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塩を求めて

登場人物
ンジャブ(ジャコウネコ)、ムバマ(ボア=蛇)、ングウェヤ(イノシシ)、クドゥ(カメ)、人間、狩人

Title image by Ashenso

アメリカの宣教師、ロバート・ハミル・ナッソー(1835 - 1921)による採話。ギニア、ガボンなど西アフリカの国々で40年間暮らしたナッソーは、訪れた村で語り部が話す伝説を収集した。ムポングウェ語など土地の言葉で語られた話をナッソーが英語で語り直している。詳細はこちら

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注釈
内陸部に住む人々は、以前は塩を海辺の人々から手に入れていた。それは浅くて大きな真鍮鍋で海の水を蒸発させて作られたものだった。鍋は「海(ネプチューン)」と呼ばれ、よその国の商人から得たものだった。

ンジャブ、ムバマ、ングウェヤ、クドゥの4者は隣人同士、同じ町に住んでいた。

あるとき、それは夕方のことで、6時の日没の1時間後だったが、みんなで道端にすわって話をしていた。するとカメがこう言った。「いいかい、ちょっと言いたいことがある。みんなに相談だ。明日、旅に出ないか。森をとおって海まで塩を買いに行かないか」 全員が同意した。「わかった、そうしよう!」

夜遅く、みんなはそれぞれの家に退散して眠りについた。

しばらくして、夜が明けた。

朝早く、みんなは旅の準備をし始めた。カメが言った。「いいかな、もう一つ言いたいことがある。聞いてくれ。ひとたび出発したら、誰も途中で勝手なことを始めてはだめだ。海岸までただただ進むんだ」 みんなが答えた。「わかった! 賛成だ」

というわけで、一行は森をとおって旅に出た。歩きに歩き、また歩き、どんどん進んだ。夜になってキャンプを張るところに着くまで、長い道のりを進むはずだった。ところが途中でジャコウネコがこう言い始めた。「あー、腹がうずく、あー腹がムズムズする」 カメが尋ねた。「'腹がうずく'とはどういう意味だ?」 ジャコウネコが答えた。「'腹がうずく'というのは、腸の具合がおかしいということだ。だからちょっと道をはずれる」

カメが言った。「わかった、行け。道からはずれて草むらの中に入れ。ここでみんなで待ってるから」 ところがジャコウネコはこう返した。「いやだ、草むらなんて。町に帰って母さんの菜園まで戻らなくては」 カメが大声で返した。「ぜったいにダメだ。この旅を計画したとき、オレが何て言ったか覚えてるか」 みんながそうだそうだと言った。「だれも途中で違うことをしてはいけないと言ってたな」 それでカメはこう言った。「なのに、おまえ、ンジャブは途中で違うことをしようとしてる。そんなことをすれば、この旅は終わってしまうぞ」

それにもかかわらず、ジャコウネコは母親の菜園へ、慣れ親しんだ場所へ用足しにそそくさと帰ってしまった。残りの3者はジャコウネコが戻ってくるのを道で待った。長いことたって、ジャコウネコは用を済ませて夜までに仲間のところに戻ってきた。「ああ、すっきりした」

次の日、みんなは起きると、こう言った。「さあ、旅を再開だ」 そして出発した。

一行は歩きに歩いた。ヘビがこう言い出すまで、とにかく歩いた。「あー、おれの腹、腹がウズウズする」 するとカメが尋ねた。「'腹がウズウズする'とは何だ?」 ヘビが答えた。「腹が減ったという意味だ」 するとカメが言った。「そうか、そうだな。旅には食料を持ってきている。みんなで食べようじゃないか」 ところがヘビはこう言った。「いや、違う、これじゃない。他の食べものを探してくる」 カメが尋ねた。「他の食べものって何だ?」 ヘビが言った。「ちょっとそこまで行かせてくれ。すぐに戻ってくるから」

ヘビは出かけていくと、アカレイヨウを見つけた。獲物を手に入れるときのやり方に従い、ヘビはからだを丸めた。やって来たレイヨウをヘビはとらえ殺した。ヘビは食べる前にいつもそうしているように、レイヨウを唾でおおった。そしてそれをキャンプまで運んで地面に置いた。カメが言った。「みんなでこれを食べようや」 ところがヘビはこう返した。「町にいるとき、食べものを交換したりしてない。旅の間はそうするのか?」 そう言うとヘビはレイヨウを丸ごと飲み込んだ。そして他の3者を呼んだ。みんながやって来た。するとヘビはこう言った。「食った食った。満足だ」

それでカメは言った。「そうかい、じゃ、旅をつづけるぞ」 ところがヘビはこう言った。「いやダメだ。腹の中のやつを消化してからだ」 カメがいさめた。「ったく!おまえたちときたら! 町を出るとき言ったはずだ。途中で何か別のことをしてはだめだとな。なのに、ンジャブは自分の家に帰るは、ムバマも勝手なことする」

