【第59話 密着し過ぎだろ!?】『ネガティ部!』~美男美女ばかりなのに普通?の俺が入部しても大丈夫なのか!?~
第5章 謎めいた合宿編
第59話 密着し過ぎだろ!?
【夕食後・名染伊太合宿所ロビー】
今日の合宿は、本当に波乱続きだった。
いや、正確にはバスの中から波乱は始まっていた。
……あの事故のキス。
あれから何度も舞奈の様子を見ていたけど、いつもと変わらない。
どうやら本当に気付いていないみたいだ。
はぁぁ……助かった。
一時はどうなることかと思ったぜ。
それに昼食。
まさかカレーライス一つ食べるだけで、あんな苦労をするとは思わなかった。
『謎めいた合宿』というより、『訳の分からん合宿』だ。
結果的に三組だけ合格になったのは嬉しかったけど、判定には今でも少し引っかかる。
まぁ、美味しいカレーも食べられたし、舞奈もクラスメイトと少し打ち解けられた。
終わり良ければ全て良しか。
……他のクラスのランニングは、ちょっと気の毒だったけどな。
それにしても――
ルイルイだけは本当に読めない。
唯一分かるのは……
口が悪過ぎる。
それだけだ。
「おーい、フツオ!」
モブオが手を振りながら近付いてきた。
「風呂行かないのか?」
「ああ。晩飯食べ過ぎて腹が苦しいんだ。もう少し休憩してから行くよ」
「そっか。それにしても夕飯、美味かったよな!」
モブオは満足そうに笑う。
「俺なんかご飯三杯もおかわりしたぞ!」
食べ過ぎはお前もだろ。
「できればあのセクシー美女の所長代理さんが作ってくれてたら最高だったんだけどなぁ」
「はぁっ!?」
セクシー美女なのは認める。
でも、それ以上に口が悪すぎるだろ!
「あんなガサツな女が五百人分の飯なんか作れるわけないだろ!」
「もし作ってたとしても、絶対変な物を混ぜてるぞ!」
「さすがにそれは言い過ぎじゃ……」
「いや、ルイルイならやりかねない!」
「それは酷いなぁ、ヒトヤン」
「えっ?」
聞き覚えのある声。
「ル、ルイルイ!?」
「何でここにいるんだよ!?」
「私がロビーにいたら変か?」
ルイルイはニヤリと笑う。
「それと今の話だが、私はそこまで酷い女に見えるか?」
「見える!」
「即答か!」
豪快に笑い出すルイルイ。
「やっぱりヒトヤンは面白いな。他のミジンコ共とは少し違う」
「全然褒められてる気がしねぇ!」
「それでブオブオは風呂か?」
「は、はい!」
モブオもすっかり『ブオブオ』が定着してるな。
「私も一緒に入って背中を流してやろうか?」
「えぇっ!?」
「そ、それは夢みたいですけど遠慮します!!」
「じゃ、じゃあ俺はこれで!」
「おいモブオ! 逃げるな!」
薄情な奴め。
「それでヒトヤン、風呂には行かないのか?」
「もう少し休んでからな」
「そうか」
ルイルイは当然のように俺の隣へ腰を下ろした。
「よっと」
「ちょっ!? 何で俺の隣なんだよ!?
しかも近い! 近いって!
密着し過ぎだろ!?」
「別にいいじゃないか。ケラケラ」
ケラケラ笑うんじゃねぇよ!
「それとも照れてるのか?」
「だ、誰がだよ!」
……くそっ。
すげぇいい匂いがする。
一瞬クラッとしたじゃねぇか。
ダメだ。
このままじゃ完全にルイルイのペースだ。
「なぁ、ルイルイ」
「何だ?」
「聞きたいことが山ほどあるんだけど」
「何でも聞け。ニヤニヤ」
ルイルイ、今度はニヤニヤしながら言うな。
「私の好きなタイプでも聞きたいのか?
ちなみにヒトヤンみたいな男が好きなタイプだ」
「そんなこと聞いてねぇよ!! からかうな!」
「からかってないぞ。本当だ」
……絶対嘘だ。
「それより気になってたんだけどさ。
モブオまで『ブオブオ』って何なんだ?
しかも何で俺だけ『ヒトヤン』なんだよ?
べ、別に同じような呼び方をしてほしい訳じゃないからな!
勘違いするなよ!」
「簡単な話だ」
「簡単?」
「私が今まで好きになった男は全員『ヒトヤン』だった。
だから繰り返しの名前はクソみたいなものなんだ」
「その基準も酷ぇな!」
それに、好きになった男は全員『ヒトヤン』ってどういうことだ?
まぁ、いまはそんなことどうでもいいか。
ん? ルイルイの表情が少しだけ柔らかくなったぞ。
「今日は久しぶりにこの合宿所へ来たからな。少し昔を思い出していたんだ」
「昔?」
「ああ、さっき晩飯を作りながらな」
「えっ!?」
「自分の晩飯だぞ?」
「思いっ切り勘違いしたわ!」
「ハハハ!」
くそっ、またしてもからかわれたぞ。
「せっかく昔を思い出したんだ。
誰かに聞いてもらいたくなってな。
喜べ、ヒトヤン! 聞き役に選んでやったぞ。
どうだ、嬉しいだろ?」
「全然嬉しくねぇよ!」
「照れるな照れるな」
「だから照れてねぇって!」
……はぁ……ため息が出るよ。
ルイルイって、本当にポジティブだよな。
さすが元ポジティ部部長だな。
マジで一気に疲れてきたじゃねぇか。
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