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バスに乗って、花を買って

明日は、病院の日。
週に一度、バスに乗って通っている。

最初は乗り慣れないバスに揺られるだけでどきまぎしていた。
山の上の、大学病院。
ひとりで病院に行ける年齢になってから、こんな大きな病院に来たことはなかったのに
いまでは、平気な顔で向かえるようになった。
トイレの場所も、耳鼻科の受付もきちんと覚えている。

にんげんの、慣れってすごいな。
好きとか、好ましいとか、嬉しいとか、そういう前向きな感情を孕んでいないときも、きちんと慣れは発動する。
そりゃあ根本的には「病気を治すため」に行っているのだから、前向きな動機だけれど。
「だから病院はへいきです」って言えるほど、なんだか割り切れたおとなになれなかったし、なるべきだとも思っていない。

慣れは、余裕を連れてきてくれるんだと思う。
それがわたしを、勇敢にさせる。

楽しみにしていたアルバムの発売日だから、明日バスに乗りながら聞こう。
音楽の、空間に伴う匂いを愛している。
歩きにも、電車にも、バスにも、部屋にも、それぞれの匂いがあって、音そのものは変わらないのに、同じじゃない気がしてくる、

バスは、バスの特別さがある。
坂をぐんとのぼってゆく。
がたがたと妙な音がする。

明日は、花も買おう。
先週は花をもらう機会が複数回あって、うれしい悲鳴だった。
さすがに買い足す余裕はなくて、「友達からもらったお花」をにんまりと眺める幸福な1週間を過ごした。

花を買って、傷んだものと入れ替えて
来週くらいには、ぜんぶわたしの買った花に入れ替わるのかな。

ここ3ヶ月くらい、毎週同じ花屋さんに行ってたけれど、わたしが来ないことに気づいてくれたかな。
げんきかな、なんて思い出してくれたかな。
どちらでもいいけれど。
心配かけるのは本意ではないから。
明日わらって、「こんにちは」って言うね。

わたしにはできないことがたくさんあって、
それは何と比べて、っていう話になってしまうんだけれど

過去の自分とか
理想とか
誰かとか
比べる対象は、だいたいそれくらいなのかな。

比べるべきではない、と思いながらも、無視できなくて、息苦しくて
ぜんぶ投げ出したいような気持ちになるけれど、消えてしまうわけでもなくて。

溺れかけの日々の、ときどき水面に上がって息継ぎするみたいな
その瞬間に、ささやかなことを幸福だと思えたら、それで
いつもじゃなくても

ああ、ささやかすぎてしまう
過不足がありすぎてしまうような感じだけれど、まあいいや。

明日はバスに乗って、花を買って

そのあとのことは、またあとで考えよう。
また溺れてしまうだろうけれど、たまにはまぬけな顔して笑ってね。





※今日のBGM。楽しみにしていたアルバム(別野加奈さん"death has light")


※別野加奈さんを友達にお勧めしてもらったときのはなし


※いつも行っている花屋のおねえさんのはなし




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