転職に失敗するようにできている。
前回、衝撃の話をした。
仕事の探し方について考察したお話。わたし自身の経験、鈴木祐氏の著書「科学的な適職探し」、リクルートエージェントの人の助言、すべてが結びついてある結論に達した。
転職に失敗する主な原因は視野狭窄。
わたしは会社側の面談者として、まさにその視野狭窄が起こる場面に遭遇した。
わたしが所属するブラック職場の内定を得た高橋くん(仮称)は、入社の判断をするにあたって「現場の人間と面談したい」と申し出た。いい嗅覚だ。
会社が選んだ職場の代表者がわたし。
オンラインでの1対1の面談だった。

経歴を見る限り、彼の1年以内の生存率は5%以下なので、この仕事に向いていないことを(というか無理ゲーなことを)、それとなく伝えなければならない。
高橋くんとの面談がはじまる。
警戒しているのがよくわかる。
うん、その調子だ。
ここがブラック職場だと見極めよ。
わたしは社員ゆえ余計なことは言えないが、誠実に質問に答えることで、ミスマッチを解消するつもりだ。
高橋くんは彼なりに、落とし穴を見極めるための質問を用意していた。
「ひとりあたりの担当案件数」「プロジェクトの具体的な動かし方」など、勘どころは悪くない。
わたしは、なるべく客観的に答えていった。
ブラック職場のサインを出すことも忘れない(あとで恨まれても困るので)。
「いいことばかり言っても仕方ないので素直に言いますが、それなりにハードな職場だと思いますよ」
途中途中で何度も言った。
きっとこれで察してくれるだろう。
しかし、面談は意図しない方向に動いていく。
彼は、どんどん良いふうに解釈してしまうのだ。
目を輝かせて、「前職がハードでしたからね。それくらいのプロジェクトの数でしたら大丈夫だと思います」
「(いや、前職と業務の幅がぜんぜん違うじゃない。)前職にくらべて、業務範囲がかなり広くなると思いますけど……」
「はい、新しいことに挑戦してみたいです!」
「…………」
これが視野狭窄だ。
こちらからたくさんのヒントを出していて、暗に「考え直したほうがいい」くらいのことを言っているのに、「今のつらい環境から逃げ出したい。輝かしい未来に飛び込みたい」の願望が強すぎて、思考の幅が狭まってしまっている。
これまでのわたしも同じような感じだったのだろうな……。
まるで過去の自分を画面越しに見ているかのよう。
転職の失敗の歴史が詰まっている。
◇ ◇ ◇
転職に失敗するメカニズムが凝縮された面談だった。
彼は入社し、1年以内に辞めた。
視野狭窄が起こるのは、人間の性なのだろう。
しかしわたしは、日本の慣習がこの視野狭窄にターボをかけているように思えてならない。
この際、はっきり言ってしまう。
在職中に次の転職先を決めねばならない。
転職市場に沁みついているこの考え方がおかしい。
次の会社が決まっていないのに、今の会社を辞めるのは不安。求職者にそういう心理があるのはわかるが、採用する企業の側にも問題がある。
企業側は、離職済みの人間よりも、在職中の人間のほうが価値あるものとみなす。転職エージェントもそういうふうに説明する。
3者の協力プレイによって、「在職中に次の転職先を決めねばならない」の考え方がますます強固になる。
その結果、どうなるのか?
在職中のまともな人間が、転職活動のために何日も会社を休めるだろうか?
それなのに、「まともな人材を採用したいはずの企業」が何回も面接を設定する。
この状況にそもそもの矛盾があるが、なんとかマッチングが成立したとして、内定者からしたら「この1社に行くか行かないか」の選択に陥りがちになる。
そして、先ほど見たような視野狭窄が発生し、転職が失敗に終わる。
こんなの、おたがい不幸にしかならない。
得するのは、転職エージェントだけ。
在職者に過度な要求をすること、離職後に不当に価値を落とすことは本当にやめてほしい。人にはいろいろな事情があるし、いろいろな生き方があるのだから。
会社を辞めてから、じっくりと適職探しをする。そんなスタイルが見直されてもよいと思う。
求職者にやさしい社会であってほしい。
転職失敗レジェンドは願わずにいられない。

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