公理的設計は時代遅れになるのか?TRIZの9画面法で"設計理論の未来"を予測してみた
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生成AIが発達し、設計に必要な情報の収集→ 分析が以前と比較して容易に実行できるようになってきました。プロンプトに打ち込めば、次の製品、商品のFR(顧客要求)らしきものが回答され、頼めば数パターンを比較することもできます。
そうなると、ふと、”設計行為”自体に疑問が湧きます。
「あれ、公理的設計って・・・今後どうなるんだろう?」
そこで今回は、TRIZの「9画面法」を使って、公理的設計そのものの未来を予測してみました。
それでは、スタートです。
過去には以下も取り組んでいます。よければ立ち寄ってください。
▼ 「チャレンジ AI×100業務(製造業)」としてAIを業務利用した100記事連続投稿の記録
9画面法の結果:公理的設計の過去・現在・未来
解析にはChatGPTのGPTs「System Operator」(TRIZ Consulting Group GmbH)を利用し、結果を以下の表に整理しました。縦軸が階層(上位/対象/下位システム)、横軸が時間(過去/現在/未来)です。

この表から、3つのインサイトが読み取れます。
インサイト①:「人の経験と暗黙知」から「AIによる自律的な構造化」へ
過去の設計は、経験豊富な設計者の暗黙知と試行錯誤に依存していました。現在はCAD/CAEやPLMで形式知化が進み、公理的設計はその「型」として機能しています。
現在、企業、顧客、製品・サービスの情報等をRAG化し、FR(顧客要求)も含め、チャット形式で会話できるようにする試み、また、すでに構築していれば、未来では、「FRの抽出」「FR-DP関係の推定」「設計行列の生成」といったコア作業は、いずれ、AIが自律的・半自律的にこなすプラットフォームへ進化する、という予測です。
つまり、公理的設計の"作業"部分は、確かにAIに置き換わっていきます。
インサイト②:全階層で「リアルタイム化」が進む
過去の上位システムは「品質会議」「顧客要望の聞き取り」といった断続的なイベントでした。これ、サプライチェーン情報など、リアルタイムで変化する情報を含め知識グラフ化する―例えば、Googleドライブの「プロジェクト」機能*を用いれば、全階層でリアルタイムに壁打ちできるようになっていきますよね。
*特定の案件やテーマに関連するファイル・メールをひとまとめにし、AIの「Gemini」に要約や分析、質問ができる機能(Google AIより)。
インサイト③:XAIと「設計根拠ログ」が信頼性を担保する
面白いのは、自動化が進む未来の項目に「説明可能AI」と「設計根拠ログ」が並んでいることです。放っておけばブラックボックスになるAI設計に対し、「なぜその設計行列になったのか」を人間が検証可能な形で残す仕組みが必須要素として挙がっています。規格適合が生命線である製造業にとっては、本質を突いた予測だと感じます。
[ 補足 ]
説明可能AI:AIが出した判断や提案について、「なぜそう判断したのか」を人間が理解できる形で説明できるAI。
設計根拠ログ:設計の理由・判断・証拠・変更履歴を残して、後から説明できるようにする仕組み/説明可能AI・PLM・知識グラフ・デジタルツインをつなぐ記録装置のような役割。
見過ごせないリスク
さて、上述の内容はポジティブな面でしたが、解析結果には、無視できないネガティブな面を考えさせられる内容もありました。こちらのほうが、現役の設計者にはドキッとするはずです。
リスク① AIが作った"もっともらしいFR"に設計者が引きずられる
「自動FR抽出」ー AIの出すFRは「もっともらしい」のが厄介です。抜けているFR、粒度のずれたFRに気づかず、そのまま設計行列を組んでしまう。土台が歪んでいれば、その上の独立性評価がどれだけ精緻でも意味がありません。
リスク② AI依存で人間の設計判断力が弱くなる
これが一番怖いリスクです。AIの出力の妥当性を評価する際、いや、本記事の設計行為に限らず、AIのアウトプットが如何に的を射た内容であっても、生成された回答自体がわからない(詳しくない)質問者では、妥当性を検証できません。インサイトで挙がった「設計根拠ログ」はリスクでもあります。
品質管理的な物言いで言えば、「測定システムの検証(MSAのようなもの)を、AI設計プロセスに対しても回す必要がある」という話です。自動化された検証プロセスこそ、検証されなければならない。
ものづくりで言えば、その計測に使っているノギスの測定値は、何の担保(検証)に基づいて示している寸法なのか? と似ており、結局、AI黎明期から言われている「論拠、根拠」を明確にしなければなりません。
未来と言えども、回りまわって、当該組織に属する人間のレベル以上のモノは提供できないことも示唆されているのではないでしょうか。
結論(仮説):公理的設計は「設計判断のOS」になる
AIが発達しても、公理的設計の価値は低下しない。むしろ、AIが生成する設計案を「FRの独立性」「情報量」「リスク」「説明可能性」でふるい分ける、"設計判断のOS"へと役割が変質する。
AIは、会話していけばどんどん案を作ってくれます。しかし「何を満たすべきか」「機能要求は独立しているか」「余計な複雑さが入っていないか」を判断する枠組みは、AI自身には内在していません。その判断基準を与えるのが、独立公理と情報公理という、たった2つのシンプルな公理です。
設計者の価値を分けるのは、AIが作成した案に感じる違和感を持てるかどうかです。AIの出力に「待った」をかけられるか——AI時代の設計理論の存在意義は、ここに収斂されていく気がしています。
