雷舞ノ巫女 (ライブノミコ) 第8話「祈りと反逆の、その先へ」
パフォーマンスを終えた陽菜は、ステージの内側で大きく息を吐いた。
手のひらには、まだ震える余韻が残っている。
胸の鼓動は、舞台の照明よりも眩しく高鳴っていた。
そこへ、夜魅がゆっくりと歩いてくる。
黒い衣装に汗が煌めき、観客の歓声が耳に残る。
二人は、言葉を探すようにしばらく沈黙した。
「見事だったな、陽菜。祈り、ちゃんと届いてた。客席まで」
夜魅の言葉に、陽菜は思わず顔を上げる。
「夜魅さんこそ、本当にカッコよかった。私、胸が熱くなって…。羨ましかったんです。あんな風にみんなを巻き込む力、私には無いって」
夜魅は、照れくさそうに前髪をかき上げる。
「祈りも反逆も、どっちかだけじゃ本当の光にならない。誰かと並ぶと、アタシも自分だけの正解じゃ足りないって思った」
陽菜はそっと夜魅に微笑む。
「ありがとうございます…。私、夜魅さんの隣で歌えるように、もっと強くなりたいです!」
二人の間に、言葉にならない約束の空気が生まれた。
ステージを去る二人を、観客はいつまでも惜しむように拍手を送り続けていた。
「すごかったな!」
「全然違う二人なのに、なんであんなに輝くんだろう」
「今年のフェス、マジやばいね!」
誰かがつぶやき、SNSのタイムラインが歓喜で溢れていく。
運営席の片隅で、かつて美沙を追いやった大物プロデューサーが、静かにモニターを見つめていた。
「…あの二人、間違いなく本物だ」
高天原の神々もまた、二人の舞台を讃えていた。
タキリビメが、微笑みながら呟く。
「陽菜の祈りは、人の願いの力そのもの。夜魅の反逆は、時代を突き破る意思。二つの光が交わった今夜、何か新しい扉が開いた気がします」
イチキシマヒメが扇を鳴らす。
「この物語がどこへ向かうのか。楽しみでなりませんね」
アマテラスは、優雅に頷いた。
「夜はまだ終わらぬ。だが、夜明けの光は、もうすぐそこじゃ」
MCが叫ぶ。
「みんなすごいパフォーマンスでしたね!皆さん、このあともステージは続きます!次は特別プログラムの準備に入りますので、そのままお待ちください!」
客席に広がっていた余韻は、拍手とともに波打ちながら静まり、観客たちは期待を込めたざわめきを交わす。
「特別プログラムって何?」
「まさかゲスト登場? でも告知なかったよね?」
「サプライズだって! 誰か来るんじゃない!?」
観客の期待が熱を帯びていく。
ステージ裏。
運営スタッフたちが走り回っていた。
「照明リハ、カウントダウン入ります!」
「AIユニット、起動確認! リンク安定、OK!」
「カグヤシステム、ステージルート同期完了!」
端末の光が並ぶブースの奥、
黒のスーツに身を包んだチームが黙々と作業を続けていた。
彼らの胸元には、銀色のバッジ――
《PROJECT KAGUYA》
リーダー格の女性が、タブレットを見つめながらつぶやく。
「人間も神も、ステージの外で戦ってるわ。けれど、私たちはそのどちらでもない。集めたデータとアルゴリズムで美を組み上げるの」
スタッフの一人が不安そうに問う。
「観客、どんな反応するしますかね?」
「観客の反応?それは関係ない。彼女はAIじゃない。アイドルだってことを、今日ここで証明する。ただそれだけよ」
赤いインジケーターが、静かに「READY」に変わる。
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