迷惑すぎた恐怖の預言!「デスメタルしか聴けなくなる」
これまでに聞いた迷惑な風説のなかに「デスメタルしか聴けなくなる」というものがある。大学に入ったころ、わたしは謎の塔のような学生寮もどきに住んでいた。
えらい長細いビルで、周囲から悪目立ちしていていた。各部屋は3畳しかなく、訪れた者からは「囚人部屋」と呼ばれていた。
当時、謎の塔の、同じフロアの住人から聞いた話だ。
彼は言う。世の中には、デスメタルと呼ばれる究極の形の音楽がある、と。
デスメタル!
え、死の音楽ですか?
なんて恐ろしい響きだ……。
わたしは呪われた田舎の地で、音楽というものを探しに探して、ようやく流行りのJポップにたどり着いた程度の音楽レベルだったので、デスメタルの響きに恐れおののいた。
同級生がなぜ流行りの音楽を知っているのかわからず、悪戦苦闘した話。
わたしにその話をした男は、いにしえの作家、中島敦のような風貌をしていた。丸眼鏡をかけ、すべての知識を手中にしたかのような文学の風をまとっていた。
塔のなかでその男と会話をしたのは、本当に数えるくらい。いつのまにかふっと消えてしまったので、肉体を持たない、塔の預言者だったのかもしれない。
彼の言葉を続ける。
デスメタルは、音楽を究極の姿にまでエクストリームにしたもの。その音楽を聴いてしまうと、もう別のジャンルの音楽は聴けなくなる。
い、いやだ。わたしの好きな音楽を聴けなくなってしまうなんてぜったいに嫌だ。
解決法はこれしかない。その、デスメタルとやらを聴かなければいい。そんな音楽に近づかなければいい。
簡単なことだ。冷静になったわたしは心を落ち着かせることができた。
だが、塔の預言は恐ろしい力を秘めていた。なんとデスメタルはあちらから近づいてきたのだ。
◇ ◇ ◇
わたしには同学年のいとこがいる。わたしは知る由もなかった。彼がすでにデスメタルに感染していたことに。
預言者の言葉「デスメタルしか聴けなくなる」を完全に体現していた。
いとこが独り暮らしをしているアパートに泊まりにいったとき、そこにはものすごい枚数のCDがあり、いとこはビフォアいとこではなく、もはやアフターいとこと呼ぶべき存在だった。
そのときの彼のお気に入りは、アークエネミーというメロディック・デスメタルバンド(いわゆるメロデス)。
ボーカルは、歌うのではなく、がなる。喉を潰しながら吠える。
いとこは、
「ギターがボーカルの代わりになったと思えばいいんだよ」
と言った。
なるほど、
「デスボイスは放置しておいて、ギターが奏でるメロディを楽しめばいい」
ということか。
「じゃあ、このデスボイスはなんだろう?」
という疑問が残ったが、そういうものだと思うことにした。
そのときのわたしはオアシスを聴いていたので、いとこにも聴いてもらうことにした。ハードな音だから絶対に通用すると思った。
いとこはこう言った。
「これは、パンクだね」
一瞬で却下された。
そうか、デスメタルを聴いているとそういう分類になってしまうのか。
結論を言えば、その後デスメタルは、見事わたしに感染することになる。
感染させる手口が巧妙なのだ。
帰り際に、いとこがおすすめの音源データ集を渡してくれた。デスメタルのひとは、音楽の幅が謎なところがあって、いわゆるHR/HM(ハードロック/ヘヴィメタル)で括られるジャンルなら、寛大にいろいろな曲がOKとなる。
オアシスはNGだったのにだ。
よって、音源データにはいい感じのロック曲も混ざっていた。ひとつご紹介すると、マイケルシェンカーの「Looking for Love」。
今聴いてもカッコいいと思う。音源データを聴いているうちに、ハードロックとメタルの境界がわからなくなっていき、ついにデスメタルにもつながってしまった。
ただ、幸いしたのは、わたしは音楽を流していても、あまり真剣に聴いていない。何か別のことを考えている。そんな不思議な特性に助けられ、魂までは取り込まれなかった。
おかげで今、わたしはこんな音楽を聴いている。
ひさしぶりにいとこに再会したとき、わたしがもうメタルを聴いていないことを知って、とても寂しそうな顔をしていたことを覚えている。なんせ彼は「デスメタルしか聴けなくなる」の呪いが続いているのだから。
そう、塔の預言者の言ったことは正しかったのだ。
わたしのメタルの知識をフル活用した、まどマギのパクリ作品をTALESで放送中!
第7話で「デスメタルしか聴けなくなる」の原理が解明されます!
関連記事。まどマギの新作が楽しみだね。

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▼記事を書いたのはこんなひと▼
人を救うのは趣味だ!(デスメタルだっていいんだ)
本当にそう思っているよ。
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クリエイターであり続けたいー! が、整体に行かないと死ぬ。ポンコツゆえ、ポンコツゆえ、300円よろしくお願いしまーーす!