そう言いながらも、みんなはヘビの食べたものが消化されるまで、すわって待った。まるまる1か月、そうやって待った。やっとヘビが言った。「さてと、出発するか。だがその前に、オレは水を飲みに川まで行ってくる」 ヘビは大量の水を飲んだ。それが効して腹の中のレイヨウの骨が外に排出された。ヘビはみんなにこう報告した。「いい気分だ、さあ出発だ」

一行は歩きに歩いた。すると道の真ん中に倒れて間もない大きな木が横たわっていた。枝の葉っぱはまだ緑色で生き生きしていた。イノシシがその木を飛び越えて向こう側にいった。ヘビも這って木を乗り越えた。ジャコウネコもそれを超えていった。反対側からみんながカメを呼んだ。カメは何とか乗り越えようとしていた。「来いよ! 行こうぜ、跳んでこいよ!」

しかしカメはイライラしてこう言った。「ダメだ、行けない。足が短いからな。どうやったら超えられるってんだ。この木が腐るまで、通れるようになるまで、ここで待つ」 みんなはそれは無理だと思った。「ダメだ、この木はまだ倒れたばかり。腐るまでどんだけかかることか」

カメがこう答えた。「オレのせいじゃない! そっちのせいだ。おまえたちンジャブとムバマが待たせなかったら、この木が倒れる前にここを通れてたはずだ。ンジャブよ、おまえがまずやって、それからムバマ、おまえが勝手なことをした。今度はオレの番。オレのことを待つんだ」 それでみんなは待った。そして待った。

しかし待っている間、他の3者は朝早い時間にすぐそばの農園に出かけていって、トウモロコシ、ヤムイモ、オオバコなどの食料を見つけた。ジャコウネコとイノシシが言った。「食べようぜ!」 みんなでトウモロコシを食べ、オオバコを食べた。

ある日、よその町の男が森の中をやって来た。この男は旅の間、道を端から端まで見て、何かないかと探して歩いていた。そしてたくさんの動物の足跡を見つけた。それをよくよく観察するとこう言った。「この足跡はカメのものだ。こっちのはイノシシじゃないか。こっちのは、あー、ジャコウネコだぞ! それにこれは、ハハハ、ヘビまでいるぞ」 男は大声をあげた。「ここにはどんだけ動物がいるんだ。町の人たちを連れてこよう、こいつらを殺そう。いっぱいいるからな」 男は急いで町まで帰った。

町に着くと、男はこう叫んだ。「こいよ、みんな! 森へ行くんだ! たくさん動物がいたぞ」 農園の主がやって来た。農園の働き手が銃を手にとった。何人かはナタを手にしていた。ある者は槍を、ある者はナイフを持った。それ以外の人は網を手にした。そしてみんなで出発した。また首に鈴をつけた犬を何匹か連れていった。

動物たちが揃っているところに犬が着くと、駆け寄って吠えたて、首の鈴を鳴らした。そして男たちが「ハッ、ハッ!」と叫んで、網の中に動物たちを追い込んだ。まずイノシシに目をつけ、銃を放った。イノシシは死んだ。次はジャコウネコだった。槍で突いた。男たちは丸太のそばにうずくまっていたヘビも殺した。そして最後にもう1匹、カメを見つけた。倒木の向こう側で枯葉の下に身を隠していたカメもつかまえた。屍が三つ、生きたままのカメは紐でくくり連れ帰った。

男たちは午後遅くに動物たちを殺し、町に着いたのは日暮れだった。そしてこう言った。「動物の屍は一つの家に集めよう。カメは屋根から吊るしておこう」 男たちは相談して「切って調理するにはもう遅い。明日、食べることにしよう」 それで男たちは眠りについた。

カメは長時間の格闘の末、真夜中近くになって、結ばれていた紐をほどいて抜け出た。そして仲間の動物たちが置かれている部屋の隅に行った。ジャコウネコのところでは、「オレがこう言わなかったかな、途中でよそごとをしてはダメだとな。いまおまえは屍だ」 ヘビに向かってはこう言った。「おまえもだ。言ったはずだ、勝手なことをするなって。今のおまえはどうだ。途中でよけいなことをしてなければ、みんな安全に旅を終えていたはずだ」

カメは家の壁の下に穴を掘り、森へと逃げていった。

その後、夜が明けた。町の人々はこう言った。「家の外に動物を持ち出そう。食べるために切り刻もう」 動物3匹はそのようにした。 そして少年にこう言った。「クドゥを連れてこい、垂木に吊り下げてある」

カメのところに言った少年が報告した。「クドゥはいなかった」 みんなはカメを見にいったが、どこにもいなかった。それでこう言った。「ここにあるものを食べよう。もう1匹は放っておけ、逃げてしまったからな」

日本語訳:だいこくかずえ


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